第19話 「海老」で「うに」を ~ハズレの中に当たりがある~
文字数 1,042文字
物事は「損得」で考えない方がよい。
事実、「損して得取れ」と言う言葉もある。
これは一体、どういう意味なのだろうか。
本当に「損をして得を取る」ようなことが起こり得るのだろうか。
じつは、その疑問の答えとなり得る体験をしたことがある。
これは大学ОB会の二次会でのこと。
二次会はとある居酒屋の座敷で行われた。
座敷のテーブルには、すでに人数分の箸と突き出しが並べられていた。
早めに会場に入った私は、どの席に座ろうかと考えた。
「このあたりの席でイイか……」
席を決め、座ろうとした、その時。
ふと、テーブルの上に置かれた突き出しの小鉢を見た。
――ん?
なにやら異変に気づいた。
小鉢には玉子豆腐が入っており、その上に「甘海老」が乗っていて、さらに、その上に「わさび」が乗っているはず……なのだが……
どうしたものか、私の座ろうとした席の小鉢にだけ「わさび」が乗っていない。
この料理には「わさび」があった方がアクセントになり美味しいはず。
「調理人が、乗せ忘れたのだろうか」
勿論、この時、別の席に座ることも出来た。
しかし、私はそれをしなかった。
結局、誰かが「わさびの無い小鉢の席」に座ることになる。
ならば、「私がそのハズレくじを引いておけば良い」と考え、あえてその席に座った。
その後、続々と参加者たちが座敷に流れ入り、各々、席に着いた。
次々、ドリンクが運び込まれ、乾杯の準備が進められる。
そんな中、ふと一人の店員と目が合った。
――ま、一応、伝えておくか……
「小鉢、わさびが乗っていませんでしたよ」
「あぁ、すみません。すぐにお持ちします」
とても丁寧で爽やかな対応だった。
とくに小鉢を替えてもらうつもりも無かったが、その申し出を甘受することにした。
しばらくして、店員が戻ってきた。
ニコリと笑みを浮かべながら、「すみませんでした。どうぞ、こちらを」と、私の前に小鉢を置いてくれた。
――ん!
その小鉢を見て、少し驚いた。
「おぉ、お心遣い、ありがとうございます」
なんとも、お店の粋な計らいで、その小鉢の玉子豆腐の上には「甘海老」ではなく……
なんと!
――「うに」が乗っていた!
私も笑みを浮かべ、お礼を伝えた。
ちなみに、私は「甘海老」よりも「うに」の方が断然好きである。
あえて、ハズレの席を自ら選んだわけだが、「こんな幸運もあるのだな」と、少しばかり微笑ましい気持ちになった。
こうして、図らずも「損して得取れ」の意味を体験することになったわけである。
――ハズレを選び「うに」になるとは…‥
まさに「事実は小説よりも奇なり」である。
事実、「損して得取れ」と言う言葉もある。
これは一体、どういう意味なのだろうか。
本当に「損をして得を取る」ようなことが起こり得るのだろうか。
じつは、その疑問の答えとなり得る体験をしたことがある。
これは大学ОB会の二次会でのこと。
二次会はとある居酒屋の座敷で行われた。
座敷のテーブルには、すでに人数分の箸と突き出しが並べられていた。
早めに会場に入った私は、どの席に座ろうかと考えた。
「このあたりの席でイイか……」
席を決め、座ろうとした、その時。
ふと、テーブルの上に置かれた突き出しの小鉢を見た。
――ん?
なにやら異変に気づいた。
小鉢には玉子豆腐が入っており、その上に「甘海老」が乗っていて、さらに、その上に「わさび」が乗っているはず……なのだが……
どうしたものか、私の座ろうとした席の小鉢にだけ「わさび」が乗っていない。
この料理には「わさび」があった方がアクセントになり美味しいはず。
「調理人が、乗せ忘れたのだろうか」
勿論、この時、別の席に座ることも出来た。
しかし、私はそれをしなかった。
結局、誰かが「わさびの無い小鉢の席」に座ることになる。
ならば、「私がそのハズレくじを引いておけば良い」と考え、あえてその席に座った。
その後、続々と参加者たちが座敷に流れ入り、各々、席に着いた。
次々、ドリンクが運び込まれ、乾杯の準備が進められる。
そんな中、ふと一人の店員と目が合った。
――ま、一応、伝えておくか……
「小鉢、わさびが乗っていませんでしたよ」
「あぁ、すみません。すぐにお持ちします」
とても丁寧で爽やかな対応だった。
とくに小鉢を替えてもらうつもりも無かったが、その申し出を甘受することにした。
しばらくして、店員が戻ってきた。
ニコリと笑みを浮かべながら、「すみませんでした。どうぞ、こちらを」と、私の前に小鉢を置いてくれた。
――ん!
その小鉢を見て、少し驚いた。
「おぉ、お心遣い、ありがとうございます」
なんとも、お店の粋な計らいで、その小鉢の玉子豆腐の上には「甘海老」ではなく……
なんと!
――「うに」が乗っていた!
私も笑みを浮かべ、お礼を伝えた。
ちなみに、私は「甘海老」よりも「うに」の方が断然好きである。
あえて、ハズレの席を自ら選んだわけだが、「こんな幸運もあるのだな」と、少しばかり微笑ましい気持ちになった。
こうして、図らずも「損して得取れ」の意味を体験することになったわけである。
――ハズレを選び「うに」になるとは…‥
まさに「事実は小説よりも奇なり」である。