第1話 奇跡的な偶然の一致 ~奇跡の出会い~
文字数 1,598文字
人生には「これでもか」と言わんばかりに奇跡的な偶然の一致が起こることがある。
あの時の出来事も、まさにそれだった。
上京して間もない頃。東京の街を覚える為に、まずは手始めに新宿の街を散策してみることにした。
とりわけ新宿を選んだ理由はないのだが、当時の私は「東京と言えば新宿」という勝手なイメージを抱いていたからである。
新宿駅の東口を出て、アルタ前を歩き、紀伊国屋書店、伊勢丹など、見て回った。
とくに目的もなく、ただぶらり散策をしていると、ふと一軒の画廊が目に留まった。
――絵でも観てみるか……
私は絵画などの芸術がことさらに好きなので、なにげにその画廊に入ってみた。
店内には、私よりも年下と思しき女性の店員がいた。
私が壁に飾られた絵を熱心に見入っていると、店員が声を掛けてきた。
「その絵がお好きですか」
「ええ、イイ絵ですね」
いきなり背後から声を掛けられ少しばかり驚いたが、私はそう言葉を返した。
そこから、自然と店員と絵画や芸術の話で盛り上がった。
相手は店員なので、「私の話に合わせてくれている」ということを差し引いても、互いに絵画好きという共通の価値観の下に、とても話が合った。
ところが、ここで驚くべき出来事が起きた。
ふと話が別の話題に逸れた時のことだった。
私が、最近、上京したばかりであることを話すと、なんとも店員も少し嬉しそうに、自分も最近上京したばかりだと話してくれた。
さらに、互いに上京した時期を詳しく話すと、二人とも「昨年の秋ごろ」とほぼ同時期に上京していたことが判明したのである。
「奇遇ですねぇ」
店員は微笑みながらそう言った。しかしながら、さらに偶然の一致は続いた。
私は自分が愛知県の出身だと話すと、なんとも、店員も愛知県の出身だったのである。
「え、そうなのですか!それは奇遇ですね。驚きました!」
店員は、先程よりも驚き少しばかり目を丸くした。確かにそう、奇遇である。互いに芸術好きであり、同じ時期に上京し、さらには同じ愛知県から来たというのである。
「ちなみに、俺は〇〇市です。ご存じですか」
同じ愛知県の出身者であれば名前くらいは知っているかもと思い、私は自分の出身の市の名前をご存じかどうか尋ねてみた。
すると、耳を疑うような驚くべき言葉が返ってきた!
「えええっ!私も〇〇市です!」
これには二人とも驚きの声を上げた。私と店員は出身の市まで同じだったのである!
私はまさか……とは、思いつつも、さらに町の名前も伝えてみた。
「俺は、○○町ですが……」
「えええっ!本当ですか!私も○○町です!」
なんと!町までもが同じだった!こんなことが本当にあるのだろうか!
私は驚きつつ、さらに詳しく実家の場所を伝えてみた。
「俺の実家は○○広場の近くなのですが、判りますか!」
「ええ、判ります!私の実家は○○公園の近くですよ!」
これには二人とも心底驚き、大いに盛り上がってしまった。
「えっ!俺、その公園で子どもの頃よく遊んでいましたよ!」
「えええっ!そうなのですね!私もよく遊んでいましたよ!」
凄まじい偶然の一致である。私の町は複数の区に分かれていて、その区まで同じだった。
たまたま、東京、新宿の画廊で出会った店員が、私と「同じ芸術好き」で「同じ時期に上京」し、出身が「同じ県」で、「同じ市」で、「同じ町」で、「同じ区」で、「子どもの頃に遊んでいた公園まで同じ」だったのである。驚愕の奇跡の出会いである。
この様なことが、実際に起こる確率は一体どのくらいのものなのだろうか……
しかし、これは紛れもなく、実際に起こった事実である。
その女性店員とは、その時、会ったきりであるが、この出来事は今でも鮮明に記憶に刻まれている。
そして、ふと、どうかすると、「店員氏は元気にやっているだろうか」と、あの時の衝撃と共にありありと想い出される。
