第34話 意外な形で現実となる   ~お好み焼き~

文字数 1,226文字

ささやかな日常の嬉しい偶然の一致というものもある。
友人と話していたコトが、全く予想もしない意外な形で現実となる。
ちょっとした日常の出来事ではあるが、そのような偶然の一致も、また面白い。
あの時の出来事も、まさにそうだった。

友人との会話のこと。
「お好み焼き」の話題で盛り上がっていた。

熱々の焼き立てを食べるのが、一番美味しい。
焼いている最中、上から押さえないのがコツ。
マヨネーズは多からず少なからずの量が大切。

互いに「お好み焼き」に関する「鉄板ネタ」を「熱く」語っていた。
お好み焼きだけに……

ふと、友人が言った。

「あぁ、なんだかお好み焼きが食べたくなってきた」

友人だけでない。
とっくに、私もそのモードに突入していた。

食べ物の話をしていると、それを無性に食べたくなることがある。
その食べ物のことを真剣に話していると、その食べ物のことばかりが頭の中をぐるぐると巡り出し、頭から離れなくなる。
どうにも食べたくなるのである。

その後、「お好み焼き」が頭の中をぐるぐると巡り続けた。
こうして、私の頭の中は見事に「お好み焼き」一色となった。

「あぁ、お好み焼き、食べてぇ」

そんな中、面白い出来事が起きた。

ふと、財布の中を見ると、一枚の福引券があった。

「あぁ、これは行った方が良いな……」

なんとなく、そう感じ福引会場へと向かった。

福引会場にはズラリとたくさんの景品が並べられていた。
街の一商店が開催しているこぢんまりとした福引会。
海外旅行などの豪華景品は無いが、あれこれ生活に役立ちそうな品が並んでいる。

「せっかくだから、何か当たるとイイな…‥」

そんなことを考えつつ、「ガラポン」と呼ばれる八角形の福引マシンのハンドルを持ち、ガラガラと回した。

――カラン、コロン!

中から、玉が出てきた。

――黄色!

なんと!
色付きの玉である!
トレーの上を見ると白色の玉がたくさん転がっている。
どうやら白色がハズレらしい。
となると、黄色は……

「おめでとうございます!2等が出ました!」

店員が、笑顔で言った。

――おぉ、当たった!

「こちらから、お選びください」

店員が指し示した台の上には、2等の景品があれこれズラリと並んでいる。

「はっ!これは……」

そこを見た途端、思わず吹き出しそうになってしまった。

その中にあったのは……
なんと!

――「お好み焼きソース」!

「ありがとうございます。では、こちらを」

たくさん種類のある景品の中から、私は迷わずそれを手にした。

なんとも、友人と「お好み焼き」の話をし、頭の中が「お好み焼き」一色になっていたところに、福引を引き「お好み焼きソース」が当たった!

――まさに見事なタイミング!

日常に起こるほんのささやかな偶然の一致。
これはこれで楽しいものである。

帰宅後、早速、「お好み焼き」を食べたことは、もはや言わずもがな。
友人との会話がこのような意外な形で現実となったわけである。

それにしても……

――当選で「お好み焼き」を食べるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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