『文化祭の暮方の事である。』

文字数 4,116文字

前巻までのあらすじ

とある高校の野球試合を観戦しにやって来た望。しかしそこで監督が生徒に対して体罰をしてるのを見つけてしまう!一教師として見逃せない一方、なるべく他人には関わりたくない望。しかし勇気を出して望はその監督の方へと近づいていく。緊迫してる空気の中、ふと望はその生徒の表情を見てあることに気づく。なんと彼は叩かれて喜ぶ変態だったのだ!win-winの関係だということに気づいた望は、元々見ていなかったことにして、観戦席へと戻っていったのであった……。

・ ・

可符香 「文化祭です!」

・ ・

千里 「……なのになんでまた私たちは体育館にいるのです?」

望 「簡単なことです!!うちのクラスに普通の文化祭は向いてません!」

奈美 「……なんて滅茶苦茶な」

千里 「じゃあ何をやるんです!体育会系とか分かれて行うとか、毎度変なことばかり。今回は?」

望 「……実はまだ決めてないんですよね。でもとりあえず普通の文化祭はありえません」

カエレ 「横暴にもほどがあるだろ!」

可符香 「では先生こちらを!」

ペラッ

望 「……紙? なんの紙です?」

可符香 「読めば分かります!!」

望 「どれどれ……どうやらこれはポエムみたいですね。題名は『普通ってなんだろう?』ですか」

奈美 「ってちょっと⁉︎」

望 「普通ってなんだろう? それって触れるのかな? 甘いのか美味しいのか食べられるのか? でも私は思うのだ……」

奈美 「ストップ!!お願いだからストップ!!」

あびる 「……どうしたの、奈美ちゃん」

奈美 「えっと、あの、えっと……」

可符香 「それは奈美ちゃんが中学生の頃にコッソリ書いていたポエムの中の一つです!!」

奈美 「や、やめて!!そもそもなんで可符香ちゃんがそれを持ってるのよ⁉︎」

あびる 「……中学生なんてみんなそういうの書いてるよ、普通だから気にしないでいいと思う」

奈美 「ありがとう……って普通って言うなぁ!」

可符香 「他にもこれを!」

ペラッ

望 「……なんです?これは」

可符香 「麻菜実ちゃんが昔書いた未来予想図です!!」

麻菜実 「えっ」

望 「……旦那さんが仕事から帰って来て、私はお疲れ様と言う。そして私は夕食と風呂の準備もちゃんとしていて、ご飯にする?風呂にする?それとも……って照れながら言うのだ」

麻菜実 「……そんなことを信じていた時期もありましたね」

奈美 「麻菜実ちゃんが遠い目をしてる⁉︎」

望 「……しかしこれらの文のどこが、文化祭に関係あるのでしょうか?」

可符香 「先生! よく考えてみてください! 昔書き残した文によって、時を超え周りの人にいじられたり、ネット上で炎上したりするんですよ? つまり、『文化祭』ではなく『文火災』ですよ!」

望 「ああ、なるほど」

カエレ「なるほどじゃねぇよ⁉︎」

望 「……にしても恐ろしい、『文火災』!!こうも時を超え自分に襲いかかってくるとは、当時の自分は全く予想していなかったでしょう!勉強になります!!」

奈美 「勉強のための当て馬にされた⁉︎」

望 「ああ、恐ろしい『文火災』!!」

・中二病時期に書いた、異世界設定でのファンタジーストーリー!

・ネットにかなり昔に呟いたコメントが、いきなり大炎上!

・適当にツイートしたことがたまたま当たり、預言者扱い!

・いつか、この小説も僕の黒歴史になるのかな……(ーー;)

