第46話 ふとした想いが現実に  ~日常の嬉しい偶然の一致~

文字数 1,319文字

ふと、想ったことが現実になる。
それがたとえ、ささやかなことであっても嬉しいものである。
何気ない日常の中に、一輪の花を添えるような出来事となる。
あの時も、まさにそうだった。

100円ショップ。
なにげに棚の上の商品に目がとまった。

「へええ、ミニカー……」

玩具の小さなクルマ、ミニカーだった。
ミニカーを目にするのは、何十年振りのことだろうか。
どういうわけか、なんとなく欲しいと感じた。

そう言えば、子どもの頃、ミニカーが好きだった。
おそらく、その懐かしさから欲しいと感じたのだろう。

「1つ買おうかな」

部屋の飾りとして置くのも良いだろう。
そんなことを考えた。

ところが……

しばらく考えた後、ミニカーを棚に戻した。
別にミニカーが欲しくなくなったわけではない。
むしろ、欲しい。

しかし、どうせ部屋に飾るのならば、タイプやカラーにもこだわりたい。

――タイプは「スポーツカー」
――カラーは「レッド」

「真紅のスポーツカー」が良い、かな。

そうだなぁ……

輸入車ならば「フェラーリ」。
国産車ならば「フェアレディZ」。

といったところだろうか。
さらなる希望が出てきたわけである。

無理して妥協して買うより、自分の理想に合ったモノが欲しい。

「また、いつか良いモノを見つけた時に、買おう」

そう考えつつ、その場を去った。

この「また、いつか」が曲者である。
「その、いつか」がやって来ることはあるのだろうか。
この先、ミニカーを部屋に飾ることはあるのだろうか。

ところが……

この後、少しばかり面白い出来事が起きた。

数日後。
たまたま、電気自動車のショールームを訪れた。
係の女性から、電気自動車に関して詳しく教えていただいた。

「勉強になりました。ありがとうございました」

お礼を伝えて、会場を去ろうとした時のことだった。

「よろしければ、おひとつ、お持ちください」

受付の女性が大きな箱を差し出し、微笑んでいた。

――ん?

箱の中を覗き込んでみた。
中には手のひらサイズの小箱が詰まっている。

その小箱をよくよく見ると……
それは、なんと!

――ミニカーであった!

「おぉ、ありがとうございます」

ショールームの記念品だけあって、しっかりしたミニカーである。

――どれにしようかな……

様々な車種が揃っている。

「おおっ!これは!」

そこにあったのは……
なんと!

――フェアレディZ!

「ありがとうございます。では、こちらを」

その中から「真紅」の「フェアレディZ」を選んだ。
望み通りの「真紅のスポーツカー」である。

思わぬ場所で、車種からカラーまで、完全に希望どおりのミニカーをいただいてしまった。

――希望と完全に一致

まさか、こんなことが起こるとは……

さすがに、これには驚きである。

あの時、「妥協して買わなくて良かった」と思った。
同時に、「自分の希望に素直になること」は大切だと感じた。

もう一度お礼を伝え、会釈をし、ショールームを後にした。

このような形で、ふと想ったことが完全に叶ってしまった。
ささやかな出来事であるが、これはこれで嬉しいものである。

「面白い偶然もあるものだな……」





そう呟きつつ、その真紅のミニカーを部屋の棚の上に飾った。

それにしても……

――車種やカラーまで一致するとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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