第35話 友人との見えない繋がり ~まさかの状況で現れたのは~

文字数 1,268文字

友人との間に不思議な偶然の出来事が起きる。
親しい間柄には「以心伝心」などという言葉もある。
人と人には「見えない繋がりがあり、それにより互いに助け合うことができる」かのように思える出来事すら起きる。
あの時も、まさにそうだった。

街の文具店へクルマを走らせていた。
仕事で使用するホワイトボードを購入する為である。

「確かこの辺りにあったはずだが……」

同市内ではあるが、初めて行く場所だった。
しっかりと調べずに来てしまった為、なかなか目的の文具店が見つからない。

「じゃぁ、スマホで調べれば良いのでは」

と思われたことだろう。

何を隠そう、私はガラケー派である。
そうである。ガラケー派なのである。

しかも、ネットも使えない仕様になっている。
よって、なんとか自力で文具店を見つけるしかない。

この辺りの路地は一方通行の細道がやたらと多い。
その為、ぐるりと大きく迂回しつつクルマを走らせなければならない。

なかなか思う方向にクルマを走らせることすらできない。

「しまったな。しっかり場所を調べておくべきだった」

目的の文具店に、なかなか辿り着けず困り果てた。
クルマを停車させ、車内から周囲を見渡してみた。

ひっそりとした細い路地には、誰も歩いていない。
これでは、人に尋ねることすら出来ない。

「もう一周してみるか」

私はしぶしぶおもむろにクルマを走らせた。
ところが、またまた一方通行に行く手を阻まれ、同じ場所に戻って来てしまった。

「うむむ……困ったぞ」

私は再びクルマを停車させ、車内から窓の外を眺めた。
すると……

――えええっ!

あまりの驚きに私は息を飲んだ。

こちらに向かって歩いて来る人物がいる。
それは……なんと!

――中学以来の親友だった!

「ま、マジか……」

まるで友のピンチに颯爽と現れるヒーローの如き姿。
ウィンドウを開け、声を掛けた。

「うっす!」

路肩に停車しているクルマから、いきなり声を掛けられ、親友は一瞬たじろぎ身をひるがえしつつ驚きの声を上げた。

「お、おおお!ビビった!」

親友が驚くのにも頷ける。
まさか、このような場所で私に会うとは思ってもみなかっただろう。

私も驚きつつ、親友に尋ねた。

「何で、こんなところ歩いとる」

なんでも、親友は仕事を終えて家へ帰る為、職場の駐車場へ向うところだった。
なるほど。

「そっちは、こんなところで何しとるん」
「あぁ、じつは、困っていたのだが……」

こうして、私はから目的の文具店の場所を聞き、無事に辿り着くことができた。

しかしながら、この出来事には心底驚いた。

このような状況で、まさか親友と会うとは思ってもみなかった。
親友は私が困り助けを必要としているところに現れたのである。
これには本当に助けられた。

私の状況を知っていて現れたかのようなタイミング。
親友には私の状況が見えていたかのような出来事である。

ひょっとすると……

人と人は見えない何かで繋がっており、無意識の行動により、互いに助け合っているのかも知れない。
そんな風にも思える出来事であった。

それにしても……

――ピンチの時に親友が現れるとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。


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