第40話 雪の日に…【前編】

文字数 2,013文字

……。

結弦葉?外の何を見て――――――――

あっ。
雪が降ってきた。
これは毎年降っていないか?

うん。

確かに雪が降るのは、ここじゃあそんなに珍しいことじゃない。

でもな…、雪って、なぜか見てると癒されるんだ。

だからあたしは好きなんだ、雪が。

そうか。
って、このセリフも毎年言ってる気がするんだけど。
その返事を聞くと覚えてなさそうだな。
ふむ…。
なんか言いたげな様子だなお前。
いや、なんでもない。

まったく、おかしな野郎だ。

でも、今日は雪に免じて見逃してやろう。
この調子じゃあ明日には積もってそうだな。

楽しみだ。

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翌朝


うおー!

一面銀世界だーーー!!

この景色はいつの年齢になってもワクワクするぜ!
結弦葉。
なに?
依頼だ。

家の前の田んぼからだ。

爺さん…このクソ寒い中散歩なんかするなよ…。
どうした、早く行くぞ。
……もうちょっとこの景色を見てからでもいい…?
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……


いつもすまないねぇ、ゆづちゃん。
いえいえ。

身体あったかくして、ゆっくり休んでくださいね。

…ふぅ。


へっくし!

あー、さみぃなチクショー。
雪は好きなのでは?
家の中で見てる分にはな。
ただ…こうやって村を見渡すと…
ちょっと歩いてみたくなる。
……。
しばらく散歩しようぜ。


……


ザックザックザックザック
昔はこの雪を踏む音だけでも楽しいと思えたなー。
今も十分楽しんでいるじゃないか。
うるさいっ!
ん?
あらあら…
どうした?
見てみろ、仏像さんが雪被ってる。
こういうのは…見た人がやらないとな。


よいしょっと。

結弦葉は仏像に被った雪を払った。
これで良し。
というか、この仏像いつからあるんだろうな…。
結弦葉。
なに?また依頼?
いや、違う。

さっき、雪が動いた気がするのだ。

雪が動いた?何かの生き物ってことかな?
ほら、あそこだ。
え?
うおっ、キツネじゃん!しかも真っ白!
森の中に入っていったぞ。
真っ白なキツネなんて見たことない。

追ってみよう!

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森に入ったのはこの辺りだっけか…。
結弦葉、右だ。
…あ!ホントだいた!
あっ、オイ待て!逃げるな!


……

どこ行った…?
いた!あっちに――――――――
うおおっ!!
大丈夫か?
いてて……大丈夫。

ちょっと滑っただけだ。

…あれ?キツネは?
向こうに行ったぞ。


……


はあ…はあ…はあ…
随分奥に来ちまったけど――――
って、あれ?
ここ、どこだ?
ヤバい…迷ったかもしれねえ…。
なあシャウラ、ここがどの辺かって把握できねえか?
やってみる。
―――――――駄目だ、障害物が多すぎる。
まいったな…雪の中じゃあ誰も山に入らんだろうし…。


ちょっと夢中になりすぎたな…。

どうするのだ?
…仕方ない。一旦来た道戻ろう。


……


あっ!!
ここから足跡がなくなってる!!
やべえ…本格的に迷子だ…。

おまけに超寒い…。

結弦葉、あれを見ろ。
ん?

あ、白いキツネだ。

元はと言えばアイツを追っかけてたからなんだよなぁ。

我ながら大人げない…。

洞窟の中に入って行ったぞ。
洞窟?

この森にそんなのがあったのか。

……雪が止むまでいいからそこにお邪魔しよう…。


……


中は…結構広いな…。

奥も深そうだ。

よっこらしょっと。


ちょっとお世話になるぜ。

うえ~、服から靴までぐっちょぐちょだ。
でも大丈夫!なぜならあたしは魔法少女だから!
一人でなにブツブツ言ってるんだ。
うるさいなー、いいから見てろって。
変身!
……寒い!!!
おいシャウラ!

この衣装、防寒とか防暑の能力ないの!?

ない。
ぐえ~!それじゃあただの半袖ミニスカのフリフリじゃねえか!


ぶえっくし!

あー、変身解除。
まあ、元の衣服は乾いてるからいいんだけどさ。
あの狐だが…
他の生物とは異なる点がいくつかあった。
…と、いうと?

またあたしは変なオカルトに巻き込まれてるってわけ?

そのオカルトというのがどのような類なのか知らないが、あの狐からは生命反応を確認できなかった。
そういうのをオカルトっていうんだよ!
あー…、すごい眠気が…。
駄目だ…寝ちゃ駄目だ…ウトウト
寝ちゃ……駄目だ……
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……


ZZZ……
ハッ!!!
危ない…死ぬとこだった…。
あれ?
雪が止んでる!!


……


視界は開けたが、相変わらずここがどこか分かんねえなぁ。
なあシャウラ、もう一回位置把握できないかやってみてくれ。
……おい、聞いてんのか?
シャウラ…?
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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