最終話 これから

文字数 2,974文字

そんなことって…。
結弦葉、すまない。
本当にすまんのぅ…。
……。
………ん?

ちょっと待って。

どうした?
あのさ、今まで人間があんたらの官職に就いたことはないんだよね?
うむ。
あたしが爺さんを継いだら、あたしが一番上になるんだよね?
そうだ。
じゃあさ、あたしが何やってもあたしの勝手だよね!
だから魔法少女辞めない!つーか辞めさせねえ。
な…!
そんな勝手な…。
なんだよなんだよ、お前ら人の青春奪っといてまだ何か言うのか?
う…。
じゃそういうことでー。
ちなみにあたしの役職って何になるの?
太陽系第三惑星調査隊管理統括局局長、の二代目だな。
んんん…名前が長くてよく分かんねえな。
まあいいや、近いうちにあたしの就任式を盛大に行うから。

マスコット全員集めといて。

それじゃあ、爺さんまたね~。
……。
…マイペースな性格なのは、ご先祖様から変わっとらんのぅ。
本当に彼女で良いのですか?
わし等は人間を軽視しすぎていた。

じゃから少し向き合うために、彼女に任せてみようと思う。

しかしながら、結弦葉はまだマスコットの社会を知らないどころか、地球でも社会経験がありません。

もう少しどこかで下積みをしてからでも…。

まあそうじゃが…、魔法少女の実態を一番知っておるのは、わし等ではなくゆづちゃんじゃろう。

最初のうちはわしも協力に入る。

後は彼女を信じるしかないじゃろう。

…分かりました。貴方がそこまで仰るのであれば。
まあ、大きく変えようとすることは間違いないじゃろうけどな…。
……。

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一週間後、結弦葉の言う通りに就任式は執り行われた。


……


うおお…マスコットがすげえいっぱいいる…。

どれも同じ顔だけど…。

先にわしが挨拶しよう。

ゆづちゃんはその後出てきてくれ。

あ、ありがとう。
爺さんは祭壇の中央に立ち、何かを話し始めた。


……


爺さんが合図であるかのように、こちらに目配せをした。
!!
スゥーーーー……ハァーーーーー……
…よし!
結弦葉は、爺さんの隣をめがけて、ゆっくりと歩み始めた。
あ、あれって…!
結弦葉さん…!?
…この度、管理統括局二代目局長に就任した、黒嶺結弦葉です。
正真正銘、あたしは人間です。
聴衆がざわめきだす。
静粛に!!
人間の世界では、人間にしか見ることのできないものもある。

あんたらの最終目標もその中の一つだ。

あたしはそのマスコットの目標に協力してやろうってんだ。

今までのやり方では足りなかったものがある。

それは人間の、つまり魔法少女に対する配慮だ。

(結弦葉、がんばれ。)
あたしは今後これを全面的に改善し、魔法少女の継続率を上げる。

それが、最終目標到達への近道であると考える。

具体的には――――――――


……


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その後、結弦葉は考案した改善策を述べ、3日後おこなわれた代表会議で正式に採用された。
特に大きいのはこの三つだろう。
・世界中の魔法少女達が集まれる場所を新たに作る。

 →孤独であることが多い魔法少女が友好関係を深められるようにするため。

・ポイント制を敷き、依頼をこなす度に貯まる。

 →魔法少女であるための”やりがい”を得られるようにするため。

  ・依頼をこなすと3P入る

   誰かと戦い、勝つと4P、負けても1P入る。(対戦は一週間に一度、同じ人とは一ヶ月に一度のみ)(戦闘はお互いが合意すれば何度でも行えるが、二回目以降はポイントは加算されない)

  ・1P=衣装変更、武器変更

   3P=好きなお菓子1つ

   20P=300円以内のもの1つ

   30P=対戦制限リセット

   50P=1000円以内のもの1つ

   100P=3000円以内のもの1つ

   200P=10000円以内のもの1つ

   700P=願いが一つ叶う(限度アリ)

   (200P以上の使用は、結弦葉の許可が必要)

・魔法少女を辞める際、それに関する記憶は抹消されるが、魔法少女同士で築かれた友人といった対人関係は無くなることはなく、記憶が改変されてそのままとなる。
二つ目に関しては、正直私は反対であった。

あまりにも人間側に配慮が行き過ぎていて、マスコットの負担が大きくなってしまうと。

また、もので釣ろうとしている考えが見え透いているからだ。

しかし結弦葉は…
ポイントは個人ごとに自動計算式にするから、負担は大きくしないようにする。
それで、もう一つの問いなんだが…その…なんていうかな…
いかなる結果で終わろうと、子供の努力を認めるのが大人の仕事だからだ。
と言って、上層部をいいくるめてしまった。

結局彼らは人間のことを考えていなかったから、何も言うことができなかったのだろう。

その他に変わったことは…
・変身後の衣装は思った通りの好きなデザインにできる。(変身時の姿は魔法少女以外には見えず、私服に見えている)

・武器は自分で選べるようにした。

・武器を出すこと、戦闘は仮想空間でのみ許可される。

・魔法は爆発魔法ではなく、回復魔法に変更された。(結弦葉の就任以降の魔法少女に適用)

・他者に魔法少女を公言することは最も重い罰則であり、強制除名となる。(友人関係も抹消)
…と、まぁ、彼女自身の不平不満を改めたような形だ。
なお、これに伴って、現在いる魔法少女全員のポイントを算出した。

自動算出システムのテストも兼ねて行われたが、確かにこれなら我々の負担も少ないだろう。

ちなみに世界一ポイントを持っていた魔法少女は…、言うまでもなく結弦葉だった。

その数20473Pであり、2位を圧倒的な差で引き離している。

これを使って、結弦葉は永遠に22歳のままでいる肉体を得た。

人間の細胞の劣化を極限まで遅らせたのだ。


本来なら500Pの願いでも却下されるものだが、特別だった。

こうして、黒嶺結弦葉をトップに、新しい調査が始まったのだ。
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結弦葉が就任して、5年が経った。
結弦葉の職場

やっと会議終わったぁ。

でもこのあと確認報告書とTI-3地域の配置確認と自動算出のメンテナンス……


あーー仕事溜めすぎたーーー!!
ポイントの使用許可がきているぞ。
なにぃ!?

どれどれ……おっ、500P貯めたのか!

それを使って…3億円欲しいだぁ!?

バカヤロー駄目に決まってんだろ!子供の持つ額じゃねぇよ!

…なに?申請者はみどりだって?

尚更ダメだ!せいぜい5万くらい!

代表!さっき、依頼をめぐって近隣の魔法少女と喧嘩になっちゃって……
なんだとぉ!?今すぐ行く!
結弦葉、確認報告は…
後回し!

こっちの方が大事だ!

変身!
そう言うと、適当でラフな部屋着から引き締まったスーツへと服装が変わった。
…よし。
なあシャウラ。
なんだ?
確かにこの忙しさだと、魔法少女じゃいられねぇな!

依頼やってる暇がねえや!

…ふっ、一体いつのことを言っているのだ。
へへへ、…よっしゃ、行くぜ!
結弦葉はシャウラと目を合わせると、魔法少女のもとまで駆けて行った。
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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