第9話 へんな違和感【後編】

文字数 2,330文字

【このお話は、前回の話の続きとなっております。読んでも読まなくても内容は分かると思いますが、まあ、読んでくださると嬉しいです。】



はやく山を下りないと…!
なぜそんな急ぐのだ?
説明はあとだ!
説明している暇もないのか?
後だっつってんだろ!!
…はっ!うっかりデカい声を出してしまった。

向こうに気づかれていないか…?

…追いかけてくる気配もないな。

大丈夫そう…だな。

でも一応、少し遠回りしていくか。
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……


やっとおりれた…。
思ったより時間かかったな。
かなり遠回りしたからだと思う。
それで、なぜ急いだのだ?
ああ、それはだな…
……!
どうした?
いやな予感がする…。

もしかすると、先におりていたか?

あの山にいた人がか?
そう。

とにかく、今日は家にはいずに外で過ごそう。

はやく家に帰って財布とケータイ持ってこないと。


……


ただい…
この写真の女の子がゆづ先輩ですの?
そうよ。

このあと目の前の田んぼに落ちて…

げっ!

ママ!もう着いていたの!?

あらゆづ!

しばらく見ないうちに大きくなったわね~!

親の言うことじゃないだろそれは!
だいたいその年で白いワンピースとか着ているのはキツイって!

年相応の格好しろよ!

あらあら、それならゆづが代わりに着る?
断る。
ん~、似合うと思うんだけどねぇ。
こっちの奴の方が似合う。
わ、わたくしですの?
そう。

お前だよ、エリー。

あら、この子エリーっていうの?

エリーちゃん、よろしくね~。

あんたはさっきから誰と会話してたんだ!

自己紹介くらいしろよ!

先輩のお知り合いかと思ってましたけど、まさかお母さんだったとは…。
一応、母親なんだ…。
正真正銘のお母さんですよ~。
……まあ、ゆっくりしていけ。
あら?どこ行くの?
自室。
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…はぁ。
どうしたんですの?
ああ、エリーか。
苦手なんだよ…ママは。
お母さんが…ですか?
そう。

確かに正真正銘、あたしの母親だ。

産んでもらったこととかは感謝している。

でもな、あたしをほっぽいておいて、数年に一回しか帰って来ないで母親面されてもな…って。
ゆづ先輩も家族とは複雑なんですわね…。

しょうがない。

魔法少女ってェのは、こういう家族関係が訳アリな奴がなるからな。

もう大丈夫。気にかけてすまなかったな。
それでなんですけど、お母さんはどうしてあの服を着ていらっしゃるのですか?
あー、あれね。

聞いた話なんだが、ママが小さい頃、山に遭難したらしいの。

その時に、白いワンピースに麦わら帽子の女の人を見たんだって。
目が合った時、滅茶苦茶ビビッて逃げだしたら、山から出れたんだとよ。

その時からリスペクト的なアレで同じ格好してるんだとさ。

何十年もですか?
そうなるな。

あたしも部屋着を除いたらあれ以外見たことない。

すごい執念ですわね…。
それで、その女の人は誰でしたの?
わからん。

この村は得体の知れない虫や人が大勢いるからな。

さて、ママに会ってやるかな~。
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ゆづ、帰ってきた時、お父さん見なかった?
え?パパも来てるの?
車止めに行ったんだけど、まだこっち来ないのよ~。

…?

見てないけど?
結弦葉、依頼だ。
依頼?どこから?
田んぼ…からだな。
やれまた爺さんか。
いや、いつもより少し遠いところだ。
遠い田んぼ…?


家のドアを開けた。


うわあああああ!

田んぼに車がああああああ!!

ってうちの車だああああああ!!


……


パパ!?生きてる!?
おお!結弦葉か!

しばらく見ないうちに大きくなったなー!

だから親の言葉じゃねぇだろ!
ちょっとヘマしてな!

田んぼに突っ込んじまったよ!へへへ。

軽いなぁ。
ちょっと右のタイヤ持っててくれ。へへ。
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ゆづ先輩は…お父さん似ですわね。
うるさいっ!
良かったわね~、パパ。
そうだな~。
まったく…。
エリーちゃんは、ゆづといつ知り合ったの?
ふたつきくらい前…ですわね。

都会を歩いてる時に出会いましたの。

そうだったの~。
いやー、結弦葉にも友達ができるとはな。
あたしにも友達くらいいるよ!
わぁ結弦葉が怒ったぞー!

反抗期だ反抗期!

あら~怖いですね~。
っ…!
(先輩がペースを乱されてる…。)
んで、ママ達は今回はいつまでうちにいるの?
もう出ていくつもりよ。
泊りもしないのかよ!
だって、行きたい場所あるんだも~ん。

ね、あなた。

そうだな。
呆れた…。
ゆづもついてく?
いい、あたしはここにいる。
残念だわ~。
ぜってぇ思ってねぇだろ。
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……


それじゃあ、ゆづ、元気でね。
そっちこそ、伝染病とかには注意しなよ。
エリーちゃん、うちの娘をよろしくね。
わ、わたくしはお世話される側ですわよ…。
あ、そうだ、言い忘れてた!ママ!
ん?どうしたの?
今度来る時は、山なんかに遭難するなよ!
あら。私、山には行ってないつもりだけど?
へ?
子どもの頃歩いた道はいつになっても忘れないものよ。

ゆづにもこれからわかるはずよ。

それじゃあね~~~~。
……。
じゃあ、あたしが見たものって…?
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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