その②
文字数 2,551文字
ところで、シャンバラも神通力者である。ということは、彼女もシャイニングアイランドに関係している……と考えられるが、実は違う。
かつて、シャイニングアイランドを創った人物は二人いた。一人は今田豪。後にシャイニングアイランドを統べることになった人物。
その片割れ、名を常田 烈 という。常田は当時は、今田の考えに賛同した。堕落に満ちた世界を変えたいという思いは、共通していたのだ。けれども、
「神通力者を中心に、人類を更なる高みに押し上げる」
「違う! 世界を支配するのが先だ! 神通力者の手で!」
意見がすれ違い始めたのだ。
言っていることは二人とも、同じように聞こえる。しかし、今田は、人類全てに神通力を持たせることを目的としていた。だから必死に神通力者を増やしていたのである。対する常田の発想は、
「神通力を持てない人は、いらない」
逆であり乱暴でもある。神通力を持っている自分たちは特別な存在で、普通の人類よりも優れていると思い込んでいた。だからこそ、世界を支配することができると自惚れていたのだ。
結局、常田が先にシャイニングアイランドに見切りをつけた。
「いいさ。俺たちの手で、世界をこの手にしてみせる」
その時に彼が率いていたのが、『黒の理想郷』なのである。
要するに常田も『黒の理想郷』も、シャイニングアイランドからしてみれば裏切り者。だから誰にもバレないようにシャンバラは慎重に行動していたのだ。もしカプリコーンかアリエスに見つかってしまったら、シャイニングアイランドの残存戦力全てと全面的に戦うことになりかねない。人数で劣る『黒の理想郷』としては、それは何としても避けたい事案。
また、シャイニングアイランドの親玉である今田が行方不明とわかれば、表立って活動できるチャンスが増える。だからこうしてシャイニングアイランドの情報を断ちに来た。『黒の理想郷』としては、今田の存在が目障りだった。しかし今や、いない。これは逃せないチャンスだ。
「いいか、『黒の理想郷』よ……。いよいよ時が来た! 今、シャイニングアイランドは統制がとれていない。ここで動け! 我々が好き勝手しても、大丈夫だ。まずは今田が残したものを無くせ! 繋がりを断て!」
そして、今田の代わりに常田が、今田としてシャイニングアイランドに戻ったら? シャイニングアイランドのその全てを彼らは得られるわけである。
幸いにも、今田の存在は一部の神通力者集団にしか伝わっていない。実際にシャンバラも、顔を見たことはないのだ。だから今、常田が今田にとって代われば、シャイニングアイランドの神通力者全てを手に入れることが可能。そして一度騙せば、後は行方不明の今田に罪をなすりつければいい。
「実は、裏切っていたのは今田の方で、常田は裏切られてシャイニングアイランドから逃げていた。今やっと常田が戻って来れて、シャイニングアイランドを立て直そうとしている」
という感じに嘯いてしまえばいいのだ。
そこで、『黒の理想郷』にとって大きな邪魔者がいる。それは今田を探している『夜空の黄道』である。彼らが今田を探しているという情報を掴んだ時、『黒の理想郷』は戦うことを迷わず選んだ。
「邪魔する者は、潰してしまえ! 『夜空の黄道』は今田のことを知っている。そういうヤツらが一人でも残っていれば、この計画は破綻だ! だからこのタイミングで排除する!」
幸いにも、今はまだ『黒の理想郷』が『夜空の黄道』を狙っていることは発覚していない。そのアドバンテージを活かすためにも、慎重な行動が求められている。
「どうだ、シャンバラ?」
「『夜空の黄道』の奴らが園内をうろついていたぜ。焦ったが、俺の存在はバレてない。そして帰っていったから、俺は俺の目的を果たしたぜ」
「よし、いい。今夜はそれぐらいにしておけ」
「わかった。すぐに戻るぜ、ディストピア…!」
