第41話 『以心伝心』      ~言わずして伝わる人の想い~

文字数 1,276文字

「以心伝心」という言葉がある。
これは「言葉を使わずして、相手の考えていることが伝わる」ことを言う。
言葉にして言っていないのに、その相手との物事が上手く運ぶのである。
実際、「以心伝心」体験をしたことがある人も多いことだろう。
私も幾度か体験しているが、これには、毎回、本当に驚かされている。
あの時も、まさにそうだった。

名古屋で一人暮らしをしていた頃のこと。
その日、実家へとクルマを走らせていた。
久しぶりの帰省である。

信号待ちで、ふと街角の洋菓子店が目に留まった。
そう言えば……

「最近、シュークリーム食べてないな…‥」

そうである。
私はシュークリーム好きである。
洋菓子と言えばケーキではない。
当然の如くシュークリームなのである。

中でも「Wシュー」は最高。
フワフワのシュー皮の中に生クリームとカスタードクリーム。
食べる部分によって、その比率が異なり味が多彩に変化する。
正直、この美味なる菓子を考えた人は天才だと思う。
あぁ、素晴らしきかな、シュークリーム……

「ハッ!」

――し、しまった、やらかした……

そう気づいた……が、時すでに遅し。
どうやら、またもや、やらかしてしまったらしい。

好きな食べ物を豊かにイメージすると、無性にそれが食べたくなる。
結果、頭の中でシュークリームがぐるぐると回りだした。

その後、高速道路に乗ったが、頭の中は……

「シュークリーム、シュークリーム、シュークリーム……」

その言葉が駆け巡る。
頭の中が見事にシュークリーム一色になってしまった。

「あぁ、シュークリーム、食べてぇえ」

そんな気持ちを抱えつつ、なんとか実家に辿り着いた。

「ただいまぁ」

実家に帰ると、まずは手洗い、うがい。
手持ちの荷物を自分の部屋へと運んだ。

とりあえず何か飲もうと、冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫に何やら白い大きな箱が入っている。

「何だろう……」

私はその箱を取り出しフタを開けてみた。
もうお気づきだろう。

そうである。
中には、なんと!

――シュークリーム!

家族が「なんとなく買っておいた」とのことだった。
なんという偶然だろうか!

「こ、こ、これは、嬉しい!」

ちなみに、家族は「私がシュークリーム好き」ということを知っていたかと言うと……

――じつは、知らない

私が「シュークリーム好きに覚醒」したのは、一人暮らしを始めて以来のこと。

由って、家族は私がシュークリーム好きであることを知らない。
それにも関わらず、このようなことが起きたのである。

まさに「以心伝心」。

実際、不思議と食べ物に関する偶然の一致は多い。
かなりの頻度で起きる。

『お好み焼き(第34話)』でも起きた。

さらに、不思議なことに……

二日前、『エアロスミス(第39話)』で「たこ焼き」のことを書いた。

その時、ふと「たこ焼き食べたいな」と思った。

すると、その翌日、知人から……
なんと!

――「たこ焼き」をいただいた!

驚きである!



どうして、こうも偶然の一致が起きるのだろうか。

やはり「以心伝心」人の想いは言葉にせずとも、しっかりと伝わるのだろう。

それにしても……

――言わずして、人の想いが伝わるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み