第47話 時の流れに

文字数 850文字

 どんよりと窓の外は曇っている。
 予報ではこゝ4〜5日雨模様である。急いでレースのカーテンを開けた。
雲は重たく垂れ下がり、今にも降り出しそうな空模様である。
 レースのカーテンをあけたような、とよく聞くが私も、カーテンを通してみる外界は
好きでない。太陽が降り注いでいる時は、木漏れ日状に、なって、まだ許せるが、今日の
ような日は、オープンにしなくては、心も曇りがちになる。
 
 贅沢は言えない。カーテンレールは一本だった。レースのカーテンをつけたいと
望んだ日のことが思い出される。自分が縫った物でなく、専門職が採寸して窓に合わせて
作ってくれたカーテン。あの頃は、ほとんどレースのカーテンをあけなかったように思う。
移動可能な小さい丸テーブルにお茶を乗せて、窓辺でくつろいだ休日のひととき、カーテン
は気にならなかった。今はどうだろう開けっ放している。環境によるのか、加齢によるのか
その両方だろう。マンションという狭い空間に生活していると、広々とした窓の外に憧れを
感じるようだ。

 昨年までお世話になっていたヘルパーのSさんが、オステオスペルマム(きく科)の
花を持ってきてくれた。一鉢に多色の花が咲いていて、見るだけで夢も貰っている。
 正月の寄せ植えが終わった所なので、うまく穴埋めができた。部屋も花ひとつで、
人の気にも微妙な変化が起きるんだと、感じている。
 一坪ほどのベランダは、その役を終えた鉢でひしめいている。捨てきれないのである。
多年草は当然であるが、一季きりの花にも花の命があるもの。果つるまで、ベランダに
おく。名残か、感傷か。
 風が強いのかベランダの菜の花が揺れている。菜の花だけは窓辺には置けない。
代謝がはげしいから。窓辺を染めるのである。

 この異常気象はいつまで続くのだろうか。
 気象だけでない。株価もバブルの高値に迫った。泡食った当時を思い出す。ニーサ、
ニーサと笛や太鼓が聞こえてくる。泡のはかなさを知らぬ時代の今を生きる人々。リスク
を知って、老婆心までに。
 いつか狂乱したあの日を書き残したい。





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