――人生に、これほどまでの奇跡が起こるとは……
まさに、「事実は小説よりも奇なり」である。
あの時の出来事も、まさにそれだった。
上京して間もない頃。東京の街を覚える為に、まずは手始めに新宿の街を散策してみることにした。
とりわけ新宿を選んだ理由はないのだが、当時の私は「東京と言えば新宿」という勝手なイメージを抱いていたからである。
新宿駅の東口を出て、アルタ前を歩き、紀伊国屋書店、伊勢丹など、見て回った。
とくに目的もなく、ただぶらり散策をしていると、ふと一軒の画廊が目に留まった。
――絵でも観てみるか……
私は絵画などの芸術がことさらに好きなので、なにげにその画廊に入ってみた。
店内には、私よりも年下と思しき女性の店員がいた。
私が壁に飾られた絵を熱心に見入っていると、店員が声を掛けてきた。
「その絵がお好きですか」
「ええ、イイ絵ですね」
いきなり背後から声を掛けられ少しばかり驚いたが、私はそう言葉を返した。
そこから、自然と店員と絵画や芸術の話で盛り上がった。
相手は店員なので、「私の話に合わせてくれている」ということを差し引いても、互いに絵画好きという共通の価値観の下に、とても話が合った。
ところが、ここで驚くべき出来事が起きた。
ふと話が別の話題に逸れた時のことだった。
私が、最近、上京したばかりであることを話すと、なんとも店員も少し嬉しそうに、自分も最近上京したばかりだと話してくれた。
さらに、互いに上京した時期を詳しく話すと、二人とも「昨年の秋ごろ」とほぼ同時期に上京していたことが判明したのである。
「奇遇ですねぇ」
店員は微笑みながらそう言った。しかしながら、さらに偶然の一致は続いた。
私は自分が愛知県の出身だと話すと、なんとも、店員も愛知県の出身だったのである。
「え、そうなのですか!それは奇遇ですね。驚きました!」
店員は、先程よりも驚き少しばかり目を丸くした。確かにそう、奇遇である。互いに芸術好きであり、同じ時期に上京し、さらには同じ愛知県から来たというのである。
「ちなみに、俺は〇〇市です。ご存じですか」
同じ愛知県の出身者であれば名前くらいは知っているかもと思い、私は自分の出身の市の名前をご存じかどうか尋ねてみた。
すると、耳を疑うような驚くべき言葉が返ってきた!
「えええっ!私も〇〇市です!」
これには二人とも驚きの声を上げた。私と店員は出身の市まで同じだったのである!
私はまさか……とは、思いつつも、さらに町の名前も伝えてみた。
「俺は、○○町ですが……」
「えええっ!本当ですか!私も○○町です!」
なんと!町までもが同じだった!こんなことが本当にあるのだろうか!
私は驚きつつ、さらに詳しく実家の場所を伝えてみた。
「俺の実家は○○広場の近くなのですが、判りますか!」
「ええ、判ります!私の実家は○○公園の近くですよ!」
これには二人とも心底驚き、大いに盛り上がってしまった。
「えっ!俺、その公園で子どもの頃よく遊んでいましたよ!」
「えええっ!そうなのですね!私もよく遊んでいましたよ!」
凄まじい偶然の一致である。私の町は複数の区に分かれていて、その区まで同じだった。
たまたま、東京、新宿の画廊で出会った店員が、私と「同じ芸術好き」で「同じ時期に上京」し、出身が「同じ県」で、「同じ市」で、「同じ町」で、「同じ区」で、「子どもの頃に遊んでいた公園まで同じ」だったのである。驚愕の奇跡の出会いである。
この様なことが、実際に起こる確率は一体どのくらいのものなのだろうか……
しかし、これは紛れもなく、実際に起こった事実である。
その女性店員とは、その時、会ったきりであるが、この出来事は今でも鮮明に記憶に刻まれている。
そして、ふと、どうかすると、「店員氏は元気にやっているだろうか」と、あの時の衝撃と共にありありと想い出される。
――人生に、これほどまでの奇跡が起こるとは……
まさに、「事実は小説よりも奇なり」である。