その③

文字数 1,776文字

 遅れてシャイニングアイランドに到着した将元と友里恵。

「入場料は払う?」
「いらないでしょ! そもそも私たちはまだ十五歳よ? 営業しててもタダじゃないの!」

 入ろうとする二人だが、妙なことに気がつく。

「何だこれは?」

 錆びたフェンスに絡みついている植物が、金属のように硬いのだ。よく見るとそれは、ワイヤーのようでもある。

「厳重だな……」

 引き千切るのは諦めて、飛び越えた。

「来たか、客人!」

 二人を待っていたのか、目の前には神通力者が。カプリコーンである。

「あの、事故を起こす人は君の仲間? 悪いけど、道路に放置してしまったぞ?」
「サジタリウスのことか。まあアイツは根暗だし、ここで使われても俺たちが危ない」
「そういうことじゃなくて。あなたたちの狙いは何なの?」

 友里恵がそう聞くとため息をこぼしながらカプリコーンは、

「仲間の奪還だ」
「取り戻すってことか? 誰から?」
「お前らだよ! お前らの高校の調査に向かった仲間が帰ってこないんだ、これは何かあるとしか思えない! 様子を見に行った仲間もだ。答えろ、どこにやった!」
「待てよ! 俺らはそんなこと知らないぞ?」
「ほほうほうほう! タダでは教えない、と? ならば俺がお前らを下して、聞き出してやる!」

 話は通じず、カプリコーンは将元に襲い掛かった。彼はまずポケットから木の枝を取り出した。

「そんなもので何ができるんだ?」

 将元でなくてもそう言うだろう。実際に見ていた友里恵も、同じことを考えた。だが、

「俺の、神通力…!」

 その枝は、金属に変わったのだ。

「錬金術ができる! これでお前らを血祭りにしてやるぜ!」

 振り下ろされた木の枝…というより金属の破片は、容易く将元の腕の皮膚を切り裂いた。

「ぐはあぁああ?」

 幸いにも傷は浅い。

「どうした、かかって来いよ…?」
「そう言うなら!」

 将元は近くに落ちていたレンガを軽々と持ち上げ、投げた。

「甘いな!」

 今度はカプリコーン、その辺に転がっていたカラーコーンを錬金術で金属に変化させ、それでガードする。結果、レンガの方が粉々に。

「硬くない。全然、な! お前らの考えと同じように柔らかいぜ!」
「これはマズい……。友里恵!」
「言われなくても!」

 二対一は卑怯かもしれないが、今はそんなことを言っている場合ではないので友里恵も加勢する。

「神通力は、使ったか?」
「既に!」

 だからなのか、カプリコーンの姿勢がぐらつく。

「なん…だ…? 筋肉痛がする…?」

 足取りもふらついており、ついに転んだ。

「よし、いいぞ!」
「こ、このヤロウ……! タダじゃおかねえ!」
「そうかな?」

 その彼の体を、ヒョイと片手で持ち上げる将元。

「な? お、降ろせ!」

 カプリコーンは抵抗した。それはもがくのではなく、自らの腕や足を金属に変えることで、重くして。だがそういうことは、将元の神通力の前では無意味。
 流石の将元も、相手をぶん投げることはしたくない。だからカプリコーンの方が話し合う態度になるまで待った。

「おい、どうだ? 少しは話を聞いてくれるか? きっと俺たちと君らの間に誤解があったんだよ」
「知るか! 降ろせこのヤロウ!」

 だが、その時である。

「うっ!」

 将元は背中を攻撃され、倒れた。すぐに起き上がったが、信じられないものを目にした。それは、ノラネコである。だがこのネコ、馬鹿デカいのだ。どれくらいかというと、乗用車一台分はある。

「何だこのネコ? ライオンより大きいじゃないか!」

 ネコの爪が将元に迫る。

「くっ…!」

 ここは素早く後ろに下がり、逃げる。

「危ない!」

 叫ぶと同時に友里恵が、将元の体を押し出した。
 大きなカラスが、くちばしで突っつこうとしたのである。

「この大きな生物たちは一体……?」

 カプリコーンの神通力ではないことは確かである。

(だとすると、もう一人いる……?)

 その勘は良い。だがその一人がどんな人物であるかまでは流石に察せられない。

「ようこそ、シャイニングアイランドへ。とは言っても既に閉園しているのですが…」

 よく通る女の声だった。
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