第42話 川を読んで(2)

文字数 533文字

 戦後を思い出すと、焼け野と化した駅前には早々とバラックの闇市が
立ち並びんだ。闇市にはなんでも売っていたという。が、普通の人間は
戦時下と変わらず芋も十分食べることができず貧しかった。
 川には鰻やどじょうも蟹も鮎も生息していて、筆者が語るようにジンゾクは
じゃりづいていたが大切なカルシュウム源であった。ある夏の日、父と兄弟で
ゴロという捕魚器で大量に取り、ジンゾク丼に食べた。またとない馳走だった。
清貧の時代を生きたものにとって筆者の話は懐かしいばかりでなく、共に生
かされた同胞としての思い出を新たにしている。今、日本の食糧は輸入に頼っている。
この先食糧危機が来たらどうなる。飽食が当たり前の昨今、時には振り返ってみよう。ぅ
昭和という時代を、敗戦という過去を。
 とうとうYも都会へ向かった。小松島から乗った船はあきつ丸だっのであろう。
多くの青年の夢とドラマを乗せたあきつ丸も港も、時代の流れの中で変貌した。
 団塊という聞き慣れない世は過ぎ、時は移ろうて今や少子高齢化の時代。日開谷
小学校と同じく私の母校も廃校になり、面影も留めていない。
 Uターンという言葉はもう古びたか。
 祖父孫七郎はYの帰る日を待ち望んでいる。
 故郷の大河は、今日も水の都の名の如く悠々と流れている。





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