第8話 へんな違和感【前編】

文字数 2,145文字

結弦葉、また遠視能力を使っているのか。
爺さんの散歩の様子を見てるんだ。

それにしても…こんなに田んぼギリギリのところを歩かなくても良いだろ…。

危なっかしいなぁ。
依頼が来たぞ。
ってことは――――
あ、落ちた。


……


いつも通り爺さんを助けた。
まったく、世話の焼ける爺さんだぜ。
ごめんくださいまし。
ようエリー。

今回は迷わずに来れたか?

えっと…。
実は昨日に着くはずだったんだ…。
ちょっとリゲル!
お前は隣に誰かがいないと一生迷いそうだな。
わたくしだってやればできますわよ!
じゃあ早く道を覚えてくれないかな…。
余計なお世話ですわ!
とにかく、何か用か?

ちょっとまた、田舎の雰囲気を味わいたかったんですの。

向こうにいますと、なんだか窮屈ですし。

そうかそうか。

まあ特にすることはないし、お菓子は煎餅しかないが、ゆっくりしていけ。

そうしますわ。
エリー、依頼だよ!
え、今ですの?
こっからちょっと行った先からだね!
仕方ありませんわ。

少し行ってきますわね。

おう、迷ったら帰ってこいよー。


……


なんですのこれ?
小さい石の仏像…ですかね?
でも倒れちゃってるね。
これを直すってことでしょうか?

でも一体誰がこんなことを…。

見て!川底にお金がいっぱいあるよ!
お金なんてもう見飽きましたわ!
さて、こんな感じに立てれば良いでしょうか?
よし、じゃあ戻ろう!

エリー、来た道覚えてる?

…………。
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……


川にある仏像が壊れてた?
はい。
あれが壊されるなんて初めてだな…。
でも簡単に直せましたわ。
ん~、それは良かったが、なんかしっくりこないなぁ。
違和感…ですか…。
そう、違和感。
ちなみにあの仏像はな、
結弦葉。
なに?
依頼だ。

森の中からある。

やれやれ、今日はやたらと多いな。
エリー、ちょっくら出かけてくる。

できる範囲でぐーたらしてていいぞ。

できる範囲で…?

まあ、ありがとうございますわ。

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なぜあの像を壊されたことに違和感があるのだ?
理由は深くはないんだ。

だが、村人でそんな恨みを持つ人はいないだろうし、新参者が来た気配もない。

そもそも、あれは村にとって神聖なものだ。

それはあの隔離具合を見たら誰でもわかるだろうに…。

確かに丁重に扱っているな。
一応、ここの神様みたいな存在だからな。
神…か…。
ん?なんか言いたいことでもあるのか?
いや、なんでもない。
おいおい本当はあるんだろ!?

お前神様の話になるといつも口数が減るよな!?

そんなことはない!
あ、おい!

空飛んで逃げるなんて卑怯だぞコンチキショ―!!

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ゆづ先輩のお部屋…
机とベッド、そしてたくさんの本…。

とても綺麗に整頓されていますわ。

単に物が少ないだけな気がするけど…。
わたくしやみどりさんと比べると、確かに少ないですわね。

それでも、どこかの誰かさんと違って机の上も綺麗にしてありますわ。

あら、ゆづ先輩、ケータイ持ってたんですの。
どういうことに使っているんだろう。
わたくしも気になりますけど、人のケータイの中は見るものじゃありませんわ。
あれ?これはもしかして、小中高のアルバム…!
…エリー?
見ても…バレませんわよね。
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……


今回の遭難者は随分と奥深くに行きやがったな。
すでに道無き道を歩いているが、戻ってこれるのか?
この山はガキの頃からよく行ってるから、大雑把だが今どの辺かってのはわかる。
そうか。
…お?

あの人か?

背が高い女性で、麦わら帽子に白いワンピースを着ている…。

うむ、この人に違いないだろう。

……シャウラ、戻るぞ。
助けないのか?
世の中には関わっちゃいけない人ってのがいるんだよ!

今回のがまさにそれだ!

急ぐが音を立てずに。

見つかったらおわりだ。

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小学校の全校生徒が13人…中学が6人って…。

やっぱりすごい田舎なんですわね、ここ。

おかげでとても簡単に見つかりましたわ。


でも高校は300人以上いますから、探すのが難しいですわ。
エリー、結弦葉さんそろそろ帰ってくるんじゃない?
あと少しだけ!

ん~、ゆづ先輩はどこでしょう…?

玄関の戸を叩く音が聞こえた。

ハッ!
だ、誰でしょうか…。

もしかして、ゆづ先輩…?

とりあえず、玄関の方に行ってみましょう。


……


見知らぬ人影だ…。
…開けてみましょう。
ええっ!?

き、危険だよ!

大丈夫。

わたくしだって魔法少女ですわ。

ゆっくりと戸を開ける。
あ…。
目の前には、麦わら帽子に白いワンピースを着た、背の高い女性が立っていた。
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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