第34話 天地人

文字数 1,066文字

 何もすることがないからテレビでもつけようかと。
どこを回してもお笑い芸人の顔、顔。顔が悪いというのではない。
笑いが昔と変わった。志村けんを思い出す。
チャンネルを変えると「うーん美味しい」今度は美味しい話。
こうなると好きな番組とニュースを見るよりほかない。
やっぱりNHKか「鎌倉殿の十三人」はだんだんよくなってきて
終わるのが惜しいほど、だった。ただ「こんな所に一軒家」と
重なるので気を二分した。
歴史ものは、時代劇は何でも好きだ。孫が少し関わるようになって
ますます好きになっている。
「天地人」の大河ドラマに出た子役、加藤清史郎演じる(与六)の
演技に震えるほど惚れ込んだ。上杉謙信の前に出たか、出されたか
「わしはこんなところにきとうはなかった」と言い放った態度というより度胸。
よかったねー。
 嫌がる与六をお城へ差し出す日の与六の母の言葉も身に染みた。
庭の紅葉は燃え盛っていた。紅葉を見ながら母は
「木は信玄様だ。あの紅葉は与六ですよ」木の葉は、精一杯木のために尽くし、
その後、信玄様を守るために時が来たら散るのです」
その時、はらはらと紅葉は散った。
「わかったですか。ああして散るのです。今日か与六はもう母の子供では
ありません。家に帰ってはなりません。さあゆくのです」
 風に誘われて散る紅葉というが、木の葉は、時が来たら風が吹かなくても
自分の意思で散ってゆくのだと、何かの本で読んだ。
また文学の世界では「ゆずりは」というらしい。綺麗な言葉ですね。

 逃げ帰って、小屋にいた与六を迎えに来た喜平次(後の景勝)は
与六を背負い雪の道をお城へ登った。命懸けの幼い主従の雪の道行を運命の
赤い糸が結んだのであろう。

 天地人は、孟子の教えで天の時、地の利、人の輪を謙信が応用したと知った。
雪深い地に城を構えた謙信は終生「義」を旨とした。たびたび雌雄を決した武田
信玄との川中島の戦いは後世にも伝えられている。
 また信玄没後も景勝は「義」の魂を受け継いだ。歴史に名だたる家老となった
与六(直江兼続)も仁愛の「愛」を貫き主君に生涯を捧げた。
 米沢のもののふ。戦国の末世に「愛」を貫いた直江兼続の生涯に深い関心を
持っている。兼続の兜は「錆地塗六十二間筋兜」立て物はあの「愛」である。
また直江状も耳目を引く。家康に敵対して120万石から30万石に落とされ、
米沢に移封された。その間の主従の苦悩、凡人にはお察しもできない。 
 幼少の「与六」に魅せられてすっかり兼続のファンになった。
 浅い春の日を浴びて
「わしはこんなところにはきとうなかった」あの場面を思い出ししている。











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