第31話 B’zを歌いなさい    ~驚異的なタイミングで起きる~

文字数 1,434文字

驚異的なタイミングで出来事が起きる。
偶然の一致の出来事には、どうしてこれほどまでに見事なタイミングで起きるのだろうか、と驚かされることが多い。
あの時も、まさにそうだった。

以前、私はロックミュージシャンを目指し、東京でインディーズ活動をしていた。
そのせいもあり、今も歌の練習を続けている。
と、いっても、最近ではもっぱら運転中にCDと合わせて歌うくらいのもの。

それであっても、毎日、運転中に歌うことで、ヴォーカリストとしての声を維持することが出来ている。

少しの時間でも「やるか」「やらかないか」その差は大きい。
それゆえ、運転中には必ず歌の練習をする。

歌う曲は、毎回、決まってB'z。
運転時はB'zを歌うのがお決まりである。

そんなある日、驚くべき出来事が起きた。

クルマを車検に出した時のこと。
普段、自分が使っているクルマとは別のエンジ色の代車がやって来た。

今日はこの代車に乗りカフェへ行き執筆の仕事をする。
エンジ色の代車に乗り込み、エンジンを掛けた。

――ああっ!しまった!

重大なミスをしたことに気がついた。

このクルマは代車である。
いつものB'zのCDが無い!

B'zのCDを自分のクルマに載せたまま車検に出してしまった!

「あぁ、今日はB'zを練習できないな……」

毎日続けている練習が出来ない。
とても残念……
仕方なく、ラジオを聴きながらカフェに向かった。

カフェに着くと、そんなこともすっかり忘れ、執筆の仕事に打ち込んだ。

どのくらい経ったのだろうか。
日が陰り夕日が差し込んできた。

「うむ、そろそろ帰ろうか」

一段落ついたので、仕事を切り上げ、家に帰ることにした。
カフェを出て駐車場へ向かうと、エンジ色の代車が待っていた。

クルマに乗り込み、エンジンを掛けた。
B'zが流れ出し歌いながらクルマを走らせた。

いつもの仕事帰りの歌の練習である。

ところが……

――ん?ん?……あれ?

ちょうど歌がサビに差し掛かる辺りで異変に気がついた。

――なぜ、B'zが!

そうである。このクルマは代車である。
したがってB'zのCDが無いはずである。

それなのに、いつものB'zが流れている!
これには驚きである!

――え、ええ?……えええー!

一瞬、戸惑ったが、すぐにこの驚くべき現象の理由が判明した。

「ああっ、そういうことかぁ!」

驚愕である。
私がクルマに乗り込み、エンジンを掛けた、その時、その見事なタイミングで……
なんと!

――ラジオからB'zが流れていたのである!

「なんというタイミングだろうか!」

これには心底驚かされた!
あまりにタイミングが良く、いつものB'zの曲だった為、それがラジオであると全く気づかなかったのである!

驚異的なタイミングである!

「一体、どんなタイミングだよ!」
「しかも、代車でもB'zかよ!」

驚きつつ思わずツッコミを入れてしまった。

エンジンを掛けたタイミングで、たまたまB'zの曲が流れているとは……

まさに驚愕。

まさか、代車でもラジオから偶然B'zの曲が流れ、いつも通りの歌の練習をすることになるとは思ってもみなかった。

かなり驚き、深く印象に残る出来事であった。

まるで、「今日もB'zを歌いなさい」と言われているかのような出来事であった。

それにしても……

――あのタイミングでB'zが流れるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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