第2話 「テレカ」と「雪の結晶」と「天使」

文字数 1,263文字

「偶然の一致」にはおもしろい性質がある。
それは「偶然の一致に、興味を持ち始めると、実際に偶然の一致が起こる」というものである。
あの時の出来事も、まさにそれだった。

その日、私は後輩に「偶然の一致」の話をしていた。その中で、主に3つの話をした。

1つ目は「テレホンカード」の使用済みのモノを職場で集めているということ。
2つ目は「雪の結晶」の話。
3つ目は「天使」に関する偶然の一致の話をした。

後輩は、どの話もとても興味深く聞き入っていた。どうやら、偶然の一致に大きな興味を抱いたようである。
これは偶然の一致が起こる「兆し」である。
私は帰り際に、後輩にこう伝えた。

「絶対に偶然の一致が起こるからな」

なんとなくだが、確信めいたものを感じたので、その言葉を口にした。
後輩は、ありがとうございます、と言い、嬉しそうに帰っていった。

ところが、その翌日。
とんでもない出来事が起きた!と、後輩が興奮冷めやらぬ様子で私のもとにやって来た。

「先輩!本当に偶然の一致が起きました!」

後輩から話を伺うと、確かに偶然の一致が起きていた。
なんとも、私から「天使」の話を聞いた後輩が家に帰ると、丁度その時、たまたま、お母さんが、なんと!

――「天使」の雑誌記事を読んでいた!

うむ、これは確かに偶然の一致である!
後輩は偶然の一致を初めて体験できたとのことで、とても喜び興奮していた。

さらに後輩は、もう1つ偶然の一致が起きたと話してきた。
昨日、私が「テレホンカード」を職場で集めている話をしたわけだが、帰りに駅で「テレホンカード」を見つけたというのである。
後輩は、カバンから、駅で見つけた「テレホンカード」を取り出し、私に手渡した。

――おおお!これはスゴイ!

これは、私が数多く体験してきた中でも、かなり「凄い」驚愕の偶然の一致であった。

「……え?」

駅で「テレホンカード」を見つけることが、そんなに「凄い」ことだろうか、と思われただろうか。
私はその「テレホンカード」を眺め、深く感心しつつ言った。

「うむむ……これは、めちゃくちゃ凄い偶然の一致だ……」

私の真剣過ぎるほどのリアクションに後輩も、「そこまでスゴイですかね?」と少しきょとんとしている。
どうやら、後輩は、まだこの偶然の一致の、本当の「凄さ」に気づいていないらしい。

私は、黙って、その「テレホンカード」をテーブルの上に置き、カード表面のとある部分をスッと指差した。
私が「指差した部分」を後輩が覗き込んだ、その瞬間!

――あああっ!ス、スゴイ!

後輩はそのあまりの「凄さ」に気づき、目を丸くして思わず驚嘆の声を上げた!

そうである。
私は、昨日、「テレホンカード」「雪の結晶」「天使」と、3つの話を後輩にした。
そして、その「テレホンカード」に描かれていたデザインは、紛れもなく……

――「雪の結晶」だった!

驚愕の偶然の一致である。

私が話した数時間後、「天使」「テレホンカード」「雪の結晶」これら全てに関わる偶然の一致が後輩の身に起きたのである。

後輩は驚きを隠し切れない様子であった……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。


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