その②
文字数 2,668文字
水も土も腐る。数十メートル先すらまともに見ることができないほど、空気が汚い。しかしそんな状況でも集まったクラスメイトはいた。
「この程度で欠席なんて、馬鹿馬鹿しいね」
一人は、正義だ。彼の神通力があれば、大気汚染なんて意味がない。
「お前はいいよな、それがあるからよ。俺は結構リスキーだぞ?」
もう一人は願平だ。マスクを二重三重にし、水泳用ゴーグルまで付けてようやく玄関から出ることができた。
「ボクの側にいれば、そんなのしてなくても大丈夫だよ?」
「いやいやいやいや! そうだろうけど遠慮しておく! 突然お前がやられたら、俺も死に直結するだろ!」
「………ボクと運命を共にできないのかい?」
「だから断っているだろうが!」
冗談は置いておき、願平に神通力を使うよう正義は命じた。
「一歩一歩、君の神通力で未来を確かめながら進もう。あと、博から頼まれていることもあるからね」
「俺は、信じてんのによぉ…」
何はともあれ、二人は無事に『夜空の黄道』と合流できた。そうしたらすぐに校舎に避難する。
「あっあ~。苦しかったぜ! これでやっとまともに空気が吸える!」
深呼吸をするカプリコーン。
「今日は二人だけ? やる気あ~んの?」
「仕方ないだろう? 本当は学校が休みになっているんだから、登校する義務すらないんだよ? でも僕と願平は来てる。感謝して欲しいレベルだ」
スコーピオの発言は感情を逆なでする感じだったために、元から『夜空の黄道』にあまりいいイメージを抱いていない正義は悪態を吐いた。
「その辺にして欲しいわ……」
「はいは~い」
みんなが静かになったので、オフィユカスが話を始める。
「この環境汚染の原因はやはり、神通力であると思われます」
「でもどうしてこんなことを?」
願平が聞いた。するとアリエスがオフィユカスの代わりに、
「手段を選ぶ必要がないと判断したんだと思うよ? 『黒の理想郷』からすれば、私たちが手を組んだことはかなり致命的なはず。それに対処するために、自分たちがどこにいるのかバレていない状況で、手を下す…」
「でも、県全域はやり過ぎだろう! 無関係な人たちも大勢死ぬぞ?」
「だとしたら、『黒の理想郷』にとって一般人はゴミ以下の存在意義ってことになるね。相手は人を生き物だと思っていないんだ」
その答えに改めて一同は恐怖する。
「とにかく、探し出すことです」
「その方法は? 何か考えてるからこそ言ってるんだよね?」
正義の質問にオフィユカスは、
「流石に、敵も自分たちの本拠地まで汚染させているとは考えにくいのです。相手を殺すために神通力を使うとしても、その経過で自分たちまで危険にさらされては意味がありません」
今度はヴィルゴが、
「私のように、癒せる神通力者がいたら話は別だと思うわ?」
「それもあり得るでしょう」
「ねえ、ちょっと待ってよ?」
また正義からの発問だ。
「君の考えが正しいとしてさ、どうやってその、汚染されていない地域を割り出すの? 君、気象衛星にハッキングでもできるわけ? 苺でも流石にそこまでは無理だよ?」
これにオフィユカスは黙る。
「何にも決まってないってわけだね、ガッカリだ……」
落胆のため息を吐く正義。事実なのでオフィユカスも反撃しない。
「そこまで言うことないだろ、正義!」
「願平、ここから先はガチで命の取り合いかもしれないんだよ? 憶測だけで話を進めるのは危険極まりない! 自殺行為か、殺してくれって言っているようなものだ! だから僕は未来がわかる君を呼び出したんだよ? それに……」
「待て、何かが来る……」
正義の言葉を願平は遮った。
「何かって、何? 曖昧過ぎてチョー理解できな~い」
「黙って聞こう」
スコーピオの口をジェミニが手で塞いだ。
「……? これは、何だ? 知らない生き物が、来る…!」
教室のドアがわずかに動いた。その小さな生き物はやっと、そこにたどり着いたようだ。
「あ、これは!」
「知っているのですか?」
「いや、知らない」
当たり前だろう。これはユニコーン。サイズは手のひらレベルだが立派な角を生やしている。
