第44話 みんなのゆめ

文字数 2,342文字

いや~

すまんのぅ、ゆづちゃん。

また助けてもらって。

あー、いえいえ。
(もはや何も考えとらんな)
また何か困ったら仰ってくださいね。
いつもありがとう、わしも気をつけるよ。
(とか言ってまた明日も落っこちるんだろうな。)
そうそう、ゆづちゃん。
なんですか?
昔のここの村はどうじゃった?
え??
爺さんは足早に去っていった。
お、おい爺さん!

それってどういう――――

結弦葉は盛大に田んぼに落っこちた。

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ん~……
やっと目が覚めたか。
あれ?

あたし、都会から帰って来て、それで爺さんを助けたあと……

何を言っている。

お前はずっと昼寝をしていただけだ。

じゃあ、今のって…夢…?


なぁんだ。

あー、可笑しな夢を見ちまった…気分悪い…。
つーか、夢の中でも爺さん助けてるんだなぁ。
あー、やだやだ。

寝てただけで無駄に疲れちゃうよ。

ふむ、珍しい。
あ?なにが?
いや、珍しく結弦葉が依頼に関する愚痴を吐いているからな。
こんだけやってりゃあ、愚痴の一つも言いたくなるよ。

むしろ今まで言わなかったことを褒めて欲しいわ。

…ふっ、そうだな。お前は頑張ったよ。
…なに、いきなり。
いや、たまには…な。
お前、そういう気持ち悪いところだけ、妙に人間臭いよな。
……。
ほら、なんか変な空気になった。どうするどうする?
……。
へへへ、面白い奴だ。
さーてと、昼寝でもするかなー。
おやすみ

起こすなよ~。

(どこまでもマイペースな人だ…。)
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……


zzz…
先輩、ゆづ先輩
zzz…
だめですわよ、起こしたら。
ん~…
……ん?お前ら、いつの間に。
あ、起きちゃった。
ごめんなさい、起こしてしまいましたわね。
いいよいいよ。

それより、いつからここに?

ついさっきですわ。

そろそろ一人暮らししてしまうって聞いて、その前に遊びに来ましたの。

なるほど。

でもまあ、一人暮らしするのはもうちょい先だけどな。

でも、ここから離れちゃうんですよね?
そりゃここから通うのはちと遠すぎるからな。

都会からは近くなると思うよ。

でも、ここには行かなくなっちゃいますね…。
んん〜〜〜〜、まぁ、そうだな。
寂しくなりますわ…。
まぁ二度と来るわけじゃないから。

休暇の日とかには来るんじゃないかな。

はぁ〜…。

でも、あたしだって就職したくないよ…。

本当に望んだ職じゃないし。

そもそも働きたくない。

食い繋いでいかないと死ぬから仕方なく働くって感じ〜。
そうでしたの…。
ゆづ先輩は、夢とかあるんですか?
あるよ。


幼稚園や保育園の先生になること。

そうだったんですの!?

はじめて聞きましたわ…。

そういや話してなかったな。
一応、必要な資格は一通り持ってる。

大学在学中に取ったんだ。

すごいですね…!

前からやりたかった仕事だから苦はなかったよ。

まぁ、他にやることなかったってのもあるけど。
どうして、そのお仕事をやりたいんですの?
子どもが好きっていうのが一番の理由かな。

接しているだけで癒されるし。

ってか、お前らにはないのか?

そういう夢とか目標は。

え、わたし達ですか?
そうだよ、他に誰がいるんだ。

若くて前途有望は君たちの夢を聞きたいのだ、あたしは。

え、えっと…わたしは……
なになに、勿体ぶらずに言ってみなって。
ちゅ、中学校に行くことです…。
えっ?
え?中学校?
はい…。
エリー、知ってたか?
いえ、まったく…。
みどり、なんでそれが夢なんだ?

中学生って、憧れるんです。

真面目で、かっこよくて、なんでもできて。

それは…単に年上だからだと思うけど…。
それに、小学校になるためにも、いろんな人にお世話になりました。

だから今度は自分のちからで中学校に入りたいんです。

ふむ…。

10歳にしては立派な考えだ。

んで、エリーは?
わ、わたくしですの?
うん。

順番で考えたら次はお前じゃないか。

そ、そうですわよね…。
え、えーっと…。
まだ、決まっておりませんわ…。
やりたいこともないのか?
はい…。
先輩はなんでも出来そうですもんね。
そういう問題じゃないだろ…。
やっぱり、もってないといけないでしょうか?
いや、そんなことはないよ。

最近はそういう人も多いだろうし。

焦らずに、自分のやりたいことをゆっくり決めるといいよ。
…は、はい!

わかりましたわ!

さて、もういい時間だ。

お前らそろそろ帰らないと電車がないぞ?

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それじゃあ先輩、また今度です。
おう、いつでも来なよ。
先輩も、うちに来てくださいね。
あたりめえだ。

都会に行ったら寄るよ。

さよならー!
じゃあな~。
……。
…ふう、夕飯でも作るかな。
あっ――――
結弦葉は目の前の田んぼに落下した。
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……


う~ん……
あ、起きた。
起こしてしまいましたわ。

ごめんなさい、先輩。

あれ?お前ら、まだいたのか?
まだって……さっき来たばかりですわよ?
え?だって、夕方になったからお前ら帰って、それであたし……
先輩、ずっとここで寝てましたよ。
それに、まだ昼ですわ。
???

??????

…先輩?
…一体どれが現実でどれが夢なんだ???
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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