第27話 泥棒(2)

文字数 656文字

 泥さんは逃げ出して数分後、道路脇で取り押さえられた。刃物は持っていなかったと言う。
私と同じ年頃の小柄な爺さんだった。と聞いて、道理で飛びついていった自分が腑に落ちた。
 警察がマークしていた男で、雨が降っていたから今日は動くまいと油断していたと聞いた。
それは理由の一つになるのだろうか?貴金属と現金を狙っていたようだが幸か不幸か、
お目当てのものは何もない。
 警察も来た、来た。今度は新聞記者も来た。入れ替わり、立ち替わり同じことを聞く。その都度
繰り返し一から、同じことを話す。が、そのうちイラッとしてダンマリを決め込んだ。
私は被害者。この時も警察が引き上げた後、アルミ粉末だろう至るところで光っていた。
被害者の心情を察した人はいたのだろうか?その日の夕刊に載った。
 急いでセコムを取り付けたが、後の祭りである。私は癖が悪いのである。ほんの半時間位だから
ままいいわ。と表だけ施錠して出かけていた。「これぐらいと思う心が00のもと」である。
泥さんは、いきなりは入らない。十分下見して、留守の時間も計算していると聞くから、全て自分の怠惰と不注意だった。と大いに反省した。


 後日、耳にした話だが、泥棒と言わずに「火事だ」と言えば人は飛び込んできてくれるそうだ。
これが今を生きる常識らしい。日本の正義はどこへいってしまった。

 娘は電話口で「泥さんが刃物でも持っていたらどうすの、そんな時は腰を抜かすものよ」と宣う。抜けんかったんだから仕方ないだろう。

 なお泥さんを捕まえた三人は近所の方で、警察署長から表彰状をいただいた。


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