シャンバラは携帯でサブリーダーのディストピアと連絡を取り、そして園内から姿を消した。
「今日は報告がある」
『黒の理想郷』のメンバーはいつもの場所に集まっていた。
「一つ目は、シャンバラが遭遇した神通力者。やはり今田の捜索に動いているのは、『夜空の黄道』で間違いない。二つ目は、シャイニングアイランドすら把握していなかった神通力者の集められた学校の存在。そこにはホウライが潜入している」
ディストピアは、そのコードネームに違わずメンバーの管理を担当している。
「でも、『夜空の黄道』だけなら大した相手じゃないだろう? 躊躇う必要があるか?」
シャンバラが異議を唱えたが、
「問題はな、『夜空の黄道』が他の神通力者集団……例えば『歌の守護者(セイヴァー・オブ・ソング)』とか、『惑星機巧軍(プラネット・テック・フォース)』とかと連携しているかどうかだ。もしそうである場合、こちらの勝ち目は薄い」
「逆に言えば、他の連中と連携していないなら一気に解決できることである、ということですね?」
ホウライがそう言ったので、ディストピアは頷いた。今田を探しているのは『夜空の黄道』だけだということになるので、その場合、
「確証が持てれば、明日にでも滅ぼしてしまおう」
危険な橋渡りに聞こえなくもないが、実は彼らの読みは当たっている。
『歌の守護者』は、シャイニングアイランド崩壊前に行方を眩ませた。『惑星機巧軍』も、一度は日本に戻って来たらしいが、その後の足取りは不明瞭。だから『夜空の黄道』さえ倒せばいいのだ。
「確証を掴むために、もう少し探りを入れる。ホウライはいつも通りに動け。シャンバラはシャイニングアイランドにもう一度向かえ。そして次は……」
ある程度指示を出す。
「エルドラードは、件の学校を見て来い」
「しかし、それは私の任務では?」
それにホウライが反応した。
「そうだ。だが、『夜空の黄道』がコンタクトを取る可能性も否定できない。それをエルドラードが妨害する。ホウライ、お前は何が起きても無関係を装って学校の神通力者を調べておけ」
そして動き出す、神通力者たち。
かつて、シャイニングアイランドを創った人物は二人いた。一人は今田豪。後にシャイニングアイランドを統べることになった人物。
その片割れ、名を
「神通力者を中心に、人類を更なる高みに押し上げる」
「違う! 世界を支配するのが先だ! 神通力者の手で!」
意見がすれ違い始めたのだ。
言っていることは二人とも、同じように聞こえる。しかし、今田は、人類全てに神通力を持たせることを目的としていた。だから必死に神通力者を増やしていたのである。対する常田の発想は、
「神通力を持てない人は、いらない」
逆であり乱暴でもある。神通力を持っている自分たちは特別な存在で、普通の人類よりも優れていると思い込んでいた。だからこそ、世界を支配することができると自惚れていたのだ。
結局、常田が先にシャイニングアイランドに見切りをつけた。
「いいさ。俺たちの手で、世界をこの手にしてみせる」
その時に彼が率いていたのが、『黒の理想郷』なのである。
要するに常田も『黒の理想郷』も、シャイニングアイランドからしてみれば裏切り者。だから誰にもバレないようにシャンバラは慎重に行動していたのだ。もしカプリコーンかアリエスに見つかってしまったら、シャイニングアイランドの残存戦力全てと全面的に戦うことになりかねない。人数で劣る『黒の理想郷』としては、それは何としても避けたい事案。
また、シャイニングアイランドの親玉である今田が行方不明とわかれば、表立って活動できるチャンスが増える。だからこうしてシャイニングアイランドの情報を断ちに来た。『黒の理想郷』としては、今田の存在が目障りだった。しかし今や、いない。これは逃せないチャンスだ。