「でもこれは、いやこういうことは前に見たことがある。蓬莱の神通力だよ」
「それって、お前がどうしても教えてくれなかった、あの?」
「彼に口止めされていたからね……。でもこうしてみんなに見られてもいいっていうことは、話してもいいんだよ」
「何その憶測……」
とにかく正義はここにいるみんなに蓬莱の神通力の内容を話した。
「下がれ!」
するとカプリコーンは手でアリエスを制しながら教室の隅っこに避難する。
「てことはだぞ? 俺たちを殺めに来たってわけだ!」
「違うと思うよ?」
その意見に真っ向から反対する正義。
「彼は僕らの仲間なんだ。だからこれはきっと、彼からのサイン」
「何が言いたいのです?」
「外の環境は汚染され過ぎていて最悪。こんな状況で僕らの仲間の蓬莱がしようとしていることって、二つあると思うんだ」
その一つは、高校のみんなのためにその神通力者を倒すこと。だがそれは蓬莱も一応は『黒の理想郷』の一味なのでできそうにない。
「……とすれば、残ったもう一つの方。自分たちの場所を教えたいんじゃないのかな?」
「なるほど、道しるべに派遣したということですね」
その会話を聞いていたユニコーンは、頷く、まるでその通りと言わんばかりに。
「だとしたら、この天気の中でお出かけする必要がありそうだわ……」
窓の外を見て、大変そうだと嘆くヴィルゴ。
「行くしかありませんね。ここで黙っていてもこの汚染は鎮まりそうにはないですから」
オフィユカスがそう言うと、みんな覚悟を決めた。
流石に汚染された大気の下では、遠くを見ることなどできない。
「……見失ったぞ? ニライカナイの奴め、加減を学べ……」
エルドラードは、正義たちが校舎を出るところまでは見ていた。が、その先を追跡することはできそうにない。
「まあ、こんな空気じゃ長時間室外にいるとは考えにくいな。どうせ校舎内の空気も悪いんだろう。多分行き先は、家電量販店。空気清浄機さえあれば、多少空気が外部と繋がっている部屋でも呼吸には困らない」
そう考え、先回りをする。
だが正義たちが向かった先は全然違う方向だ。
「この程度で欠席なんて、馬鹿馬鹿しいね」
一人は、正義だ。彼の神通力があれば、大気汚染なんて意味がない。
「お前はいいよな、それがあるからよ。俺は結構リスキーだぞ?」
もう一人は願平だ。マスクを二重三重にし、水泳用ゴーグルまで付けてようやく玄関から出ることができた。
「ボクの側にいれば、そんなのしてなくても大丈夫だよ?」
「いやいやいやいや! そうだろうけど遠慮しておく! 突然お前がやられたら、俺も死に直結するだろ!」
「………ボクと運命を共にできないのかい?」
「だから断っているだろうが!」
冗談は置いておき、願平に神通力を使うよう正義は命じた。
「一歩一歩、君の神通力で未来を確かめながら進もう。あと、博から頼まれていることもあるからね」
「俺は、信じてんのによぉ…」
何はともあれ、二人は無事に『夜空の黄道』と合流できた。そうしたらすぐに校舎に避難する。
「あっあ~。苦しかったぜ! これでやっとまともに空気が吸える!」
深呼吸をするカプリコーン。
「今日は二人だけ? やる気あ~んの?」
「仕方ないだろう? 本当は学校が休みになっているんだから、登校する義務すらないんだよ? でも僕と願平は来てる。感謝して欲しいレベルだ」
スコーピオの発言は感情を逆なでする感じだったために、元から『夜空の黄道』にあまりいいイメージを抱いていない正義は悪態を吐いた。
「その辺にして欲しいわ……」
「はいは~い」
みんなが静かになったので、オフィユカスが話を始める。
「この環境汚染の原因はやはり、神通力であると思われます」
「でもどうしてこんなことを?」
願平が聞いた。するとアリエスがオフィユカスの代わりに、
「手段を選ぶ必要がないと判断したんだと思うよ? 『黒の理想郷』からすれば、私たちが手を組んだことはかなり致命的なはず。それに対処するために、自分たちがどこにいるのかバレていない状況で、手を下す…」
