第17話 意外なところに潜む幸運 ~チューニングキー~
文字数 1,602文字
幸運は意外なところに潜んでいるものである。
一見すると、「えっ?」と思うような快くない出来事でも、実はその裏にちょっとした幸運が潜んでいることがある。
あの時の出来事も、まさにそれだった。
名古屋でバンド活動をしていた時のこと。
当時、私は複数のバンドを掛け持ちしていた。
そのうちの1つは学生時代の友人が「バンドを始めたい」と言うので、バンド経験者である私が指導者を兼ねて加入したバンドだった。
このバンドでは私以外は全員初心者である。
そんなある日。
ドラムを担当する友人Aが私に「チューニングキーを買ってきてほしい」という。
チューニングキーとは、5センチほどのT字型をした金属製の器具で、ドラムの皮の張り具合を調節し音程を合わせる道具である。
「え?なぜ、俺が?」
率直に私はそう感じた。
ドラムの道具であれば、ドラムを担当する友人Aが自分で買いに行けばよい。
いくら初心者でも、それくらいのことは自分で出来るだろう。
なのに、わざわざ私に買って来てくれと言うのである。
――一体どういうつもりだろうか。
私とて複数のバンドを掛け持ちしていて忙しい。
冗談じゃぁない、甘えにも程がある。
よし、断ってやれ。私は友人Aに言った。
「わかった。じゃあ、買ってきてやろう」
――えっ?と思われただろうか
そうである。
私は友人Aの依頼を断ろうと思ったが、じつは、もう一つ別の考えが脳裏を過り土壇場で考え方を変えた。
友人Aは「自分で買いに行けるのに、わざわざ私に頼んだ」ということは、ここに「何かしら意味がある」と考えたのである。
そして何より友人Aは本来、そのような雑事を私に頼むような性格ではない。
そして友人Aは私の親友である。
親友の言う言葉には「必ず何かしら重要な意味があるはず」と考えた。
それを検証する為にも、私は友人Aの依頼を引き受けることにした。
なんとなくだが、この時、妙に「何かしら意味がある」という確信めいた感覚もあった。
翌日。
私は仕事帰りにクルマを走らせ、寄り道をして、職場近くの楽器店へ行ってみた。
その場所に楽器店があることは知っていたが、店内に入るのは初めてである。
まずはチューニングキーを買い、先に用事を済ませ、店内を見て回ることにした。
私はギターでバンドに参加していた為、新製品のマルチエフェクターが欲しかった。
マルチエフェクターとは、ギターに接続して、様々な音色に変える機材である。
数日前に、最新型のマルチエフェクターが発売されたのだが、高性能なだけあり、その分、値段も高価格であった。
私はその新製品が欲しかったものの、「これはちょっと高いなぁ」と思い、買うことが出来なかったのである。
そんなことを考えながら店内を見ていると。
――えええっ!こ、これは……
私は驚きに目を丸くした。
そこには、私が欲しかった新製品のマルチエフェクターが大特価のラベルが貼られ、他店よりも圧倒的に安い価格で販売されていたのである。
私は迷わず、そのマルチエフェクターを購入した。
「あぁ、なるほど。それで友人Aは俺に頼んだのか」
そうである。私がこの店に来たのは初めてであり、友人Aが「チューニングキーを買って来てくれ」と頼んだので、たまたま入った店である。
そして、そのお陰で私は欲しかった最新型マルチエフェクターを圧倒的な大特価で購入することができた。
まさに、友人A様様である。
同時に、「親友の言葉には重要な意味がある」ということも実証された。
友人Aは私が欲しがっていたマルチエフェクターが大特価で売られている、この店に行かせる為に、私にチューニングキーのお使いを頼んだのである。
勿論、無意識に、だが……
第12話「信長エピソード」の時もそうだった。
自分のことを大切に考えてくれている人からの言葉は、一見「え?」と感じても、「いや、待てよ」と、少し考え方を変えてみる。
すると…‥
