第38話 修羅場レンタイン

エピソード文字数 2,694文字

……。カリカリカリ
みどりさん。
!!

ひゃ、ひゃい!

何を一生懸命に書いていたんですの?
ひ、秘密です!
そんな~。

隠さなくてもいいじゃないですか~。

で、でも、秘密なものは秘密なんですっ!
あらまぁ、つれないですわね~。


……
ねえエリー?
どうしたんですの?
みどりちゃん、何を書いていたんだろうね。
そんなの決まっていますわ。
明日は2月14日。

この日が何の日かわかって?

うーん…。

ごめん、わからないなぁ…。

まったく…。

バレンタインデーといって、女の子が男の子にチョコレートを渡す日ですの。

ああ!どこかで聞いたことがあるなぁ!
だから、みどりさんは、チョコレートと一緒に手紙も渡すつもりなんだと思いますわ。
なるほど…。
まあ、よくある発想ですわ。

暖かい目で見守っていましょう。

エリーは渡さないのかい?
わたくしはチョコレートだけを渡しますわ。

手紙は他の日でもいいですもの。

へぇー、エリーにも渡す人がいるんだね!
どういう意味ですの!?
だって学校にいる時、君はいつも一人じゃないか!
リゲル!声が大きくて聞かれてしまいますわ!
え?僕の声は魔法少女以外には聞こえないはずだけど…。
あっ…、そういういえばそうでしたわね。
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なぁ、シャウラ。
どうした。
8年前の2月14日のこと…覚えてるか?
……いや、何も。
そうか…。

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8年前の2月14日


結弦葉が14歳であった頃――――

(バレンタインデー。ずっとこの日を待っていた。)
(なんとしてもリョウゴ君にこのチョコレートを渡すんだ…!)
(でも…)
……。カキカキ
(あの子…エナコも狙ってくるに違いない。)
(エナコがリョウゴ君を好きなのは結構知られている。だからリョウゴ君もそれを意識しているはず。)
(このままではあたしに勝ち目がない…どうすれば…。)
…!!

そうだ!

どうした黒嶺、授業中だぞ。
あっ、す、すみません…。


……


放課後
まもなく作戦決行の時間だ!
サッカー部のリョウゴ君はその帰りにここの廊下を通ることが統計でわかっている!

しかも二年のサッカー部員は彼だけだから邪魔がいないッ!

後は待つだけ…!
結弦葉。
シャウラ、どうしたの?
依頼だ。
え、あたし今から大事な用が…。
相手はすぐそこにいる。
え?すぐそこ?
……。キョロキョロ
もしかして…あの子?
そうだ。
……。
エ、エナコちゃん。
っ!!


ビックリした~、ゆづちゃんかぁ。

こんなところで、何してるの?
あ、あの…その…。
わ、私のチョコレートがなくなっちゃったの!!
ええ!?
お願いゆづちゃん!一緒に探して!
う、うん…わかった…。


……


ふぅ…。
右のポケットにあった物を取り出す。
『リョウゴ君へ。 By結弦葉』
……。
左のポケットからも取り出す。
『リョウゴ君へ。  エナコより』
手紙まで添えちゃって…、こんなん落ちるに決まってるじゃない。
昼休み、あの子がいない時を見計らってチョコレートを盗んできてしまった。
まさか依頼で来るとは思わなかったけどね。
下校のチャイムまであと10分。

リョウゴ君が来たらあたしはチョコ渡してすぐ帰ろっと。

……。アタフタ
エナコちゃん…まだあそこウロウロしてる。

そりゃあまあ、探しても絶対見つからんもんね。

………
…うっ…んぐっ……ひっく……
あ、泣いちゃった。
無理もないよ。

こんなチャンスの日を逃しちゃうんだから。

それにしても…エナコの手、絆創膏ばっかりね。

…絆創膏?


……もしかして、このチョコ、手作り…?
あの子、手先すっごい不器用だったはず、料理なんてもってのほか。

それでも一生懸命にこれを作ったのだろう…。

あたしはスーパーで売ってるやつを箱に詰めただけ…。
………なんだろう、このモヤモヤ。


………


エナコちゃん。いつまで泣いてるの。
……?
これ、あなたのでしょ?
ゆ、ゆづちゃん…!

それ、どこで…?

教室のロッカーに置いてあったわ。
ゆづちゃん…!あ、あり――――
ありがとうって言わないで!
…?でも…
頼むから!これ以上何も言わないでくれ…!
あたしは、正直者が馬鹿を見るような最低な真似をしたんだ。

人の努力を踏みにじるようなことをね…。

ゆづちゃん…?
あたしはアンタに感謝される資格はない。

だから何も言わないでくれ。

……。
ほら、なにをボーっとしていやがる。

アンタには行くべきところがあるんだろ?

う、うん…。
だったら―――――――
結弦葉の右ポケットからチョコレートがこぼれ落ちた。
!!
!!

それ、もしかして、ゆづちゃんも…!

廊下の奥にリョウゴの姿が見えた。
…あたしのことは気にするな。
え?だって……
はやくしろ!

あたしは待っても、時間は待ってくれないぞ!

……!タッタッタッ
エナコはチョコレートを握りしめて、リョウゴの方へ駆けて行った。
………。
……いいんだ…これで…。

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微かに思い出した。

あの時に、結弦葉の口調が変わりだしたな。

あー、言われてみればそうかも。

罪悪感から逃げるためにわざと違う口調で話していたら、いつの間にかこっちが本物になっちまったって感じだ。

今年もチョコレートを渡さないのか?
誰にもあげないよ。

貰ったらお返しはするけど。

あれ以来、誰にもあげていないな。
あげるより貰った方がうれしいってことに気づいた。
だから、チョコをくれた人は一生大事にするつもりだ。

今のところいないけど。

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翌日
なーんだ、結局みどりさんはわたくしと同じ人でしたわね。
えへへへへ。

喜んでもらえるといいなー!

初めてのチョコレート作りでしたもんね。
はい!大変だったけど楽しかったです!
ふふふ、それはよかったですわ。
さて、着きましたわよ。
家の戸を開ける。
ごめんくださーーい!
ごめんくださいましー!
あら、二人ともいらっしゃーい。
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登場人物紹介

黒嶺 結弦葉 (くろみね ゆづは)

21歳

田舎生まれ田舎育ち

魔法少女歴10年のベテラン

跡継ぎ問題に悩まされている

シャウラ

マスコットと呼ばれる白くて丸い地球外生命体

結弦葉を魔法少女に引き込む

渋い声

爺さん

結弦葉の隣の家に住む老人
よく田んぼに落っこちる

黄更城 エリー  (きさらぎ エリー)

13歳

魔法少女歴4年

都会出身

超一流企業の社長の一人娘

リゲル

エリーと共にいるマスコット
若々しい男の人の声

立河 みどり  (たちかわ みどり)

8歳

魔法少女歴1ヶ月の新人

孤児

ポルックス

みどりと共にいるマスコット
落ち着いた女の人の声 

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