第27話 やっぱり無理

文字数 3,041文字

ゆづせんぱーい!
本を返しに―――あれ?いない…。

どこいっちゃったんだろ…。

結弦葉さんなら、朝から出かけると言って電車に乗っていきましたよ。
そっかー。

すぐ帰ってくるといいなぁ。

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うわぁ…これは…。
すごい人だな。
いわゆる満員電車ってやつだな。

この人数が本当に電車の中に入るのかなー?

そしてあたしも乗らないと…。
何故わざわざ混んでいるとわかっている電車に乗るのだ?
これに乗らないと着かないとこだからだよ!

叶うならあたしだって乗りたくないよ…。

うぅ…めちゃくちゃ窮屈だ…。

これに何十分も耐えないといけないのか…。


……


駄目だ、やっぱり無理!一回外に出よう!
この電車にはもう乗らんのか?
しんどい。次の電車にするー…。
…え?

もう電車来たの?

まだ3分くらいしか経ってないぞ?

これ乗っていいのかな…?

―――ありゃ?

降りる駅通過しちゃったぞ?なんでだ?

降りて戻らないと…。
うわぁ…すごい複雑な駅だなぁ…。

どこいけばいいんだろ…。

あら?あらあら?ここどこだ?
どうなってやがんだチクショーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!
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結弦葉さんから連絡がありましたよ。
ホント!?

はやく繋げて!

先輩!?今どこですか!?
こっちが聞きてえよぉ…。
え?
よくわかんねえ駅のよくわかんねえ所にいるんだ…。

もう疲れた…。ここどこだよ…。

もしかして…迷子ですか?
まあそうだな…。助けてくれ…。
ちょっと待っててくださいね。

エリー先輩呼んできます!


……


―――――ということなんです。
まあ、ゆづ先輩が迷子に…珍しいですわね。
すまないなぁ…迷惑かけて…。
先輩、何か目印になりそうなものはありますか?
目印…そうだな…エスカレーターに沿って、アニメやらなんやらの広告がいっぱいあるな。
エスカレーターにアニメの広告…多分あそこですわね!
先輩、今から行きますので、そこから動かないでくださいまし!
ええっ!場所分かったんですか!?
すまねえなぁ…。
ちょっと行ってきますわね!
はえ~、やっぱり都会に住んでいると分かるんだね…。
エリーさんから連絡ですよ。
え?
先輩、忘れ物ですか?
道に迷いましたわ…。
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……


何とか戻って来れましたわ…。
エリー先輩…。
申し訳ないですわ…。
助けてくれー…。
先輩、別の駅に行ってくれませんか?
なんでだ?
そちらのほうが分かりやすいかも知れないからですの。
うーん、そうなんだけど…これ何線なのかな?

まあいいや乗っちゃえ。

着いた。一駅一駅が短くて油断すると乗り過ごしちまうな。


えーとこの駅は…、周辺にやたらビルが多い。
そんなの当たり前ですわ!
んぐっ。

確かに当たり前だな。
てめえは引っ込んでろ!!
思いっきりシャウラを殴る。
ぐはァッ!!

あとは…でっかい電光掲示板がビルにくっついてて…って、なんかここテレビで見たことあるぞ?

……!

わかりましたわ!

先輩、ちょっと待っててください!
エリー!
なんですの?
ここはみどりちゃんが行った方がいいよ!

エリーだとまた道に迷うだろうし…。

……。
え…あ…じゃあ、わたしが行きますね。
道案内は任せてください。
ポルックス、ありがとう!


……


この駅の周辺でいいの?
エリーさんの情報だと、ここで間違いないですね。
でも…この人混みから、先輩を探さないといけないのか…。
わわわっ、急にたくさんの人が動く出した。
信号がかわったんですね。
うぐぅ…押しつぶされる…。
せんぱーい、どこですかー。
いたっ!足を踏まれた!
もう…前が全然見えない…。人が多すぎるよぉ…。
ゆづ先輩、今どの辺にいますか?
わからん…。
えー…それじゃあ見つからないよぉ…。
先輩…どこぉ…?
(みどりちゃんが泣きそうになってる…!これじゃあこっちが迷子みたい…!)
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無理ですよ…見つからない。
そうでしたか…。
ごめんな…こんな田舎者のために…。
なにかいい方法はないでしょうか…。
ただいま。
!!

お、お父様、おかえりなさいまし!

おう、エリーか。久しぶりだな。

元気にしているか?

もちろん、わたくしは元気ですわ。
あっ、こちらが先日紹介した、立河みどりさんですの。
こんにちは、はじめまして。

立河みどりです。

よろしく、みどりちゃん。

なにか困っていることがあったら、なんでも言ってね。

あ、はい!ありがとうございます!
―――!!
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……


エリーの奴、いい考えを思いついたから、駅のプラットホ―ムにいてくれ、って、一体何をするつもりなんだ…?
先輩、14番線に着きましたか?
ああ、着いたよ。
次に来る電車に乗ってくださいまし!

わかった。

あ、早速きた。
……ん?この電車なんか変だぞ?
なんで乗客が一人も乗ってないんだ!?
怖いなぁ…これ乗っていいのかな…?
でも乗ってくれって言ってたからなぁ…。

いいや、乗っちゃえ!

あーーー、快適。
……お?段々見たことある景色になってきたぞ?
ここは…都会駅だ!!

やった!戻ってきたー!


……


ゆづ先輩、おかえりなさーい!
無事に戻ってこれてよかったですわ。
いやあ、二人とも本当にありがとう。
ところで、一体どうしてあたしの乗った電車は、他に乗客がいなかったんだろう?
あれはゆづ先輩専用の電車だからですわ。
どういうことだ?
お父様に頼んで、電車を買ってもらいましたの。
なにぃ!?
そうして都会駅まで一度で行けるようにしたのですわ。
随分と手の込んだことを…。
うちは財力だけはあるんですの。

お役に立ててよかったですわ。

それなら、なんでエリーは自分の電車を使わないんだ?
どういうことですの?
自分の電車を使えば、いつでも座れるし、横になったりもできるじゃないか。

なのにどうして一般の電車に乗るんだ?

わたくしは少しでも庶民…普通の人と同じ生活がしたいんですの。

彼らの気持ちが分からない人にはなりたくないんですのよ。

そうか。お前は偉いな。
ふふっ。ありがとうございます。

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数日後


やっぱり無理ですわ!
お父様に頼んで全ての電車を一本ずつ買ってもらいましょう!
どうしたエリー、こないだと言ってることが真逆だぞ…。
今朝から電車に乗る必要がありましたの。
それがすごい人で…。

押しつぶされそうになった挙句に、急ブレーキしたせいで大勢の人が寄りかかってきましたの!

そしたら、ほら!

大事なパソコンが割れてしまったのですわ!

うおっ、ホントだ…。
あんな人だかりはもう懲り懲りですわ!

快適な電車の方が良いに決まってますもの!

金は…人を変えてしまうのだなぁ…。
もしもし、お父様?

欲しいものがあるんですの!

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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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