第36話 心が語り掛ける「お知らせ」  ~郵便モヤモヤ~

文字数 1,474文字

心がモヤモヤする時。
それは何か大切なことを心が伝えてきている時なのかも知れない。
心のモヤモヤの声に耳を傾け行動に移すと、必ず不思議なことが起こるのである。
あの時も、まさにそうであった。

友人とカラオケ店に行った時のこと。
カラオケ店は私の部屋から近く、5分程の場所にあった。
友人と二人、「今日は思いっきり歌おう」と意気込んでいた。

互いに交互に曲を入れ歌い始めた。

懐かしのあの曲この曲も流れ出し。
得意の『ギリギリchop』もさく裂。

いつものようにカラオケを楽しんでいた。

――ところが……

ふいに、なにやら落ち着かない気持ちになってきた。

心がモヤモヤするのである。

しかも、それが少しずつ大きくなってくる。
これでは、楽しく歌など歌えまい。

どうにも心のモヤモヤが気になる。

「一体、心は何を言っているのだろうか」

自分の心に問いかけてみた。
すると、なんとなく、心のモヤモヤが……

「部屋に戻った方がよい…‥」

と、言っているような気がした。
そうである。なんとなく、そんな気がした。

そこで、私は自分の部屋に戻ってみることにした。

「すまない。一瞬だけ、部屋に戻る」

友人にそう伝えると、カラオケ店を出て足早に自分の部屋へと向かった。

「こんなことをして意味があるのだろうか」

心の声に従って行動したものの、その先に何があるのかは、まったく不明である。

部屋まで行って何も無ければ、すぐに戻れば良い。
まずは、自分の「直感」を信じて行動してみよう。

そうこう考えているうちに、入居しているマンションに着いた。

すると、まさに、その時!

――ブロロロロロロ……

一台のバイクが近づいて来た。
郵便配達のバイクであった。

「なるほど!そういうことだったのか!」

じつは、ここ最近、なるべく早く受け取りたい郵便物があった。

そんな中、カラオケ店で心がモヤモヤし、自分の部屋に戻ると……
なんと!
そこに見事なタイミングで郵便配達のバイクが現われたのである!

この一連の流れからすると……

――『私宛の郵便物が届いた』

ということが推測される。

本当に私宛の郵便物があるかどうかは、配達員氏にお尋ねしてみないことには判らない。
しかし、この流れから「間違いなく私宛の郵便物が届いた」と確信をした。

そこで、自分の氏名とともに、このように配達員氏にお声を掛けてみた。

「おそらく、その中に私への郵便物があるはずです」

まるで、プロ・マジシャンのような口ぶりである。

配達員氏は数枚の郵便物を手に、宛名を確認しはじめた。

すると……なんと!

「あ、本当ですね!ありますね!」

――見事に!予言的中!

チャチャチャチャチャチャチャチャン……

頭の中にMr.マリックの曲が流れた。

配達員氏は笑顔で1通の封書を渡してくれた。

「どうぞ、こちらです」
「ありがとうございます」

封書を受け取り、差出人を見ると、やはりそうであった。
私が早く受け取りたかった封書だった。

この時、心のモヤモヤは完全に消えていた。
やはり心はこの封書のことを「知らせて」くれていたかのだろうか……

心がモヤモヤし部屋に戻ると同時に郵便配達のバイクが現われた。
まさに驚きのタイミング。
さらには、早く受け取りたかった封書が、そこに届いたのである。

これは、まるで……

心のモヤモヤが「郵便物が届くことを知らせてくれた」かのようではないか……

このような出来事が現実に起きた。
これには大きく驚かされた。

心がモヤモヤする時とは、きっと心が何かを語り掛けてくれているに違いない。
ふと、そんな考えが頭をよぎった。

それにしても……

――心のモヤモヤが「お知らせ」とは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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