その④
文字数 1,718文字
斿倭たちとは違うルートでシャイニングアイランドを目指す将元と友里恵。
「確か、あそこへはバスが通っているんだ。シャイニングアイランドが廃園になったから自動的に廃線……って表現合ってる? でも、近くまで行くバスもあるし、そこからなら十分歩いて行けるんだ。俺たちはそれで行こう。実は電車よりも安上がり」
「わかったわ」
二人はちょうど来たバスに乗り込む。客はそれほど多くないので、席に座る。
「後は着くまで待つだけだ。一応、連絡を入れておこうぜ。友里恵、やっておいてくれるか?」
「もう送信済みよ。蒐にメールで知らせてあるわ。私たちはシャイニングアイランドに、バスで行くってね」
それから数分、バスは何事もなく走った。
ことが起きたのは、赤信号でバスが止まった時のこと。大きな衝突音がしたのである。
「め、目の前だ!」
前を向いていた将元は驚いた。目先の交差点で、事故が起きたのだ。結構派手な衝突だったらしく、トラックと正面衝突した軽自動車はひっくり返っている。
「どうする? 助けるの?」
友里恵が尋ねた。
「……残念だけど、俺たちの神通力では人のためにはなれないよ。気の毒には思うけど、ここは先を急ごう」
冷たい対応しかできない自分たちに無力感を抱く。乗客たちも同じで、ただ驚いている。
信号が変わっても、バスは動かない。事故現場に遭遇したからだ。これは収まるまで待つしかない。と思ったその矢先、
「うわ!」
隣の車線で、ゴミ収集車にワゴンが突っ込んだ。
「ま、また事故…? 今日は多いわね」
さらに電信柱もいきなり折れてバスの後ろの道路に倒れる。
「多い、というか、動けないじゃないか……!」
「あっ!」
前と横は事故現場なので、通れない。バックしようにも、電信柱が邪魔。この、動きを止めるために事故が起きていると思えるほどに不自然な光景。
「俺が降りて、後ろを塞ぐ電柱を除けようか? どんなに重くても持ち上げられるわけだし…」
「でもそれは一般的には不自然よ? そもそもこんなに立て続けに、事故るものなの?」
「そうだよな……。不運、では片付けられない」
二人の考えの行き先は、全く同じ。
「神通力?」
敵が既に周囲にいて、神通力を使っているというものだ。
「でも、まさかそんなことってあるか?」
「じゃあないと説明できないじゃない?」
そしてその答えは当たっているのだ。
実はこのバスには、『夜空の黄道』のメンバーであるサジタリウスが乗っている。彼には、意図的に事故を起こさせる神通力がある。だからこのバスの周りで、事故が連発したのだ。しかもサジタリウスは、二人……もとい蓬莱たちの行き先を聞いている。そのために仲間に知らせてある。
だが、墓穴を掘ってしまった。このバスの中にいるために、身動きが取れないのだ。今降りようとすれば確実に二人に見られる。見抜かれたら、終わりだ。だから無言で席に座って、事態が収まるのを待っているのだ。
が、
「おい、君!」
将元はサジタリウスに声をかけた。
「…!」
驚いて顔を彼の方に向けるサジタリウス。他にも乗客がいるのにどうしてバレたのかを考えていると、
「あれだけの事故なのに、どうして驚いていないんだ? そして今、声をかけたらびっくりしているのは何故だ? あれほどの事故よりもマズいことでもあるのかい?」
態度が駄目だった。ここは他の乗客と一緒に、事故に驚かなければ不自然。
「チッ! 面倒な……。だがな、お前らがシャイニングアイランドに行こうとしていることはわかった! 仲間が既に向かっている! 勝ち目はないぞ!」
「じゃあ……ここで反省していろ!」
将元はサジタリウスの体を持ち上げてリアガラス目掛けてぶん投げた。ガラスは割れ、外に放り出されるサジタリウス。ちょうど自分が倒した電柱に頭をぶつけて気絶した。
「ちょっと道を外せば、別のバスが来る。他のバスに乗ろう。それから、先に着くだろう蓬莱たちに知らせるんだ……目的地がバレている、って!」
