『端の多い生涯を送って来ました。』
文字数 2,754文字
前巻までのあらすじ
黒の組織から逃げてきて、未来都市、ハラジュクへとやってきてしまった望。「ちょーヤンバルクイナ!」「まじ、卍なんだけど〜」望は自分の知らない言葉ばかり聞こえてきて焦ってしまう。そこに「あなたはビアンカ派か⁉︎ それともフローラ派か⁉︎」また謎の呪文が!その男は問い詰めるように近づいてくる。望は訳も分からず「僕はデボラ派だー!!」と叫びながらその場を去ってしまう。そしてその男はニヤッと笑って「俺もだよ」と言って風に溶けていったという。
・ ・
奈美 「あれっ、先生。何を読んでるんですか?」
望 「ああ、日塔さんですか。実はですね、太宰治先生の『人間失格』を読んでいるんです。それにしても……この冒頭を読むたび思うんですが、私の人生は、はじばかりでしたね」
奈美 「先生はそうでしょう」
望 「……何を勘違いしてるのです?」
奈美 「えっ?」
望 「はじは”恥”ではなく、端っこの方の”端”、つまり私の人生は端ばかりの人生だったということです!」
あびる 「どういうこと?」
望 「振り返ってみれば、端の多い生涯を送って来たものです。目立つことを避け、関わることを避け、端にいることを徹底してきました」
あびる 「何故そんなことを?」
望 「簡単なことです。面倒ごとに巻き込まれないためですよ。端っこは良い意味でも悪い意味でも、風当たりが弱いですからね。人に非難されることもありません」
奈美 「出たよ、チキン」
望 「自分で言うのもなんですが、率先して端っこに行く人生、虚しいものです」
望 「端っこに自ら向かうことの虚しさと言ったら、たまったものではありません!」
・三人で話してるとき、二人だけ盛り上がって会話の輪に入れない三人目
・前作のイメージが強すぎて、王道な漫画が描かせてもらえず、またマイナーな路線の漫画を描く漫画家
・打ち上げ中、端で一人、水を飲む俺
望 「絶望したっーー!! 強風に煽られたら簡単に折れてしまうような弱者に、端に行く苦しみを強いるこの社会に絶望したっーー!!」
奈美 「確かにそういうのあるよね。図書館とか塾の自習室にいるとき、私も部屋の角の方につい座りたがるもん」
あびる 「……普通」
奈美 「普通って言うなぁ!」
可符香 「でも別にいいじゃないですか、端に率先して行く人生でも! 端に行くことで、恥からも逃げられるんですから!」
望 「風浦さん……確かにまあその通りですね。端へ行くことで、恥から回避できることもあります」
マ太郎 「例えばなんダ?」
望 「例えばですね……海外で成功する!といきなり言い出して、賛否両論あった、とある芸人」
まとい 「確かに彼も端、というよりは批判の渦の中から、逃げ出しましたものね」
望 「いたんですか」
まとい 「ええ、ずっと」
望 「で、彼は批判もとい恥を受けざるを得ない状況に本来陥るはずでしたが、その彼はというと既に海外にいるので、批判も恥も受けずに済んだということです」
まとい 「まあ結果的に彼は先駆者にもなりましたしね」
望 「確かに彼が海外に行ってからというもの、とあるジャニーズのボーカルが音楽を本格的にしたいと言い出したり、つい先日も、とあるタレントがミュージカルを本気で学びたいと言い出したり、しましたね」
奈美 「偶然だと思うけど⁉︎」
望 「ともかく、端に逃げることで恥から逃げることができるのは確かなようです」
可符香 「ええ、その通りです! 端に逃げることは決して恥ではありません!」
望 「……ですが、逃げたのにもかかわらず、ちゃっかり戻ってきて、平然と過ごす輩がいるのも確かです」
千里 「……どういうことです?先生。」
望 「様々な批判や恥を端へ逃げることで避けたのにもかかわらず、ある程度時が経ったらまるで何もなかったように平然と帰ってくる輩のことです。もちろん、逃げるときにもこっそり、帰ってくるときにもこっそりです」
千里 「そんな人がいるんですか?」
望 「ええ。……ちょうど今日は風が強いですし、外へ出てみましょう。そうすれば分かります」
トコトコ
奈美 「風が強いなあ〜……って、誰か風に乗って飛んで来ましたよ⁉︎」
望 「見てください!彼らが、かつて、風当たりの強い場から逃げてきたのにもかかわらず、しばらくしたら、ちゃっかりと風当たりの強い場に戻ってきて、そのくせ上手く風に乗ってごまかせている人たちです!」
千里 「いっぱいいる⁉︎」
・トラブル起こした政治家
・トラブル起こした漫画家
・別にトラブルは起こしてないけど常に漫画というか自分に迷ってる漫画家
・犯罪したのにちゃっかり戻ってきた芸能人
・用意された職場でちゃっかり第二の人生を始めてる元政治家
千里 「そ、そんな!逃げたり戻ってきたり都合が良過ぎじゃありませんか!責任の責の文字もない!ちゃんときっちりさせないと!逃げるならちゃんと認めて、ちゃんと報告して逃げる!戻ってくるなら、逃げたことの責任をしっかり取ってから戻ってくる!こんなこと、許さない!」
千里 「私が制裁を加える!」
・ちゃっかり戻ってきてる芸能人に制裁!