望 「絶望したっーー!!かつて書いた文章が、時を超え被害をもたらす『文火災』に絶望したっーー!!」

千里 「……そういえば、私も知っていますよ、『文火災』の例。まあ文は文でも漫画ですけど。」

望 「ほう……どんな例でしょうか?」

千里 「これを。」

ペラッ

望 「これは?」

千里 「南国アイスホッ……。」

望 「ちょ、それはダメです!!」

千里 「何故ですか?」

望 「なんでもですよ!ダメなものはダメです!!」

千里 「だってこれは明らかな『文火災』ですよ? 作者の裸だって……。」

望 「ああっ!二次創作小説として原作の作者様をいじるなど、なんと最低なことかっ!!実に申し訳ない!」

晴美 「……いや、今まで普通に羅列ネタ内でいじってたじゃん」

マ太郎 「それにその漫画ハ、作者本人も黒歴史扱いしてるヨ!」

千里 「……なら仕方ありませんね。では別の『文火災』を。」

ペラッ

望 「……これはあの漫画の二次創作小説? ペンネームはハルミ? 一体誰でしょうか?」

晴美 「ってそれはまさかっ⁉︎」

望 「読んでみましょう」

ペラッ ペラッ

望 「ってなんですか!! この作品は!! 健全な子供には見せられない過激描写ばかりです!!」

晴美 「いやぁぁー!!」

可符香 「なるほど!!絵にしない分、妄想が捗って、結果普段書いている漫画よりも過激描写になったのですね!」

晴美 「なんで千里が持ってるのよ⁉︎」

千里 「……あなたのお母さんが。」

晴美 「なんでお母さんが知ってるのよ⁉︎」

千里 「……それはまあ、そうね。」

晴美 「こっち向けよ⁉︎」

千里 「……どうです、先生!これは『文火災』の例になりますか?」

望 「まあ……十分なりますが、これを出してしまうとこの小説は18禁になってしまうので、見ないふりということで」

晴美 「しかも無駄死にかよっ⁉︎」

可符香 「ところで先生、まといちゃんの先生日記は知ってますか?」

まとい 「なっ」

望 「……まあ以前に日記をつけられていたのは知っていますが、まだ続いていたのですか?」

可符香 「ええ、しっかりと!!しかもより綿密に粘着質に!!」

望 「えっ」

可符香 「こちらになります!」

ペラッ

望 「どれどれ……えっ」

クラッ

あびる「先生があまりの衝撃にフラフラしてる」

望 「ま、まさか、いや常月さんのつきまといぶりは昔から知っていましたが、流石にここまでとは……。こ、怖すぎますよっ!!」

まとい 「ってそれプライベート用の先生観察日記じゃない⁉︎」

晴美 「……プライベート用?日記に仕事用とかプライベート用とかあるの?」

可符香 「まといちゃんは先生や他の生徒に見られてもいい健全な観察日記と、自己満足用の犯罪ギリギリの観察日記の両方を持っています!!」

奈美 「……なんで可符香ちゃんがそれを持ってるのよ⁉︎」

まとい 「そっちは誰にも見られたくなかったのに!!よりによって、先生に見られるなんて!!」

望 「……一瞬衝撃は受けましたが、なんとか持ちこたえました」

フラフラ

可符香 「ではとどめを刺しましょう!!」

ペラッ

望 「なんです?これは……ぐっ」

ドンッ

奈美 「先生が倒れた⁉︎」

可符香 「これは千里ちゃんが中学校の時に書いた小説です!!」

千里 「……ってどういうことよ⁉︎」

晴美 「なるほど、それなら先生が倒れたのも仕方ない。千里が書いたあの小説は伝説の奇書と呼ばれていて、読破した者は、必ず一度は精神に異常を来たすって言われてるからね」

あびる 「……どこのドグラ・マグラ」

千里 「先生!! 目を覚ませ!!」

奈美 「千里ちゃんがスコップを持ち始めた!」

千里 「殴られたくなきゃ目を覚ませ!そして何故私の小説を読んだら気絶したのか説明しろ!!」

望 「……」

千里 「ちっ。目を覚まさないか。なら……」

奈美 「なら?」

千里 「他の人に読んでもらって意見を聞きましょう!!私の作品がドグラ・マグラ? 私の作品はそんな狂ってないわよ!! そもそもこれはハートフルな作品を書きたいと思って書いたやつだし……。」

晴美 「……ハートフル?」

千里 「さて、まずは誰から読んでくれるのかな?」

奈美 「ひっっ!」

あびる 「……次は普通じゃない?」

まとい 「普通でしょ」

奈美 「なっ」

千里 「……さて、次の記念すべき読者はあなたになったわけだけど。」

奈美 「そ、そんな!いつもいつもみんな裏切るなんてひどいよっ!!」

千里 「黙って読みなさい!」

ペラッ

ドンッ

あびる 「……本当に黙った」

千里 「じゃあ次は誰が読む?」

可符香 「ちょっと待ってください!!」

千里 「……風浦さん。」

可符香 「そもそも千里ちゃんがこんなことになったのは『文火災』のせい!だったらその『文火災』を処刑した方が良いのでは?」

千里 「それだ!!」

あびる 「……上手く避けれた」

晴美 「被害者はなんとか奈美ちゃんだけに抑えられたね」

千里 「……ああ、憎き『文火災』!!残り残らず処刑してやる!!」

可符香 「その意気です!!」

千里 「全部全部、『文火災』は処刑してやる!晒してやる!!」

・中二病全開の小説はクラスメイトに公開処刑!!

・さよなら絶望先生にハマった人に南国アイスホッ……を紹介処刑!!

・恥ずかしいのか分からないが、公開しようとしない国の予算の裏の流れをオールバレバレ処刑!!

千里 「もう、どんどん『文火災』は処刑して……。」

・ ・

あびる 「……なんで急に終わったの?」

晴美 「きっとこの小説も対象だったんだよ。触れないであげて」

・ ・

先生観察日記 常月まとい
公開用

9月15日

「いたんですか」

「ええ、ずっと」

今日は無し。最近度々ない気がする。明日はあるかな、あるよね。

・ ・

『普通ってなんだろう?』

普通ってなんだろう?
それって触れるのかな?
甘いのか
美味しいのか
食べられるのか?
でも私は思うのだ……
普通ほど食べづらいものはないなぁ
って
だって味もしないし
場合によっちゃ食べてることにさえ
気づかないんだもん
でも後味は良くて
いつか一生の宝物に
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