第32話 マハラジャ

文字数 527文字

 原宿では、 昭和55年には2回目のディスコのブーム
があったらしい。しかし、私の記憶にあるのは昭和60年代に
なってから、ディスコブームのおこぼれに預かったことだ.
 夫の没後たが、が外れたように親衛隊を2~3人連れて
両国橋の麓にあるマハラジャへ行った。軍国酒場で飲んだ
勢いで、はじめて行ったマハラジャ。
いきなりお立ち台に飛び上がり、声をかぎりに叫んだ。
「ソーラーみんな、踊ろう」何人かがお立ち台に上がって来た。
「おばちゃん幾つ」
「60歳だ」
「元気だのー」
「人生これからよ。そら踊れ」
みるみるお立ち台が、人でいっぱいになった。
その後、どうしたかは記憶にございませんだ。
 きっと鞄を肩にかけて軍歌を歌いながら帰ったことだろう。

 昨夜娘に、私は90歳。マハラジャのお立ち台にも上がったことだし、
いつ死んでも、我が人生に悔いはない。いい人生だったと話した。
 長男と娘はもう家庭を持っていたし、次男は、この時ニューヨーク
にいた。親離れも子離れも終わり、自分だけのことを考えていたら
よかったと、錯覚していたのだ。当時の私のご乱行は子供は誰も知らない。
娘に話してホッとしている。

 それにしても楽しかったなあ。人生に終わりあることなど、
考えの外だった。
 若いっていいなぁ。







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