第38話 保育所…2

文字数 701文字

 暑さが厳しくて昼間は外出できない。
家の中にいても、電気代ケチったら熱中症になるから
クーラーはつけておく様に。息子から毎日のように電話がくる。
こゝはマンションの屋上階なので、昼間はもちろんのこと
夜が来てもコンクリートの天井に焼き込んでいる熱はなたなた冷めない。
爽やかな夜が送れない昨今である。

 夕方を待って眼科を受診しての帰り、行きと異なる路線に乗った。
息子がお世話になった保育園の近くを通過したので、
思い出にひかれるように次のバス停で下車した。
 いつ建て替えたのか立派な園舎になっていた。懐かしさのあまり
ぐるりと一周したが金網で覆われていた。
もちろん園児の影も声もなく、ひっそりとしていた。
 こゝに2年息子がお世話になった。私も食品納入者として通い詰めた園。
平穏な毎日だったのだろう。
卒園式でいきなり飛び込んできた謝辞の挨拶以外は、何の記憶もない。
人は、助け合わなくては一人では生きられない。こゝでも小さい八百屋は
売り上げに協力してもらったのだ。
 私は、人の助けをしたことがあるのだろうか。はなはだ❓である。
第一イエスとノーのはっきりしない人は嫌いだし、
言葉が理解できるようになった子供が、長泣きするのはどうも。
その分うちの子供は泣かなかったし、泣かせなさった。特に娘は
泣いて、おうおうと抱いてもらいたこともあっただろう。
今頃反省しても何にもならん。 

 腰掛けが7個8人がグルグルまわっていて、ストップで止まって腰掛けを取る。遊び。
負けん気の息子が腰掛けを取れなかった時、
悔しそうにしていた顔が、浮かんできた。
 生きていると、そんなことはいくらでもあるよと、つぶやいて
 園を見ながら立ち尽くしていた。













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