「でも、県全域はやり過ぎだろう! 無関係な人たちも大勢死ぬぞ?」
「だとしたら、『黒の理想郷』にとって一般人はゴミ以下の存在意義ってことになるね。相手は人を生き物だと思っていないんだ」
その答えに改めて一同は恐怖する。
「とにかく、探し出すことです」
「その方法は? 何か考えてるからこそ言ってるんだよね?」
正義の質問にオフィユカスは、
「流石に、敵も自分たちの本拠地まで汚染させているとは考えにくいのです。相手を殺すために神通力を使うとしても、その経過で自分たちまで危険にさらされては意味がありません」
今度はヴィルゴが、
「私のように、癒せる神通力者がいたら話は別だと思うわ?」
「それもあり得るでしょう」
「ねえ、ちょっと待ってよ?」
また正義からの発問だ。
「君の考えが正しいとしてさ、どうやってその、汚染されていない地域を割り出すの? 君、気象衛星にハッキングでもできるわけ? 苺でも流石にそこまでは無理だよ?」
これにオフィユカスは黙る。
「何にも決まってないってわけだね、ガッカリだ……」
落胆のため息を吐く正義。事実なのでオフィユカスも反撃しない。
「そこまで言うことないだろ、正義!」
「願平、ここから先はガチで命の取り合いかもしれないんだよ? 憶測だけで話を進めるのは危険極まりない! 自殺行為か、殺してくれって言っているようなものだ! だから僕は未来がわかる君を呼び出したんだよ? それに……」
「待て、何かが来る……」
正義の言葉を願平は遮った。
「何かって、何? 曖昧過ぎてチョー理解できな~い」
「黙って聞こう」
スコーピオの口をジェミニが手で塞いだ。
「……? これは、何だ? 知らない生き物が、来る…!」
教室のドアがわずかに動いた。その小さな生き物はやっと、そこにたどり着いたようだ。
「あ、これは!」
「知っているのですか?」
「いや、知らない」
当たり前だろう。これはユニコーン。サイズは手のひらレベルだが立派な角を生やしている。
「でもこれは、いやこういうことは前に見たことがある。蓬莱の神通力だよ」
「それって、お前がどうしても教えてくれなかった、あの?」
「彼に口止めされていたからね……。でもこうしてみんなに見られてもいいっていうことは、話してもいいんだよ」
「何その憶測……」
とにかく正義はここにいるみんなに蓬莱の神通力の内容を話した。
「下がれ!」
するとカプリコーンは手でアリエスを制しながら教室の隅っこに避難する。
「てことはだぞ? 俺たちを殺めに来たってわけだ!」
「違うと思うよ?」
その意見に真っ向から反対する正義。
「彼は僕らの仲間なんだ。だからこれはきっと、彼からのサイン」
「何が言いたいのです?」
「外の環境は汚染され過ぎていて最悪。こんな状況で僕らの仲間の蓬莱がしようとしていることって、二つあると思うんだ」
その一つは、高校のみんなのためにその神通力者を倒すこと。だがそれは蓬莱も一応は『黒の理想郷』の一味なのでできそうにない。
「……とすれば、残ったもう一つの方。自分たちの場所を教えたいんじゃないのかな?」
「なるほど、道しるべに派遣したということですね」
その会話を聞いていたユニコーンは、頷く、まるでその通りと言わんばかりに。
「だとしたら、この天気の中でお出かけする必要がありそうだわ……」
窓の外を見て、大変そうだと嘆くヴィルゴ。
「行くしかありませんね。ここで黙っていてもこの汚染は鎮まりそうにはないですから」
オフィユカスがそう言うと、みんな覚悟を決めた。
流石に汚染された大気の下では、遠くを見ることなどできない。
「……見失ったぞ? ニライカナイの奴め、加減を学べ……」
エルドラードは、正義たちが校舎を出るところまでは見ていた。が、その先を追跡することはできそうにない。
「まあ、こんな空気じゃ長時間室外にいるとは考えにくいな。どうせ校舎内の空気も悪いんだろう。多分行き先は、家電量販店。空気清浄機さえあれば、多少空気が外部と繋がっている部屋でも呼吸には困らない」
そう考え、先回りをする。
だが正義たちが向かった先は全然違う方向だ。