第16話 「うなぎ」か「罰金」人生の分かれ道 ~予兆を活かす~

文字数 1,124文字

時々、人生には「予兆」のような出来事が起こる。
この「予兆」を上手く活かすと、人生をより良くすることが出来る。
あの時の出来事も、まさにそうと言える。

その日、私は知人にクルマで駅まで送ってもらっていた。
運転をしているのは、知人なのだが、その運転に少し気になるところがあった。
それは、知人がしっかりと一旦停止をしないことであった。
停止線の前まではしっかりと減速はするのだが、そこで止まったのか、止まらなかったのか、どうにも微妙なのである。

停止線で止まったかのように感じた瞬間に、すぐにクルマを動かしているので、停止していないようにも感じる。
おそらく本人は、これでも一旦停止しているつもりなのだろう。
そこで、私は知人に確認してみた。

「さっきから、一旦停止してなくね?」
「え?しているよ。なぜ?」

やはり、そうである。
本人としては、これでもしっかりと停止しているつもりらしい。

「この停止の仕方は、多分、警察に捕まるぞ」
「ははは、大丈夫、大丈夫!」

知人は私の忠告を完全にスルーして、大丈夫だと言い切っていた。

ところが、数日後。驚くべきことが起こった。

「あぁ~!イタイ!イタイ!イタ過ぎる!」

知人がどんよりと落ち込みつつも憤慨していた。
知人は、なんと!

――一旦停止を怠り警察に捕まったのである!

なんとも、私が言ったことが現実となってしまった。
そして罰金7000円。

「うぅっ、7000円もあれば、うなぎが食べられたのに!」
「そこかい!」

知人の的外れな憤慨に思わず、私はツッコミを入れてしまった。

「ほらな、言っただろ。あの停車の仕方では不十分だと」

私は、知人にそう言った。

「た、確かに……し、しまった……」

知人は今更ながらに、私の忠告をしっかりと守るべきだったと、深く後悔していた。

かりに知人が私の忠告を守り、一旦停止をしっかり行っていたのであれば、警察に捕まり罰金を食らうことも無かった。

さらには、知人が言うように、食らうのは「罰金」ではなく、知人の大好物の「うなぎ」を食らうことも可能だっただろう。

人に何かを忠告された時、じつはそれは、この先に起こる出来事の何らかの「予兆」なのかも知れない。
この「予兆」を上手く活かせるかどうかで、「うなぎ」か「罰金」か、人生を大きく二分する。

そう考えると、むしろ人からの忠告を積極的に「予兆」と考えた方が良い。

人から「停車の仕方が不十分」と忠告されたのであれば、「これは近々、警察に見つかる予兆かも」と、考え、行動を改める。
そうすることで、将来起こるよからぬ出来事を回避できるわけである。

それにしても……
わずか数日で、言ったことが現実になるとは……

――やはり、あれが「予兆」だったのだろう

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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