第20話 無意識の行動に隠されたメッセージ  ~ベルトの意味~

文字数 1,547文字

ふとした日常の出来事にメッセージが込められていることがある。
時として、人は無意識の行動を通じて大切なメッセージを伝えている。
本人ですら気づかずに大切なメッセージを相手に贈っているのである。

この話も、じつに不思議な出来事だった。

これは名古屋で働いていた時のこと。
私は3年ほど勤めた職場を退職することになった。

この時、じつは私はこう考えていた。
退職後は……

――『バンド』活動をする

そうである。上京して『バンド』活動に専念してミュージシャンを目指す。
おぼろげながら、そんなことを考えていた。

この『バンド』に関することは、まだはっきりとは決めていなかったので、職場の人達には伝えていなかった。

職場の何人かの人たちが送別会を開いてくれた。
送別会に来られなかった人も餞別の品をくれた。

ところが……

――この餞別の品に関する不思議な事態が発生した

まず一人目。
同じ部署のA氏が応援の言葉とともに餞別の品として紙袋を渡してくれた。

「もし良かったらこれ使ってくださいね。がんばってくださいね」

紙袋の中身を見ると……

――革製の『ベルト』が入っていた!

「ありがとうございます」

私はその「ベルト」をありがたく頂戴した。

そして二人目。
部屋に帰ると、何やらポストに紙袋が入っている。
別の部署のB氏からの餞別品だった。
B氏は私が所属していた居合道部の上司である。

メッセージが書かれた紙が入っていた。

「こちらは餞別です。良かったら使ってください。がんばってください」

こちらも激励の言葉が書かれていた。
そして、紙袋の中身を見ると……
なんと!

――革製の『ベルト』が入っていた!

またもや『ベルト』である!

別々の部署のA氏B氏ともに『ベルト』である!
驚いたことに、偶然、同じ品。
こんなことが実際にあるのだろうか。

もちろん、このような出来事は初である。
このような偶然の一致の出来事には……

――必ず意味がある!

「一体、どんなメッセージが隠されているのだろうか」

私はこの偶然の一致の出来事に隠されたメッセージを解読してみた。
ところが、どうにも納得のいくメッセージが見いだせない。

そこで、『ベルト』という言葉に何か「別の意味」がないか辞書で調べてみた。

すると、そこには驚くべき言葉が書かれていた!
 
――『ベルト』とは、洋服用の胴をしめる帯

そして、その下には……なんと!

――『バンド』

「なるほど!そういう意味だったのか!」

この時、私はこの偶然の一致の出来事に隠された「真の意味」を理解した。

「ベルト」は『バンド』とも言う。

私は退職後、上京して『バンド』活動をしようと考えていた。
A氏とB氏は『ベルト』を渡して「がんばってください」と激励してくださった。

つまりこれは……

――『バンド、がんばってください!』

というメッセージだったわけである。

「なるほど。だからベルトをくださったのか……」

A氏B氏ともに『ベルト』をくださったのは、じつは私の『バンド』活動を応援するメッセージだったわけである。
だから、二人とも『ベルト』を私にくれたのである。

しかし、これは「無意識での行動」である。

A氏B氏の本人ですら気づかずに、私の『バンド』活動を応援してくださっている。

そもそも、退職後『バンド』活動をすることはA氏にもB氏にも伝えていない。
それにも関わらず、A氏B氏は無意識の領域から「ベルト」を選び、『バンド』活動に応援のエールを送ってくださったわけである。

――無意識の領域からの応援

このような出来事が起きるのは、A氏B氏が心の奥底から私を応援してくださっているからに他ならない。

「よし!がんばるぞ!」

A氏B氏の奥深い応援の気持ちがひしひしと伝わってきた。
深い感謝の気持ちが溢れてきた。

このようなことが現実に起きるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。


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