『ボタンの音ではなかった。』

文字数 2,575文字

前巻までのあらすじ

そろそろ始まる新年度。学生は新しい学校生活に、就活生は新しい職場に、心踊っていた。ところでそんな明るい雰囲気に場違いな男が一人、糸色望である。「新年度ですか、素敵ですね」その一言を言ったがために引きこもりやニートや浪人生に殴られたからである。新年度は虚しいものだ……。

‪望 「先輩方の卒業式が終わりましたね……。みなさんは第二ボタンをもらいましたか?」‬

一同 シーン

望 「そして第二ボタンをもらいに行って憧れの先輩がモテモテなのを見て落ち込みましたね??」

一同 どよんど

望 「勿論その先輩にも好きな人がいて……まあ十中八九あなたではないのですが」

一同 どよんど

千里 「いい加減にしてください、先生! そんな言い切る必要ないでしょ!」

望 「いえ。ボタンをもらいに行ったら必ずあなたは後悔します。何故なら最初から第二ボタンはないからです!」

奈美 「どういうこと?」

望 「言うならば決定事項です。もうあなたが会いに行く頃には先輩は事前に好きな人に第二ボタンを渡しているだろうし、仮にまだ第二ボタンがあったとしても、見ず知らずのあなたには渡しませんよ。せいぜい袖についてるボタンくらいです」

千里 「前合わせのボタンですらないのかよ!!」

望 「もうそれはまるで、完全予約制のレストランのごとく……毎日満員の劇場のごとく……受験前の会場近くのホテルのごとく……行ってみようと思った時にはもう遅いんですよ!! 第二ボタンが欲しいならその先輩と幼馴染で、かつ『甲子園に連れてって』くらい言える関係でないと!」

晴美 「タッチかよ⁉︎」

望 「勝負は卒業式前、ひょっとしたら入学式前から始まっているのです。そんな競争率の激しい中で第二ボタンを貰おうなど、考えが甘すぎます!」

対象GUY 「俺たちのボタンはいつでもあげられるぞ!!」

奈美 「要らないからっ!!」

‪望 「それに世の中には触れちゃいけないボタンもあるのです」ぼそっ‬

まとい 「例えば浮気相手のボタンですかね」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと」

望 「浮気相手のボタンなんて絶対に触れちゃいけません! まだそこまでならなんとかなります。それ以上進んだら離婚が目に見えます!」

‪奈美 「えっそれってつまり……先生のエッチ!!」か〜‬

望 「はて? エッチとは? 私が言ったのは浮気相手とデートに行くためのレストランの予約のボタンを押すな、ということですよ? デートなんてしたらもう言い訳のしようがないですからね」

あびる 「奈美ちゃん、エッチだ」

晴美 「エッチだ」

奈美 「これは罠だぁぁぁっ!!」

望 「まあそれはともかく、世の中には触れちゃいけないボタンがたくさんあるのです!!」

・ボタンを触ろうとしてお腹触ってしまい殴られる
・ボタンを無理矢理かけようとしてパチーンと取れて飛んでいく
・ボタンを押してミサイルが飛んでいく

千里 「最後に関してはボタン違いじゃん!」どよんど

可符香 「ところで先生!」

望 「おや風浦さん。どうかしました?」

可符香 「先生の第二ボタンは誰にあげるんですか?」

望 「なっ」

奈美 「そりゃあもちろん私で……」

千里 「あぁっっ⁉︎」

奈美 「そりゃあもちろん千里ちゃんだよ……」

千里 「ということで先生? 私にボタンをください。」

望 「いやそもそも私着物ですし」

千里 「私に渡せないってことですか??」

望 「えっ、あの、いや、その」

千里 「まさか完全予約制!!? 私以外に女がいるとっ!?」

望 「えっ」

千里 「まさか日塔さん?」

奈美 「ち、違うよ!!」

千里 「晴美?」

晴美 「いや違うよ。そもそも先生のボタンを剥がすのは男の仕事だしね」

望 「それはそれで間違ってますっ!!」

千里 「じゃあ小節さん?」

あびる 「うん、そうだよ」

一同 シーン

望 「えっ⁉︎」

千里 「……これは致し方ないわよね? さて戦いが始まるわ。」

望 「なんで嘘なんか言うんですかぁ!!」

あびる 「先生が他の誰かに取られるのは嫌だったし」

まとい 「私も戦いに参加させてもらうわ。先生は私のものよ!!」

美子 「さてさて始まりました、絶望コロシアム! 司会は私こと根津美子と」

翔子 「丸内翔子です」

麻菜実 「観覧席はこちらとなります〜」

翔子 「ちなみにジュースやポップコーンも販売してますよ」

美子 「さて、今回のコロシアムの参加者は……包帯を武器にして戦う勇敢な少女小節あびる!!」

翔子 「そして類稀なる調査力を持つ天才少女常月まとい!!」

美子 「暴力なら誰にも負けない悪魔的な少女木津千里!!」

翔子 「それと普通な少女日塔奈美」

奈美 「普通って言うなぁ!! しかもなんか一人だけ雑だし!! っていうか私参加してるの⁉︎」

美子 「さてさてこの勝負……どうなるんでしょうか!」

翔子 「どうなるんでしょうかね〜」

美子 「おっと、常月選手。早速あちらこちらの障害物に隠れながら、攻撃を仕掛けていますね」

翔子 「小節選手は包帯を駆使してうまく攻撃を防いでますね」

美子 「あっでもスコップを振り回して襲いかかる少女が一人!」

翔子 「木津選手だっ!!」

奈美 「ていうかこのままじゃ私死ぬ!!」

美子 「常月選手の攻撃を二人うまくかわした!」

翔子 「そして普通に当たりましたね」

美子 「小節さんの攻撃もうまく両者かわす!」

翔子 「そして普通に当たりましたね」

美子 「木津選手が怒り狂って戸愚呂弟100%みたいな状態に! あれ当たったらまずいですね。でも見事によけた!!」

翔子 「でも普通に当たりましたね」

奈美 「こ、このままじゃ本気で死んでしまう……うう、どうしようもない。ぐす……このコロシアムがまだ続くなら……みんな死ぬしかないじゃない! あなたも、私も!」

ポチっ

ドカーーン!!

マ太郎 「爆破オチカヨ」

可符香 「よくよく考えてみるとボタンの話が出てきた時点でオチは目に見えてましたけどね〜」
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