『ワースト一位は悲しんだ。』

文字数 3,854文字

霧 「この小説、読まないでよ」

・ ・

可符香 「定期テストの結果が貼りだされてます!!」

あびる 「……私、下の方だ」

晴美 「あれっ、意外に高い!」

奈美 「えっ⁉︎ わ、私がクラスで一位!! 本当に⁉︎」

望 「……ええ、本当ですよ」

千里 「……先生。」

望 「ただしワースト一位ですが」

奈美 「えっ」

千里 「……よく見ると、点数が低い順に上から並んでる。」

晴美 「じゃあ私も低いってことじゃん⁉︎」

奈美 「私なんてビリ!! 先生、何でわざわざこんなことをしたんですか! これじゃビリが目立つじゃないですか⁉︎」

望 「……世の中にはワースト一位などの、悪いランキングが多く存在するのです!! それを教えるための致し方なしの犠牲です!」

マ太郎 「教師ランキング、ワースト一位になるんじゃないカ?」

奈美 「まだ下の方は目立たないのに、上に上げられちゃったら嫌でも見られるじゃない!!」

望 「例えば核保有国のランキング。上位に上がっても喜べません!! また、裏で暗躍して手に入れたランキング一位の称号も、素直には喜べません!」

まとい 「……ランキングって、なかなかに人の醜さを表しますよね」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと」

あびる 「……確かに、それはあるかも。ランキングって人の嫉妬とかセコさとか、いろんな感情が交差する場所のような気がする」

奈美 「それよりこのランキング表、早く外してよ!!」

晴美 「私なんて微妙に上位だ!! 微妙に悪いってなんかすごい嫌なんだけど!!」

望 「なんたる『ワーストランキング』の醜さよ! そしてそれが溢れてるこの社会は実に恐ろしい!」

・あべさんのカレーでもうみんな、選挙ランキングは決まったようなもの

・ランキングの結果が目に見える八百長相撲

・総選挙という名のグループ内格差

・期待しつつ毎度結果は見えてる自分の作品の順位

望 「絶望したっーー!!悲しみしか呼ばない『ワーストランキング』に絶望したっーー!!」

あびる 「……このくだりもそろそろワーストランキングに入る気がする」

まとい 「ところで先生?」

望 「なんでしょうか、常月さん」

まとい 「バットノーベル賞って知ってますか?」

望 「はて……? 聞いたことがないですね」

まとい 「でしたら付いて来てください! 今からバットノーベル賞の授賞式がナットクデキヌ・コンサートホールにて行なわれます!!」

あびる 「……ナットクデキヌ? ストックホルムじゃなくて?」

晴美 「まあ基本バットな賞だったら納得出来ないよね」

マ太郎 「ってことデ、移動するヨ!」

トコトコ

千里 「……さてさて、始まりました。バットノーベル賞授賞式。司会はこの私、木津千里です!」

望 「ってなぜ木津さんが司会をやってるんですか⁉︎」

あびる 「……まあ千里ちゃんは基本なんでも出来るし、なんでも実行するから」

晴美 「……そういえば奈美ちゃんがいなくない?」

可符香 「奈美ちゃんはAKaBane84の緊急収集に呼ばれて、今さっきそちらへ向かいました!」

麻菜実 「……あれ、私呼ばれてないよ」

望 「そんなことより!! 木津さんが司会なんて恐ろしくてたまりません! 一体何が起こると言うのです!!」

千里 「さて、まずはバットノーベル平和賞からです!!」

あびる 「……あれっ? 確かノーベル平和賞だけ場所が違うはずじゃ」

望 「それは展開上の都合です」

千里 「今回のバットノーベル平和賞の受賞者は……。」

ドキドキ

千里 「朝鮮の北のお方です!!」

望 「なっ」

千里 「おめでとうございます! 北の米の方と上手くもめながらも、優雅な暮らしをキープし、挙句に戦争兵器のプロフェッショナルになるその勇姿! 実にバットノーベル平和賞にふさわしい!!」

望 「まずいです、実にまずいですよ!! 今回ばかりは消されてしまうかもしれません!!」

あびる 「それはこの小説が? それとも作者が?」

望 「怖いこと言わないでください!」

マ太郎 「少なくともこの小説ハ、バットノーベル文学賞にノミネートしたヨ!!」

千里 「……続きまして、バットノーベル経済学賞の受賞者の発表です!!」

望 「またまずい発言をしなければ良いのですが」

奈美 「ただいま〜」

あびる 「あっ、奈美ちゃん」

まとい 「しっ。静かに。発表されます」

ドキドキ

千里 「あべさんです!!」

あびる 「……地味にさっきから平仮名にしてごまかしてるけど、バレバレだよね」

千里 「おめでとうございます! 選考理由は、アベノミクスです!!」

望 「なっ!! ま、またまずい気がします!」

千里 「経済成長、不景気の回復、あらゆるスローガンを掲げたものの、結局効果が見られたのは一部の大手企業だけ。事実日本を支えている中小企業までその蜜は届かない! まさに経済戦略の大転倒!よってバットノーベル経済学賞にふさわしい!」

望 「……もはや皮肉ですね」

千里 「さてさて! 一気にバットノーベル物理学賞、バットノーベル化学賞、バットノーベル生理学・医学賞の受賞者の発表です!!」

・おめでとう! 地球は廻ってたよ!エウドクソスさん!

