第45話 やりがい

文字数 2,464文字

な―――
なにーーーーっ!?
なんだ結弦葉。

朝から騒々しい。

いや、これを見てみろよ!

ちょっとケータイでニュース見てたらさ、こんなのがあったんだ!

んん…?
……
どうだ??大変だろ!?
…すまない。

ほとんど読めん。

あー…、そういやそうだった。
じゃあいいよ、あたしが読み上げるから。
インテリア販売業者のホワイツが、昨日地裁より破産手続きを受けた。

同社は、11日、粉飾決算により―――

ってことだ。
???

よく分からんが大変なことになってるみたいだな。


これと結弦葉になんの関係があるのだ?

バッキャロー!

この会社は来月からのあたしの勤め先なんだよ!!

ふむ、そういうことだったか。
破産となると、今年雇用した人はどうなるのやら…。

あたしフリーターになるのかなぁ…。

そうだ、一度、会社に電話してみよう。
……
ダメだ、回線が混み合ってるな…。
ああああぁぁ…どうしようどうしよう…。アタフタ
落ち着け結弦葉。
うるせぇ!!
ぁぁぁああああ、なんだか段々イライラしてきた…!
こうなりゃあ、今から本社に行って直談判を開いてやる!
行くぞシャウラ!

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都会駅周辺
イライライライラ
イライライライラ
結弦葉、落ち着け。
ムカーー!
おっ、あいつは…
(随分情緒不安定だな…。)
おーい!エリー!
…?
あっ、ゆづ先輩…。
何してんだ?こんなとこで。
いえ、少し散歩を…。
そうか…。
って、なんか元気ないな。

何かあったか?

……。

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……


少し言いづらいことなんですけども…
ん?なんだ?
実は…
…みどりさんには秘密ですわよ?
も、もちろんだ!

これはあたし達二人だけの秘密にする!

……。
魔法少女を、辞めようと思っていますの。
なっ…!
ど、どうしたんだ一体!?

またみどりが部屋を散らかしたか!?

リゲルと喧嘩したか!?

シャウラがウザかったか!?

い、いえ、皆様のせいではありませんわ。

むしろ先輩やみどりさんには感謝していますの。

じゃあ、どうして…!
……続ける意味を見い出せなくなりましたの。
続ける意味…?
魔法少女のお仕事は、周辺の困っている人々を助けること、ですわよね?
うん、そうだ。

それ以上のものでもないし、それ以下でもない。

魔法少女として人助けをしても、誰からも認められないし、誰も褒めてくれなくて、なんだかモヤモヤするんですの。
やりがいを感じられなくなりましたの。

それで、続ける必要はないのでは、と思いまして…。

そう…か…。
で、でも、魔法少女を辞めた時の代償はどんなのか知ってるか!?
ええ。
魔法少女に関する事、又それに関わる者の記憶が全て抹消され、無かったこととなる。ですよね?
あ、ああ…そうだ…。
リゲルから聞きましたわ。

彼も辞めてほしくないようでして。

……わたくしが魔法少女に成り立ての頃、ゆづ先輩のような年上の方が何人かいらっしゃいましたの。
みんな優しくて、いつもわたくしを助けてくれましたわ。

尊敬していました、わたくしの憧れでした。

でも、その先輩方もみんな辞めてしまいましたわ…。

今じゃあこの街にいる魔法少女も、わたくしとみどりさんだけ…。

今度はわたくしの番ですわ。

きっと、先輩達も同じような理由で辞めていったのでしょう。

…。
…たしかに、ゆづ先輩やみどりさんを忘れてしまうのは辛いですわ。

もっとお話ししたいし、もっと一緒にいたいですもの。

でも……でも…!
そう…だよな…。

こんなに人助けをして何もないんじゃあな…。

うぅ…ひっく…。
…うん、エリー、お前は十分頑張ったよ。
…ごめんなさい…ごめんなさい…。
大丈夫、お前はまだ中学生なんだから、きっとまたいい人に会えるよ。
魔法少女にしても、この街にはみどりがいるし、跡継ぎ問題は大丈夫だろ。
……跡継ぎ?
ん?これは知らないのか。

魔法少女は、特定の地域には一人以上いないといけないんだ。

だからあたしはずっとやってきたんだけどね。

…そうなんですの?

リゲルは、誰でもいつでも辞められるって言いましたわよ。

え?
それで、ゆづ先輩みたいに続けている物好きがいるのだから、わたくしにも続けて欲しいって言われましたわ。
は?何その言い草。

あたしはあの村に他の魔法少女がいないから、仕方なく続けさせられただけなんだけど。

シャウラとリゲルで微妙に辻褄があってないな…。

怪しい…。

えっ…わたくしに言われましても…。
あぁ、すまん。


とにかく、エリー、お前にはまだ時間がいっぱいある。

どう使おうが誰に消費しようがお前の自由だ。

だから、今は一人でゆっくりじっくり考えて、答えを出してくれ。

あっ…はい、分かりましたわ。
ホントはもっと話を聞いてやりたいんだが、ちょっと大事な用ができた。
…?

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結弦葉の自宅
おい、シャウラ。
なんだ?
とぼけるな。

あたしとエリーの話聞いてただろ。

お前あたしに言ったよな?

この村に新しい魔法少女が現れるまでは辞めることができないって。

ただ実際は、いつでも誰でも辞められるみたいじゃないか。
……。
答えろ。

あたしを十年間も縛り続けていた理由はなんだ?

……。
…そうだな。

そろそろ話す時だと考えていた。

は?
結弦葉、お前は他の魔法少女とは違う、特別な存在なのだ。

それゆえに、上層部がお前を手放すことを良しとしなかったのだ。

いやいや、何言ってるか分かんないんだけど。
詳しいことは順を追って説明する。
まず、我々が何故ここに、つまり何故地球にいるのかというところから離さねばならぬ。
地球人の生活を知るため、じゃないの?
それはあくまで建て前の理由だ。

実際はそれとは違う。

なんだと?

我々が地球にいる理由、

それは……
……
…来週教える。
オイッ!!!
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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