・ちゃっかり戻ってきてる政治家に制裁!
・ちゃっかり改蔵2になってるスタジオパルプに制裁!
千里 「あれもこれもみんな制裁!」
望 「大変です!また木津さんが暴走してます!」
あびる 「先生のせいでしょ」
可符香 「ちなみに小説なので分かりにくいと思いますが、現在強風に煽られて、カエレちゃんはノルマを果たしています」
千里 「……ちゃっかりフラグを立ててる先生に制裁!」
望 「ちょっと待ってください、木津さん!!」
千里 「……なんですか、先生。」
望 「そうやってちゃっかり猟奇オチにしようとしてませんか?」
千里 「なっ……。」
望 「い、今のうちに!」
奈美 「あっ、逃げた!」
望 「このままでは私は殺されてしまいます!もしくは批判の嵐です!どこか、どこか……風当たりの弱い場所、風当たりの弱い場所はないのでしょうか。そう……全てから逃げられる場所が!あっ……ここだ!ここなら……。おりゃあー!当たって砕けろだー!」
晴美 「ちょ、先生⁉︎」
奈美 「先生が断崖から落ちた⁉︎」
マ太郎 「……っていうか全てから逃げられるかもしれないけど、断崖は普通に風強いよナ」
・ ・
可符香 「そういえば愛ちゃんもいつも端にいるよね」
愛 「すいません!すいません!私のようなものが最後のセリフを言ってしまいすいません!」
黒の組織から逃げてきて、未来都市、ハラジュクへとやってきてしまった望。「ちょーヤンバルクイナ!」「まじ、卍なんだけど〜」望は自分の知らない言葉ばかり聞こえてきて焦ってしまう。そこに「あなたはビアンカ派か⁉︎ それともフローラ派か⁉︎」また謎の呪文が!その男は問い詰めるように近づいてくる。望は訳も分からず「僕はデボラ派だー!!」と叫びながらその場を去ってしまう。そしてその男はニヤッと笑って「俺もだよ」と言って風に溶けていったという。
・ ・
奈美 「あれっ、先生。何を読んでるんですか?」
望 「ああ、日塔さんですか。実はですね、太宰治先生の『人間失格』を読んでいるんです。それにしても……この冒頭を読むたび思うんですが、私の人生は、はじばかりでしたね」
奈美 「先生はそうでしょう」
望 「……何を勘違いしてるのです?」
奈美 「えっ?」
望 「はじは”恥”ではなく、端っこの方の”端”、つまり私の人生は端ばかりの人生だったということです!」
あびる 「どういうこと?」
望 「振り返ってみれば、端の多い生涯を送って来たものです。目立つことを避け、関わることを避け、端にいることを徹底してきました」
あびる 「何故そんなことを?」
望 「簡単なことです。面倒ごとに巻き込まれないためですよ。端っこは良い意味でも悪い意味でも、風当たりが弱いですからね。人に非難されることもありません」
奈美 「出たよ、チキン」
望 「自分で言うのもなんですが、率先して端っこに行く人生、虚しいものです」
望 「端っこに自ら向かうことの虚しさと言ったら、たまったものではありません!」
・三人で話してるとき、二人だけ盛り上がって会話の輪に入れない三人目
・前作のイメージが強すぎて、王道な漫画が描かせてもらえず、またマイナーな路線の漫画を描く漫画家
・打ち上げ中、端で一人、水を飲む俺
望 「絶望したっーー!! 強風に煽られたら簡単に折れてしまうような弱者に、端に行く苦しみを強いるこの社会に絶望したっーー!!」
奈美 「確かにそういうのあるよね。図書館とか塾の自習室にいるとき、私も部屋の角の方につい座りたがるもん」
あびる 「……普通」
奈美 「普通って言うなぁ!」
可符香 「でも別にいいじゃないですか、端に率先して行く人生でも! 端に行くことで、恥からも逃げられるんですから!」
望 「風浦さん……確かにまあその通りですね。端へ行くことで、恥から回避できることもあります」
マ太郎 「例えばなんダ?」
望 「例えばですね……海外で成功する!といきなり言い出して、賛否両論あった、とある芸人」