「いいか、『黒の理想郷』よ……。いよいよ時が来た! 今、シャイニングアイランドは統制がとれていない。ここで動け! 我々が好き勝手しても、大丈夫だ。まずは今田が残したものを無くせ! 繋がりを断て!」
そして、今田の代わりに常田が、今田としてシャイニングアイランドに戻ったら? シャイニングアイランドのその全てを彼らは得られるわけである。
幸いにも、今田の存在は一部の神通力者集団にしか伝わっていない。実際にシャンバラも、顔を見たことはないのだ。だから今、常田が今田にとって代われば、シャイニングアイランドの神通力者全てを手に入れることが可能。そして一度騙せば、後は行方不明の今田に罪をなすりつければいい。
「実は、裏切っていたのは今田の方で、常田は裏切られてシャイニングアイランドから逃げていた。今やっと常田が戻って来れて、シャイニングアイランドを立て直そうとしている」
という感じに嘯いてしまえばいいのだ。
そこで、『黒の理想郷』にとって大きな邪魔者がいる。それは今田を探している『夜空の黄道』である。彼らが今田を探しているという情報を掴んだ時、『黒の理想郷』は戦うことを迷わず選んだ。
「邪魔する者は、潰してしまえ! 『夜空の黄道』は今田のことを知っている。そういうヤツらが一人でも残っていれば、この計画は破綻だ! だからこのタイミングで排除する!」
幸いにも、今はまだ『黒の理想郷』が『夜空の黄道』を狙っていることは発覚していない。そのアドバンテージを活かすためにも、慎重な行動が求められている。
「どうだ、シャンバラ?」
「『夜空の黄道』の奴らが園内をうろついていたぜ。焦ったが、俺の存在はバレてない。そして帰っていったから、俺は俺の目的を果たしたぜ」
「よし、いい。今夜はそれぐらいにしておけ」
「わかった。すぐに戻るぜ、ディストピア…!」
シャンバラは携帯でサブリーダーのディストピアと連絡を取り、そして園内から姿を消した。
「今日は報告がある」
『黒の理想郷』のメンバーはいつもの場所に集まっていた。
「一つ目は、シャンバラが遭遇した神通力者。やはり今田の捜索に動いているのは、『夜空の黄道』で間違いない。二つ目は、シャイニングアイランドすら把握していなかった神通力者の集められた学校の存在。そこにはホウライが潜入している」
ディストピアは、そのコードネームに違わずメンバーの管理を担当している。
「でも、『夜空の黄道』だけなら大した相手じゃないだろう? 躊躇う必要があるか?」
シャンバラが異議を唱えたが、
「問題はな、『夜空の黄道』が他の神通力者集団……例えば『歌の守護者(セイヴァー・オブ・ソング)』とか、『惑星機巧軍(プラネット・テック・フォース)』とかと連携しているかどうかだ。もしそうである場合、こちらの勝ち目は薄い」
「逆に言えば、他の連中と連携していないなら一気に解決できることである、ということですね?」
ホウライがそう言ったので、ディストピアは頷いた。今田を探しているのは『夜空の黄道』だけだということになるので、その場合、
「確証が持てれば、明日にでも滅ぼしてしまおう」
危険な橋渡りに聞こえなくもないが、実は彼らの読みは当たっている。
『歌の守護者』は、シャイニングアイランド崩壊前に行方を眩ませた。『惑星機巧軍』も、一度は日本に戻って来たらしいが、その後の足取りは不明瞭。だから『夜空の黄道』さえ倒せばいいのだ。
「確証を掴むために、もう少し探りを入れる。ホウライはいつも通りに動け。シャンバラはシャイニングアイランドにもう一度向かえ。そして次は……」
ある程度指示を出す。
「エルドラードは、件の学校を見て来い」
「しかし、それは私の任務では?」
それにホウライが反応した。
「そうだ。だが、『夜空の黄道』がコンタクトを取る可能性も否定できない。それをエルドラードが妨害する。ホウライ、お前は何が起きても無関係を装って学校の神通力者を調べておけ」
そして動き出す、神通力者たち。