・おめでとう! 大学の薬品費が半端ないって!

・おめでとう! STAP細胞はあります!

望 「……もう手遅れですね。これは色んなところを敵に回しました」

晴美 「そういえば奈美ちゃん、AKaBane84の緊急収集って何だったの?」

麻菜実 「私は呼ばれなかったけど」

奈美 「実はね、私が主演の映画が撮られることになったの! それで急遽呼ばれたってわけ」

まとい 「どこに需要が」

千里 「みなさま、これにてバットノーベル賞授賞式は終了させていただきます。ご来場、ありがとうございました」

パチパチ

・ ・

あびる 「見たよ、奈美ちゃんが主演の映画」

晴美 「一応、私も」

奈美 「えっ! ど、どうだった⁉︎」

あびる 「……普通かな」

晴美 「うん。普通」

奈美 「普通って言うなぁ!」

ササッ

翔子 「日塔さん!」

美子 「大変よ!! 日塔さんが主演のあの映画が、ある賞に選ばれたの!! ハリウッドよ!」

晴美 「えっ?」

奈美 「本当⁉︎」

美子 「ええ……。だから早くアメリカに行って!! 授賞式でスピーチしてもらうから!」

奈美 「えっ、なんて言おうかな。緊張するなぁ」

千里 「クラスメイトのお祝い事は、私のお祝い事でもある。みんなも一緒に行きましょう!」

マ太郎 「みんなで行くのナ!」

ビューン

可符香 「世界の中心、アメリカです!!」

晴美 「……アメリカに来たら、実写版ドラゴンボールに文句を言ってやろうって決めてたんだ」

千里 「……独立戦争のリーダーを務めましょう。」

奈美 「もう独立戦争は終わってるから⁉︎」

トコトコ

奈美 「じゃあ私は一旦ここで」

あびる 「うん。発表はちゃんと見に行くから」

望 「なんとか知り合いということで、特別席も用意してもらえましたしね」

カエレ 「このアメリカは、私の故郷の、隣接してる国の敵国の同盟国の……」

晴美 「ついでにスーパーマリオの実写版にも文句を……」

5時間後

千里 「……ついに発表ですね。」

あびる 「……奈美ちゃん、ちゃんとスピーチできるかな?」

望 「ええ、きっと大丈夫ですよ。それにしてもうちのクラスから受賞者が出るとは……感銘ですね」

晴美 「あっ、奈美ちゃんだ!」

司会 「さて、発表させてもらいます!今回の受賞者、日塔奈美さんです!」

奈美 「て、テンキュー、ベリーマッチ!!」

晴美 「奈美ちゃんそういえばクラス内順位ビリだったね」

あびる 「……カタコト」

司会 「では! 日塔さんから一言もらいましょう! もちろん、翻訳家がいるので日本語で構いません!」

奈美 「えっと……みなさん、本当にありがとうございます!! 私がこんなに素晴らしい賞をもらえるなんて、とても光栄です。本当に嬉しいです。改めて、ありがとうございました!!」

望 「おめでとうございます! 日塔さん! アカンデミー賞主演女優賞、光栄な賞ですよ!!」

千里 「おめでとう。」

あびる 「おめでとう」

晴美 「おめでとう」

奈美 「みんな、みんなありがとう!! 本当に嬉しい! アカンデミー賞を取れて……ん? アカンデミー賞?」

マ太郎 「アカデミー賞にノミネートされた中デ、ワースト一位を祝うのがこのアカンデミー賞ダヨ!!」

奈美 「そ、そんな馬鹿な⁉︎」

望 「……やっぱり『ワーストランキング』なんて良いものではありませんね」

・ ・

作者 「えっと……みなさん、本当にありがとうございます!! 私がこんなに星をもらえるなんて、とても光栄です。本当に嬉しいです。改めて、ありがとうございました!!」

可符香 「これもワーストの方だったりして?」

奈美 「違うから!! 応援してくれてる皆様のおかげでこんな拙い作品でも星をもらえたんだから、そんなこと言わないでよ!!」
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