その①

文字数 1,469文字

『夜空の黄道』のメンバーは人の目を盗みながら、彼女らが拠点としている場所に帰っていった。

「これでいいのか?」

 博は潤一郎に聞く。

「どういう意味だ?」
「『夜空の黄道』を仲間にして、『黒の理想郷』と戦う。そのストーリーは理解しやすい。おれたちのクラスメイトも『夜空の黄道』の仲間も囚われているんだからな。でもよ……」
「信じたくないなら、信じなくてもいい。みんなの意見と無理に合わせる必要はないのだから」

 言葉に詰まっていたところを、潤一郎が先に言った。

「寧ろ、お前が『夜空の黄道』を信用していなくて良かったかもしれんな」
「と言うと?」

 今度は博の方が聞き返す。

「一応は敵ではないことを証明できたわけだが、それも作戦の一部かもしれないだろう? ならば、こちらも一石を投じる。お前と、同じ考えを持つ者で、『夜空の黄道』を見張るんだ。もしもバレたら、向こうの護身のためと誤魔化せばいい」

 その案に博は乗り、早速学校から出た。

「……必要のない心配だと思うがな」

 この日はこれで終わりだ。そして明日も、『夜空の黄道』が学校に来ることになっている。


 だが次の日の様子はおかしかった。

「何だこれは、ゴホゴホ!」

 マスクをしていなければ外に出れないほど、空気が汚いのだ。

「こんな状況で登校できるか……? 無理だろう…」

 寛治は家で完全に諦めムード。一応学校からの通達を待つことにした。すると、正式に休校とする案内がメールで回って来たので、喜んでベッドに戻った。


「嫌な感じの天気ですね……。昨日まではそんな様子はなかったのですが、一体これはどういうことでしょうか?」

『夜空の黄道』の拠点には、テレビが置いてある。チャンネルを切り替えて最適な情報を発信している局を選んだ。

「……ダメだ。どこの番組でも、原因不明の一点張り。よくわからない専門家が、わかってもいないのに得意気な解説してるし」

 愚痴をこぼすジェミニ。彼でなくてもそうしているだろう。

「もしや、敵からの攻撃なのでは?」

 そこで、カプリコーンが閃いた。

「どういうことよ?」
「これは神通力。水蠆池高校と手を組んだ俺たちへの見せしめ…ってところだな」
「じゃあ、これは『黒の理想郷』が仕組んだ意図的な大気汚染…?」

 アリエスは自分で言った言葉を信じられない様子だ。しかし、そう考えるしかなさそうでもある。

「オフィユカス、あなたから指示を仰ぎたいわ」
「わかっています。みんな、マスクかハンカチで口を覆ってください。死なない程度なら、ヴィルゴの神通力で直せるはずです。そしてこの原因を突き止め、解決しましょう」

『夜空の黄道』、出動。


 カプリコーンの指摘は当たっていた。

「本当にいいのか…? 県を丸々一個腐らせるのと同義だぞ…?」
「構わない。こっちは二人も失っているんだ、これぐらいのことはしても何も問題ではない。違うか、ニライカナイ?」

 彼がこの汚染の源である。神通力は環境を汚染させること。かなり広範囲に影響を及ぼす力だ。そのリミッターがディストピアの命令で外れたので、

「では行おう…!」

 躊躇うこともなく、神通力を使った。
 その光景を見ていた蓬莱は、

(………私にも何か、できるはずだ。考えろ、斿倭や『夜空の黄道』に、手を貸すことができるはずだ)

 ちょうど彼の目の前を、ネズミが横切ろうとしていたので捕まえた。

(これだ! ここの場所さえわかってもらえれば!)
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