まとい 「確かに彼も端、というよりは批判の渦の中から、逃げ出しましたものね」
望 「いたんですか」
まとい 「ええ、ずっと」
望 「で、彼は批判もとい恥を受けざるを得ない状況に本来陥るはずでしたが、その彼はというと既に海外にいるので、批判も恥も受けずに済んだということです」
まとい 「まあ結果的に彼は先駆者にもなりましたしね」
望 「確かに彼が海外に行ってからというもの、とあるジャニーズのボーカルが音楽を本格的にしたいと言い出したり、つい先日も、とあるタレントがミュージカルを本気で学びたいと言い出したり、しましたね」
奈美 「偶然だと思うけど⁉︎」
望 「ともかく、端に逃げることで恥から逃げることができるのは確かなようです」
可符香 「ええ、その通りです! 端に逃げることは決して恥ではありません!」
望 「……ですが、逃げたのにもかかわらず、ちゃっかり戻ってきて、平然と過ごす輩がいるのも確かです」
千里 「……どういうことです?先生。」
望 「様々な批判や恥を端へ逃げることで避けたのにもかかわらず、ある程度時が経ったらまるで何もなかったように平然と帰ってくる輩のことです。もちろん、逃げるときにもこっそり、帰ってくるときにもこっそりです」
千里 「そんな人がいるんですか?」
望 「ええ。……ちょうど今日は風が強いですし、外へ出てみましょう。そうすれば分かります」
トコトコ
奈美 「風が強いなあ〜……って、誰か風に乗って飛んで来ましたよ⁉︎」
望 「見てください!彼らが、かつて、風当たりの強い場から逃げてきたのにもかかわらず、しばらくしたら、ちゃっかりと風当たりの強い場に戻ってきて、そのくせ上手く風に乗ってごまかせている人たちです!」
千里 「いっぱいいる⁉︎」
・トラブル起こした政治家
・トラブル起こした漫画家
・別にトラブルは起こしてないけど常に漫画というか自分に迷ってる漫画家
・犯罪したのにちゃっかり戻ってきた芸能人
・用意された職場でちゃっかり第二の人生を始めてる元政治家
千里 「そ、そんな!逃げたり戻ってきたり都合が良過ぎじゃありませんか!責任の責の文字もない!ちゃんときっちりさせないと!逃げるならちゃんと認めて、ちゃんと報告して逃げる!戻ってくるなら、逃げたことの責任をしっかり取ってから戻ってくる!こんなこと、許さない!」
千里 「私が制裁を加える!」
・ちゃっかり戻ってきてる芸能人に制裁!
・ちゃっかり戻ってきてる政治家に制裁!
・ちゃっかり改蔵2になってるスタジオパルプに制裁!
千里 「あれもこれもみんな制裁!」
望 「大変です!また木津さんが暴走してます!」
あびる 「先生のせいでしょ」
可符香 「ちなみに小説なので分かりにくいと思いますが、現在強風に煽られて、カエレちゃんはノルマを果たしています」
千里 「……ちゃっかりフラグを立ててる先生に制裁!」
望 「ちょっと待ってください、木津さん!!」
千里 「……なんですか、先生。」
望 「そうやってちゃっかり猟奇オチにしようとしてませんか?」
千里 「なっ……。」
望 「い、今のうちに!」
奈美 「あっ、逃げた!」
望 「このままでは私は殺されてしまいます!もしくは批判の嵐です!どこか、どこか……風当たりの弱い場所、風当たりの弱い場所はないのでしょうか。そう……全てから逃げられる場所が!あっ……ここだ!ここなら……。おりゃあー!当たって砕けろだー!」
晴美 「ちょ、先生⁉︎」
奈美 「先生が断崖から落ちた⁉︎」
マ太郎 「……っていうか全てから逃げられるかもしれないけど、断崖は普通に風強いよナ」
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可符香 「そういえば愛ちゃんもいつも端にいるよね」
愛 「すいません!すいません!私のようなものが最後のセリフを言ってしまいすいません!」