第33話 人生の軌道修正のサイン ~カーペットはやめてくれ~

文字数 1,386文字

驚くべきことに気がついた。
どうやら日常に起こる「イタイ出来事」には重要な意味があるらしい。
なんとも「イタイ出来事」が進むべき道を示してくれるというのである。

「イタイ出来事」とは……

――あいたたた!

と、よそ事を考えていて、タンスの角に足をぶつけたり、何かにぶつかったりしたことはないだろうか。
そのような出来事のことである。

以前、イタイ出来事は偶然的に起きていると思っていた。

ところが、イタイ出来事が発生した状況をつぶさに観察してみると、そこには一定の法則があることに気がついた。
どういうわけか、不思議なことに……

「調子に乗りふざけている時に、イタイ出来事が起こる」

もう少し深掘りすると……

「真剣に取り組む必要があるのにサボっている時」
「よからぬことを考えてしまっている時」

この時、決まって「あいたたた!」とイタイ目に遭うのである。

「え?それ本当?」

と、お思いだろうか。

実際、イタイ出来事が起きる度に、何度も何度も検証してみた。
検証すればするほど、その法則がしっかりと働いていることが明らかになった。

あの時も、まさにそうであった。

ある夜のこと。
夕食を作りながら考え事をしていた。
その頃、私は友人の一人と仲たがいをしてしまっていた。
和解した方が良いと思いつつ、どうしようかと考えていた。
ところが、ここで事件が発生する。
味噌汁をお椀によそおい、部屋に運ぼうとした、その時……
なんと!

――あちちちち!

熱々の味噌汁が手にかかり、お椀を床に落としてしまった!

「うわっ、やってしまった……」

最悪である。
カーペットに味噌汁をこぼしてしまった。

――早く、拭かなければ!

急いでタオルを手にカーペットを拭いた。

「あぁ、これは明らかに法則の発動だ」

私は、この出来事が起こる「直前に何を考えていたのか」を思い返してみた。
すると……

――和解は面倒くさいから、まぁ、いいや!

これである。
このような「よこしなまこと」を考えていた。
だから「イタイ出来事」が起きてしまったのである。

事実、和解した方が良いと判りつつも、投げ出した、その瞬間……

――味噌汁のお椀を床に落とした!

まさに法則の発動である。

しかも、カーペットの上に、である。

フローリングであれば、味噌汁をこぼしても掃除は楽。
ところが、カーペットとなると話が全く変わってくる。

狙いすましたように、カーペット上にこぼすとは……

ある意味、絶妙なタイミングである。

かりに、一歩手前でお椀を落としていたら、フローリング上だった。
部屋に一歩足を踏み入れてから、お椀を落とした。

その一歩の差は大きすぎる。

やはり、これは「絶対に和解をした方が良い」ということなのだろう。

この「イタイ出来事」は、私に「軌道修正をしなさい」と知らせてくれているのである。

人は自分の過ちにはなかなか気づけない。
それを、このような形で知らせてくれた。

これは誠にありがたいことである。

しかしながら、カーペットを拭きながら、正直、私はこう思った。

「頼むから、カーペットはやめてくれ……」

この一件から私は自分の考えを改めた。
友人とも無事に和解することが出来た。

心晴れやかスッキリした。
やはり和解して良かった。

「イタイ出来事」が「人生の正しい道への軌道修正を知らせてくれた」のである。

それにしても、「イタイ出来事」が……

――人生の軌道修正の知らせだったとは……

まさに「事実は小説よりも奇なり」である。



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