その②

文字数 1,294文字

「誰だお前は!」

 潤一郎たちの前に突然現れたアルカディア。

「おい願平、予知はどうなっている?」
「そ、それがよ……」

 言いにくいらしい。

「ま、マンモスが……消える!」

 言った瞬間、本当に消えた。何の前触れもなく、そして跡形もなく、だ。

「ん何ぃいい!」

 もう一頭のマンモスがアルカディアに勝負を挑んだ。が、結果は同じ。消えた。

(何だこの神通力は? 任意の対象を消し去る? そんなことが可能なのか…?)

 あり得ない。潤一郎はそう感じ、一歩下がる。だが博と正義は逆に、前に出る。

「威勢がいいね。四対一だっていうのに、余裕を君から感じるよ」
「どうやら俺たちを舐めているようだな…?」

 まず正義が、瓶を取り出し塩をばら撒く。それを博が起こした風に乗せ、アルカディアにぶちまける。最後に正義による、自分勝手な化学反応。この流れは綺麗だった。ただし、最後を除けば、の話である。

「え? ……どうなってる? 塩が消えた?」
「おかしいぞ、それは! ちゃんと俺は風に乗せた! 必ずアイツにぶつかるようコントロールしていた! 正義、もう一度だ!」
「わ、わかったよ!」

 言われた通り正義は瓶を振ろうとした。が、手に握っていたはずの瓶が、ない。

(ボクが落っことしたのか?)

 そういう感覚はなかったのだが、疑問に思って足元を確認する。しかし、ない。

「何やってるんだ、正義! こうなりゃ俺が行く!」

 両方の拳を握り、アルカディアに殴り掛かった。追い風が彼の動きをさらに速めたので、逃がすことはない。

(いや、通じない! それにしても何だ、この予知は…!)

 願平は、その攻撃が届かないことを予知で理解していた。

(未来のビジョンに、博の姿がない! どうしてだ…?)

 予知能力の欠点は、未来を先取りしているだけで何が起きているのか、その本質を見抜けないことである。相手の神通力の内容も把握できない短所もある。

「ぬおおおおおおお!」

 パンチが迫る中、アルカディアは至って冷静だった。
 次の瞬間、博の姿が消えた。

「え? あ? えええ?」

 これには正義も驚かざるを得ない。目で追っていたのに、突如いなくなったのだから。

「おい願平、お前にはどう見えていた? 今の動きだ」
「わからない。予知した内容は、現実に起きたことと同じだ。博が消えたんだ!」
「それは、どこかに姿を隠したということか? 上昇気流に乗った、とかか?」
「いいや、見ての通りだ……。そんなことをする暇はなかった! 本当に突然だ!」

 困惑する三人を見ていてアルカディアは、

「まあ、そうなるよね、仲間が消されたら。常識的な反応だ」
「おいお前! 博をどこに隠した!」
「その表現は正しくない。彼ならね、もうこの世から消えたよ」
「何を言っているんだい、君は…?」

 アルカディアの言葉は信じられるものではなかった。もしその通りなら、博が死んだことを意味しているからだ。

「詳しく話してあげるよ、僕の神通力を、ね!」

 ここで明かされる、衝撃の力。
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