――そこに思わぬ幸運が見つかる……
まさに「事実は小説よりも奇なり」である。
一見すると、「えっ?」と思うような快くない出来事でも、実はその裏にちょっとした幸運が潜んでいることがある。
あの時の出来事も、まさにそれだった。
名古屋でバンド活動をしていた時のこと。
当時、私は複数のバンドを掛け持ちしていた。
そのうちの1つは学生時代の友人が「バンドを始めたい」と言うので、バンド経験者である私が指導者を兼ねて加入したバンドだった。
このバンドでは私以外は全員初心者である。
そんなある日。
ドラムを担当する友人Aが私に「チューニングキーを買ってきてほしい」という。
チューニングキーとは、5センチほどのT字型をした金属製の器具で、ドラムの皮の張り具合を調節し音程を合わせる道具である。
「え?なぜ、俺が?」
率直に私はそう感じた。
ドラムの道具であれば、ドラムを担当する友人Aが自分で買いに行けばよい。
いくら初心者でも、それくらいのことは自分で出来るだろう。
なのに、わざわざ私に買って来てくれと言うのである。
――一体どういうつもりだろうか。
私とて複数のバンドを掛け持ちしていて忙しい。
冗談じゃぁない、甘えにも程がある。
よし、断ってやれ。私は友人Aに言った。
「わかった。じゃあ、買ってきてやろう」
――えっ?と思われただろうか
そうである。
私は友人Aの依頼を断ろうと思ったが、じつは、もう一つ別の考えが脳裏を過り土壇場で考え方を変えた。
友人Aは「自分で買いに行けるのに、わざわざ私に頼んだ」ということは、ここに「何かしら意味がある」と考えたのである。
そして何より友人Aは本来、そのような雑事を私に頼むような性格ではない。
そして友人Aは私の親友である。
親友の言う言葉には「必ず何かしら重要な意味があるはず」と考えた。
それを検証する為にも、私は友人Aの依頼を引き受けることにした。
なんとなくだが、この時、妙に「何かしら意味がある」という確信めいた感覚もあった。
翌日。
私は仕事帰りにクルマを走らせ、寄り道をして、職場近くの楽器店へ行ってみた。
その場所に楽器店があることは知っていたが、店内に入るのは初めてである。
まずはチューニングキーを買い、先に用事を済ませ、店内を見て回ることにした。
私はギターでバンドに参加していた為、新製品のマルチエフェクターが欲しかった。
マルチエフェクターとは、ギターに接続して、様々な音色に変える機材である。
数日前に、最新型のマルチエフェクターが発売されたのだが、高性能なだけあり、その分、値段も高価格であった。
私はその新製品が欲しかったものの、「これはちょっと高いなぁ」と思い、買うことが出来なかったのである。
そんなことを考えながら店内を見ていると。
――えええっ!こ、これは……
私は驚きに目を丸くした。
そこには、私が欲しかった新製品のマルチエフェクターが大特価のラベルが貼られ、他店よりも圧倒的に安い価格で販売されていたのである。
私は迷わず、そのマルチエフェクターを購入した。
「あぁ、なるほど。それで友人Aは俺に頼んだのか」
そうである。私がこの店に来たのは初めてであり、友人Aが「チューニングキーを買って来てくれ」と頼んだので、たまたま入った店である。
そして、そのお陰で私は欲しかった最新型マルチエフェクターを圧倒的な大特価で購入することができた。
まさに、友人A様様である。
同時に、「親友の言葉には重要な意味がある」ということも実証された。
友人Aは私が欲しがっていたマルチエフェクターが大特価で売られている、この店に行かせる為に、私にチューニングキーのお使いを頼んだのである。
勿論、無意識に、だが……
第12話「信長エピソード」の時もそうだった。
自分のことを大切に考えてくれている人からの言葉は、一見「え?」と感じても、「いや、待てよ」と、少し考え方を変えてみる。
すると…‥
――そこに思わぬ幸運が見つかる……
まさに「事実は小説よりも奇なり」である。