第１８話　トンネルの中は暗かった

　気がついた時は、トンネルの中だった。暗闇のトンネル中で、
引き返したい衝動に駆られた。引き返していたら……。
進むより返す方が、その時は楽だったかもしれない。

　出口の見えない長いトンネルの中で、３人の子供はそれぞれに
育った。生きるという試練を知ってか知らずか。素直に成長した。

　遠くに、小さい赤い点が見えた一瞬の、胸の高鳴りを忘れない。
点は、だんだん明るく大きくなった。
そーら、みんなで進むんだ。縦隊が乱れ横隊になった。
　横隊を組んで走り出た。

　出たところは峠のトンネルだった。
　眩しくて、目が開けられない。ただ涙が流れた。

　あれから５５年の月日が過ぎ去った。

　たかが古いトンネルの出口、入り口。されどトンネル。