友里恵はすぐにメールを打った。
「確か、あそこへはバスが通っているんだ。シャイニングアイランドが廃園になったから自動的に廃線……って表現合ってる? でも、近くまで行くバスもあるし、そこからなら十分歩いて行けるんだ。俺たちはそれで行こう。実は電車よりも安上がり」
「わかったわ」
二人はちょうど来たバスに乗り込む。客はそれほど多くないので、席に座る。
「後は着くまで待つだけだ。一応、連絡を入れておこうぜ。友里恵、やっておいてくれるか?」
「もう送信済みよ。蒐にメールで知らせてあるわ。私たちはシャイニングアイランドに、バスで行くってね」
それから数分、バスは何事もなく走った。
ことが起きたのは、赤信号でバスが止まった時のこと。大きな衝突音がしたのである。
「め、目の前だ!」
前を向いていた将元は驚いた。目先の交差点で、事故が起きたのだ。結構派手な衝突だったらしく、トラックと正面衝突した軽自動車はひっくり返っている。
「どうする? 助けるの?」
友里恵が尋ねた。
「……残念だけど、俺たちの神通力では人のためにはなれないよ。気の毒には思うけど、ここは先を急ごう」
冷たい対応しかできない自分たちに無力感を抱く。乗客たちも同じで、ただ驚いている。
信号が変わっても、バスは動かない。事故現場に遭遇したからだ。これは収まるまで待つしかない。と思ったその矢先、
「うわ!」
隣の車線で、ゴミ収集車にワゴンが突っ込んだ。
「ま、また事故…? 今日は多いわね」
さらに電信柱もいきなり折れてバスの後ろの道路に倒れる。
「多い、というか、動けないじゃないか……!」
「あっ!」
前と横は事故現場なので、通れない。バックしようにも、電信柱が邪魔。この、動きを止めるために事故が起きていると思えるほどに不自然な光景。
「俺が降りて、後ろを塞ぐ電柱を除けようか? どんなに重くても持ち上げられるわけだし…」
「でもそれは一般的には不自然よ? そもそもこんなに立て続けに、事故るものなの?」
「そうだよな……。不運、では片付けられない」
二人の考えの行き先は、全く同じ。
「神通力?」
敵が既に周囲にいて、神通力を使っているというものだ。
「でも、まさかそんなことってあるか?」
「じゃあないと説明できないじゃない?」
そしてその答えは当たっているのだ。
実はこのバスには、『夜空の黄道』のメンバーであるサジタリウスが乗っている。彼には、意図的に事故を起こさせる神通力がある。だからこのバスの周りで、事故が連発したのだ。しかもサジタリウスは、二人……もとい蓬莱たちの行き先を聞いている。そのために仲間に知らせてある。
だが、墓穴を掘ってしまった。このバスの中にいるために、身動きが取れないのだ。今降りようとすれば確実に二人に見られる。見抜かれたら、終わりだ。だから無言で席に座って、事態が収まるのを待っているのだ。
が、
「おい、君!」
将元はサジタリウスに声をかけた。
「…!」
驚いて顔を彼の方に向けるサジタリウス。他にも乗客がいるのにどうしてバレたのかを考えていると、
「あれだけの事故なのに、どうして驚いていないんだ? そして今、声をかけたらびっくりしているのは何故だ? あれほどの事故よりもマズいことでもあるのかい?」
態度が駄目だった。ここは他の乗客と一緒に、事故に驚かなければ不自然。
「チッ! 面倒な……。だがな、お前らがシャイニングアイランドに行こうとしていることはわかった! 仲間が既に向かっている! 勝ち目はないぞ!」
「じゃあ……ここで反省していろ!」
将元はサジタリウスの体を持ち上げてリアガラス目掛けてぶん投げた。ガラスは割れ、外に放り出されるサジタリウス。ちょうど自分が倒した電柱に頭をぶつけて気絶した。
「ちょっと道を外せば、別のバスが来る。他のバスに乗ろう。それから、先に着くだろう蓬莱たちに知らせるんだ……目的地がバレている、って!」
友里恵はすぐにメールを打った。