その①
文字数 1,751文字
夏休みの間に、衝撃的な出来事があった。
元々、神通力に目覚める可能性は非常に低い。だが、素質があれば記憶と引き換えに覚醒させることができる人物がいた。その人物は、シャイニングアイランドという遊園地を根城としていたのである。
そのシャイニングアイランドが、崩壊したのだ。かなり繁盛していた遊園地だったのに、今はただの廃墟。
「探しなさい。今田様を見つけ出すのです」
しかし、そこのボスである今田 豪 は無事だった。誰かと戦闘を行った痕跡はあったものの、死亡した確証はない。きっと今もどこかで生きているに違いない。
そんな行方知れずの彼を探している神通力者の集団がある。それは、『夜空の黄道(ナイトスカイ・エクリプティック)』。シャイニングアイランド崩壊時に居合わせることができず、後からそれを知った者たちである。
「どうだ?」
そのメンバーであるカプリコーンが、廃園の中のベンチに腰かけている。
「駄目ね、全部。ここに残されたコンピュータは全部、オシャカ。今田様の行方を知る手掛かりはどこにもないわ」
返事をしたのは、アリエス。彼女は事務局にあった機械類を復元しようとしたが、上手くいかなかったのだ。
「じゃ、ここの探索はもういいだろう。次に移るとしようぜ、どこに行ってみる?」
「そう言われても……」
アリエスは返事に困った。今田がどこに行ってしまったのか、まるで想像できないのだ。
「海沿いとかは?」
「じゃあ、それで」
行く先を決め、歩き出そうとしたその時、
「ん、何だ?」
カプリコーンが反応した。物陰で何かが動いた気がしたのだ。確認してみるが、何もなかった。
「何だ、気のせいか」
そして二人は園内を後にする。
実は、気のせいではない。
「馬鹿な奴らだ」
この時、『黒の理想郷』のメンバーであるシャンバラが園内に潜んでいたのだ。一瞬だけ気配を悟られたと思ったが、ちょっと奥に引っ込んだだけで誤魔化せたので二人を馬鹿にした。
「俺は俺で、任務を遂行させてもらうぜ」
シャンバラはそう言い、事務局のパソコンの前に立った。そして唾液を吐き出す。すると唾がかかったパソコンは、煙を上げて溶けていく。これが彼女の神通力で、自分の体液で何でも消化させることができるのである。
アリエスが駄目になっていると思ったコンピュータのほとんどが、既にシャンバラの手によって溶かされていたのだ。起動するのに重要な部分を破壊されては、いくら頑張っても直しようがない。そしてシャンバラの任務はこの園内にあるコンピュータ全ての破壊であるので、跡形もなく消し去るのだ。
「一時は奴らが来たせいでどうなるかと思ったが、気鬱だったな。あんな馬鹿ども手にかけてもいい……」
最悪、戦って殺すという選択ができた。選べなかったのは、負ける可能性が高かったからではない。相手が二人、対してシャンバラは単独行動。片方に逃げられることが一番嫌だったのだ。だから二人の侵入に気づいた時、ケーブルやハードディスクだけをまず溶かして、それから二人を監視したのだ。
「でも、誰にも気づかれないようにって条件があったからな。命拾いしたな、『夜空の黄道』の奴らも」
シャイニングアイランドは、条件を満たす子供たちを片っ端から捕え、そして神通力者に変え、使役した。中には園内を監視し守る者や、海外で行動する者もいる。
当然、『夜空の黄道』にも根幹となる任務がある。それは、覚醒済みの神通力者を探すこと。中には低確率だが、シャイニングアイランドとは関係なく神通力に目覚めた者もおり、その管理を任されているのだ。
しかし、今はそんなことをしている場合ではない。シャイニングアイランド崩壊の知らせを受けて、日本中に散らばっていた『夜空の黄道』の仲間たちは一旦集合した。そして主君たる今田に指示を仰ごうとしたのである。
でも、その今田本人が行方不明になってしまっているのだ。
「今田様を見つけ出し、保護することが最優先です」
