どこだろうなぁ、ここ。
いつもの山の中ってのはわかるんだけど…。
シャウラの奴め、この大事な時にどこ行きやがったんだ。
とりあえず山を下ってみるかぁ。
最悪、ケータイの電波が届くところに辿り着ければいいし。
(人に出会えるなんて!これは奇跡だ!!)
(それにしても、あたしにそっくりだな…。)
ふーん。
遭難でこんな場所まで来る人初めてなんだけど。
隣の村にもそんな名前の人は居なかったし…。
それで、どこから来たの?
?
怪しい…。
この山の麓には、私達の村しかないはずよ。
それにおかしな服装してるし、髪の毛ときたら金箔まで貼り付けてるじゃない。
そんなに目立つ人がいたらすぐに分かるはずよ。
(あたしにとっては、着物姿で山に登るあんたの方がおかしいんだよなぁ…。)
悪いけど、あんたの考えてる村とあたし達の村は違うみたいね。
鬱陶しい…そこまで言うなら付いて来なよ。
違うってことを分からせるから。
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ででで、電車??
くるま???
なにわけのわからないこと言ってるの?
(いやこのご時世にケータイ知らない方がおかしいって!)
(ん?いや、まさかとは思うが…、もしかしてこれは……)
理由は分からない。
でも、ワケ合ってこっちの時代に来ちまったんだ。
このケータイは、未来にできたモノなの。
見たことないでしょ?
それから、あなたの姓である白崎は、あたしのお母さんの旧姓。
ちょっと待って…展開が急すぎてついていけないわ…。
えっと…じゃあ…あんたは、あたしのずっと先の孫にあたるの?
でもたしかに…言われてみれば顔が似ているような…。
だから、あたしもここの住民なの。
まあ、300年後だけど。
じゃあ、代々ここの土地を受け継いでいるってことかな。
……わかったよ、一旦、あんたの言うことを信じるよ…。
(まあ、そっくりさんの人違いだよな…村長って言ってたし。)
うるさいなぁ、ほっといてよ。
つーか、話しかけないで。
急に村に入って来たくせに、今までのこと全部否定してきたし。
そこのお坊さんがとても良い人だったの。
友達とよく遊びに行ったわ。
でも10年前…、その神社、火事があって燃えちゃったの。
それから、同じ場所にすぐに建てられたのが、あの爺さんの家。
爺さんは村長を名乗って、元々あった神社のことは無かったことにしたの。
神主さんはどうなったのか知らないわ。
あたし達は神社の存在が忘れ去られることが嫌だった。
だから、焼け跡に残っていた、あるものを守り続けることを決めたのよ。
それから、大人たちにバレないよう、山に色々仕掛けた。
誰かがそこに近づくと、竹馬に乗ったまま真っ白な布を被って帽子を深くかぶるの。
山の中に、背の高い女の人が不気味に立っているんだから、ちょっと怖いでしょう?
あと、平らなところに石を積み上げたものをいくつか作ったわ。
これだけでも怖いけど、人が通ると石の塔が崩れるから合図にもなるの。
あとになって、山の中で秘密の場所を見つけたの。
小さい穴をくぐらないと行けないところなの。
すぐにそこはあたしたちの秘密基地になったわ。
いつもあの場所で遊んでた。
でもそうしたら、あたしたちの行動を疑う大人が出てくる。
突然子供たちが山の中で遊び初めて、遅くまで帰って来なかったから。
中には、日が暮れて山を降りた時を狙って、ずっと付け回してくる奴もいたわ。
周りが暗いし服が黒いしで怖かった。
大人達は次第に飽きてきたの。
あたし達が山に行くことが当然になっちゃったのかな。
そうすると、あたし達もつまらなくなってきた。
秘密基地に行く人も段々と減っていった。
忘れないようにと約束したあたし達が忘れちゃったワケ。
笑っちゃうわ。
未来の世界でも、あたし達が守ってきたものが残っているか、教えてくれない?
あんた未来から来たんでしょ!?
だったらこれも分かると思うの!!
あたし達の努力が生きているのか、それとも無駄になったのか。
……わかったわ。
あんたを秘密基地に案内する。ついてきて。
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この穴をくぐるんだけど、今じゃあもう入れない。
回り込もう。
あの岩、少し下から見ると花の形をしてるの。
だから子供にしか分からない。
ゆきはが持っていたのは、石でできた30㎝ほどの小さい仏像だった。
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方法があればお礼をしに行きたいな、キツネにでも生まれ変わって。
結弦葉は目の前にあった田んぼに思いきり落っこちた。
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お前が意識を失ってから、すぐに雪が止んで晴れたのだ。
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