第25話 秘密の壺

文字数 3,256文字

ふんふんふ~ん♪
お掃除お掃除~。
朝からご機嫌ですね。
最近掃除が楽しくなってきたんだ!
それはそれは。
ふんふんふん~♪
みどりさん、そんなにスピード出してモップ掛けしたら危ないですよ!
大丈夫大丈夫!
って、前!前!!
え?
みどりはスピードを落とすことなく、壁に激突した。
きゃあ!!
後に続くように隣に置いてあった陶器か何かが割れた。
あ…あ…。
みどりさーん!
!!
先輩がこっちに来ちゃう!

何とかしてこれを隠さないと…

さっきものすごい音がしましたけど、何がありましたの?
あっ、いえ、壁にぶつかっただけです…。すいません…。
そうですの?お怪我はありませんでしたか?
はい。それは大丈夫です。
それは何よりですわ。
………あら?
ここにあった壺はどこへいったのでしょう…。
(ギクッ)
さ、さあ…、わたしがいた時には、もうなかったですよ…。
そうですの?


ん~…。

あの…その壺って、そんなに高いものなんですか?
それはもう、この世に二つとない一級品でして、
お金にしましたら…


ディズ〇ーランドを全部買えてしまうくらいですわ。

あわわわわわ…。
みどりさん?顔色が優れませんわよ?
その壺、探してきます!!
あっ!ちょっと!!
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……


うむ…。
さあどうする?
1枚目が13歳、2枚目が14歳、3枚目が11歳、そして4枚目が10歳の時の写真だ!
……
……
……
ブッブー。
正解は全部12歳の時でした~。
それは卑怯であろう!
卑怯なわけあるか!

ちょっと見りゃあ、どれも同じ顔してるなって分かるだろ!

ぬぅ…。
どうする?もう一回やる?
ゆづせんぱーーーい!!!
おー、どうしたみどり。鼻水垂らしてまで泣きじゃくって。
ディ〇ニーランドぶっ壊しちゃったああああああ!!!!
は、はぁ!?


……


かくかくしかじかこれこれうんぬん……
そりゃあまたとんでもないことを…。
うぅ…。
ど、どうしたらいいでしょう…。
素直に謝るしか…
ええっ!

そ、そんなことしたら、流石のエリー先輩とて…

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みどりさん!

うちの壺を割ってしまったって本当ですの!?

はい…。ごめんなさい…。
いいえ!今日という今日は許しませんわ!
弁償できる分のお金が揃うまで、うちは出入り禁止です!!
そ、そんな~~!


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10年後

はぁ…。はぁ…。
誰か…、誰か…、食べ物を…ください…。
このままじゃあ…わたしは…
ガクッ

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――――――――ってことになっちゃいます~~!!!
大袈裟なんだよ!

エリーがそんなことするわけないだろ~!

…本当にそう言い切れますか?
…多分。
ほら~~!
まあ、あそこまではいかなくても、怒られることは確実だと思うぜ?
また怒られちゃうのか…。
ねえポルックス!
はいはい。
この壺どうにか直せないの!?
いや無理ですよぉ~。
ねぇ、わたしたち魔法少女なんでしょ!?

ちょっとくらい魔法みたいなことができてもいいじゃない!

そう言われましても…。
あの~ほら。

時間をさかのぼる、みたいな感じで!

時間逆行は我々も研究の最中だ。

それほど簡単にできる代物ではないということだ。

むーー!

それじゃあこれどうすんのさ!

おいっ、みどり!

あたしの部屋で壺の破片ばらまくなよ!こっちまで疑いかけられちまう!

いいですよ!一緒に怒られましょう!
てめえ…!
……
なんだかわたし、ダメなところしか見られてない気がするの…。
どういうことだ?
わたしね、廊下を掃除してたんです。
そうすると、エリー先輩が褒めてくれるんです。

先輩、綺麗好きだから。

だから、早起きして頑張って掃除してたの。でも…
結局、悪いことになっちゃった。
…。
今日だけじゃない。いっつも悪いとこだけ見られちゃうの。

バケツをひっくり返した時、棚の本を落とした時、ちょっとポルックスと喋ってた時…

だから怒られてばっかり。

もっと褒められたいのに…。

…。
みどりちゃんの話は本当なんですよ。
いつも早起きして、使用人がするはずの掃除を代わってやるんです。

一生懸命、一人で…

わーってるよ。みどりは嘘つくような奴じゃないってことは。
…わたし…もう…
みどり。
やっぱり、壺の件はエリーに話したほうがいいと思う。
あぅ…。
ただ、その自分の気持ちも一緒に言ってみなよ。
一緒に…ですか…?
うん。
大丈夫、大人になりたがってるあいつなら分かってくれるよ。

隠す方が怒られるんじゃないかな?

……。
でも…
あら?

みどりさん?

せせせ、先輩!?どうしてここに!?
こちらに依頼がありましたの。

なにか悩んでることでもありますの?

あの…その…
ごめんなさい!わたしが壺を割っちゃいました!
……
勢い余って壁にぶつかって、その時に割れちゃいました。
廊下を掃除していたんです。先輩、廊下が綺麗だと喜ぶから…。
先輩に褒めてもらいたくて、それで…その…
もういいですわよ。

わたくしがみどりさんを許さない訳ないでしょう?

え?

壺を割ったことを正直に話してくれたのは、とても嬉しかったですわ。

もちろん、わたくしのために家を綺麗にするという理由もね。

でも…割っちゃった壺、すごい高級なんですよね?
ふふふっ。
わたくしも正直に話さないといけませんね。
実はこれ、本物そっくりに作った偽物ですの。
ええ!?
なにぃ!?
本物はもっと厳重に保管されてますわ。
じゃあ、どうしてわざわざ偽物を…?

貴重な物ですので皆さんに見せたいのですけども、今回のようなことがあっては大変ですからね。

それに、普通の人でしたら本物かどうか分かりませんし。
ほあ…。
贋作だと全然気づかなかった…。
わたくしのように、日頃から一級品を覗いていれば、自然と見分けられるようになりますよ。
皆さんにとってはそんな身近にあるような物ではありませんが。

おほほほほ。

ムッ
もしありましたら、わたくしが鑑定してあげますわよ?
うるせえコノヤロー!
ほほほほほ。

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見事エリーにしてやられたなぁ今回は…!
偽物だったのは良かったですけど…
なんかむしゃくしゃするぜ…!
……そうだ!
どうしたんですか?
いい事思いついちゃったー。
ほら、ちょっと耳かせ。
はい?
ヒソヒソヒソ…
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数日後
おーい、エリー。
先輩、どうしましたの?
この前実家に戻ってさー、昔から家にある物を借りてきたんだよね。
骨董品ですの?
そうそう。

みどりが持ってるこの壺なんだけどよ。

これです。
いくらぐらいすると思う?
んー…そうですわね…
作成者名がありませんが、かなり古いものでしょうし、なによりこの独特な形…
総合的に見て、家宝に値する見事な代物だと判断しますわ!
そっかー。見事な代物かー。
家宝かー。
どうかしましたの?

二人ともニヤニヤして。

いやぁ、これね。
あたしが小学生の時、学校の授業で作ったやつなんだよ。
ええっ!?
10年越しで評価されるとは思わなかったぜ~。
べた褒めでしたね。
はわわわわわわわわ…!
さーて、実家に帰って家宝にしよっと!!
ちょ、ちょっと待ってくださーーい!
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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