第４０話　『３月１５日に注目』　　～後からわかる偶然の一致～

日常には多くの偶然の一致が起きている。
ところが、それに気づかず過ごしてしまっているケースも少なくはない。
実際、「じつは偶然の一致が起きていた」と言うことが、後になり判明することもある。
あの時も、まさにそうだった。

昨年、春のこと。
『いちご』の偶然の一致が多発していた。

『いちご』とは果物の『いちご』である。
これを語呂合わせで考えると「１」と「５」。

つまり『いちご』とは「１５」と表すことが出来る。

ここ数日、やたらと『いちご』や『１５』の偶然の一致が起こる。
あまりにも『いちご１５』の偶然の一致が多発するので……
ひょっとしたら、来月……

「３月１５日に素晴らしいことでも起こるのでは」

などと、考えはじめていた。

すると、ここで驚くべきことが起きた。

それは、調べものをしている時のこと……
なんと！

――『３月１５日に注目』

と、書かれた文章を目にした！

「いちご１５」の偶然の一致が多発し「３月１５日」が気になり始めていた。
そこに、このドンピシャの「３月１５日に注目しろ」である！

「おぉ、これは、す、凄い……」

ここまで具体的なメッセージとは！
これには否が応でも期待が膨らむ！

「うむむ、これは本当に３月１５日に良い事があるかも……」

きたる３月１５日に向けて、期待が大きく膨らんだ。

一ヵ月後、３月１５日。
遂に、その日はやってきた。

「今日は、一体、どんな素晴らしいことが起こるのだろうか」

かつてないほどの「いちご１５」の偶然の一致が多発していただけに、期待も高まる。

ところが……

この日、終わってみると、とくに良いことは起きなかった。
そうである。とくに目ぼしい出来事は何も起きなかったのである。

あえて、良かったこと、と言うならば……

――『スニーカー』を安く購入できた

それくらいだろうか……

私は、毎晩、トレーニングをしている。
その時に履く運動靴が少々傷んでいた。

そろそろ買い替え時と、考えていたところに、丁度、安いスニーカーを購入できた。

良かったコトと言えば、それくらいだ。
他にはとくに、何も無し。

――『３月１５日に注目しろ』

そうまで言われていたのに、良かったことが『靴』を買ったことだけとは……

せめて「１５」にちなんで美味しい「いちご」でも食べられたら良かったのだが……
実際、食ったのは「イチゴ」ではなく「肩透かし」であった。

「うむむ、これだけとは……」

少しばかり納得がいかない。

――いや、まてよ……

ひょっとして３月１５日に何か別の意味があるかもしれない。
ふと、そんな考えが思い浮かんだ。

そこで、ネットで調べてみた。

「えっと、３月１５日、はと……」

検索窓に打ち込み、エンターキーをタン！と叩いた。
すると３月１５日は……
なんと！

――『靴の記念日』だった！

驚愕である！

偶然にも！３月１５日『靴の記念日』に『靴』を買っていた……

「って、それだけかい！」

私は渾身のツッコミを入れ、ノートパソコンを静かに閉じた。

とは言え……

やはり偶然の一致は起きていた。

知らずして『靴の記念日』に靴を買った。
これも見事な偶然の一致の出来事である。

「いちご１５」の偶然の一致の多発から、「３月１５日」が気になりだした。
そこに「３月１５日に注目」なる文章と遭遇。

３月１５日になり、偶然安い靴がみつかり『靴』を購入。
帰宅後「３月１５日」を調べると『靴の記念日』だった。

期待し過ぎていただけに、ちょっとアレだが……

物語のように展開された見事な偶然の一致。

本人が気づいていないところにも偶然の一致は、確かに起きているのである。

そうである。
あなたにもどこかで必ず偶然の一致は起きているのである。

それにしても……

――靴の記念日に知らずして靴を購入とは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。