リーダーであるオフィユカスは、そう発言した。そしてメンバーは誰も反対しなかったので、しばらくの間捜索に専念することになったのだ。
元々、神通力に目覚める可能性は非常に低い。だが、素質があれば記憶と引き換えに覚醒させることができる人物がいた。その人物は、シャイニングアイランドという遊園地を根城としていたのである。
そのシャイニングアイランドが、崩壊したのだ。かなり繁盛していた遊園地だったのに、今はただの廃墟。
「探しなさい。今田様を見つけ出すのです」
しかし、そこのボスである
そんな行方知れずの彼を探している神通力者の集団がある。それは、『夜空の黄道(ナイトスカイ・エクリプティック)』。シャイニングアイランド崩壊時に居合わせることができず、後からそれを知った者たちである。
「どうだ?」
そのメンバーであるカプリコーンが、廃園の中のベンチに腰かけている。
「駄目ね、全部。ここに残されたコンピュータは全部、オシャカ。今田様の行方を知る手掛かりはどこにもないわ」
返事をしたのは、アリエス。彼女は事務局にあった機械類を復元しようとしたが、上手くいかなかったのだ。
「じゃ、ここの探索はもういいだろう。次に移るとしようぜ、どこに行ってみる?」
「そう言われても……」
アリエスは返事に困った。今田がどこに行ってしまったのか、まるで想像できないのだ。
「海沿いとかは?」
「じゃあ、それで」
行く先を決め、歩き出そうとしたその時、
「ん、何だ?」
カプリコーンが反応した。物陰で何かが動いた気がしたのだ。確認してみるが、何もなかった。
「何だ、気のせいか」
そして二人は園内を後にする。
実は、気のせいではない。
「馬鹿な奴らだ」
この時、『黒の理想郷』のメンバーであるシャンバラが園内に潜んでいたのだ。一瞬だけ気配を悟られたと思ったが、ちょっと奥に引っ込んだだけで誤魔化せたので二人を馬鹿にした。
「俺は俺で、任務を遂行させてもらうぜ」
シャンバラはそう言い、事務局のパソコンの前に立った。そして唾液を吐き出す。すると唾がかかったパソコンは、煙を上げて溶けていく。これが彼女の神通力で、自分の体液で何でも消化させることができるのである。
アリエスが駄目になっていると思ったコンピュータのほとんどが、既にシャンバラの手によって溶かされていたのだ。起動するのに重要な部分を破壊されては、いくら頑張っても直しようがない。そしてシャンバラの任務はこの園内にあるコンピュータ全ての破壊であるので、跡形もなく消し去るのだ。
「一時は奴らが来たせいでどうなるかと思ったが、気鬱だったな。あんな馬鹿ども手にかけてもいい……」
最悪、戦って殺すという選択ができた。選べなかったのは、負ける可能性が高かったからではない。相手が二人、対してシャンバラは単独行動。片方に逃げられることが一番嫌だったのだ。だから二人の侵入に気づいた時、ケーブルやハードディスクだけをまず溶かして、それから二人を監視したのだ。
「でも、誰にも気づかれないようにって条件があったからな。命拾いしたな、『夜空の黄道』の奴らも」
シャイニングアイランドは、条件を満たす子供たちを片っ端から捕え、そして神通力者に変え、使役した。中には園内を監視し守る者や、海外で行動する者もいる。
当然、『夜空の黄道』にも根幹となる任務がある。それは、覚醒済みの神通力者を探すこと。中には低確率だが、シャイニングアイランドとは関係なく神通力に目覚めた者もおり、その管理を任されているのだ。
しかし、今はそんなことをしている場合ではない。シャイニングアイランド崩壊の知らせを受けて、日本中に散らばっていた『夜空の黄道』の仲間たちは一旦集合した。そして主君たる今田に指示を仰ごうとしたのである。
でも、その今田本人が行方不明になってしまっているのだ。
「今田様を見つけ出し、保護することが最優先です」
リーダーであるオフィユカスは、そう発言した。そしてメンバーは誰も反対しなかったので、しばらくの間捜索に専念することになったのだ。