『毒キノコという時分が来ると』

文字数 3,069文字

望 「はい、帰ってきました、糸色望です。そして今回は」

可符香 「キノコ狩りです!」

晴美 「えっ、もうすぐ春なのにキノコ狩り?」

可符香 「仕方ないですよ〜これはストックですから!!」

千里 「ストック?」

* *

望 「……さて、野外学習として山にキノコ狩りに来てはみたものの、どのキノコが美味しいのでしょうか? さっぱり分かりませんね」

奈美 「野外学習というよりも、ただ先生がキノコ食べたかっただけじゃん!」

あびる 「……そう言いつつ奈美ちゃんが一番本格的な格好をしてるけど」

望 「あっ、キノコを見つけましたよ!実に美味しそうです!!」

奈美 「先生それダメ!! 毒キノコだよっ⁉︎」

望 「なっ」

晴美 「見た目じゃ全然毒キノコって分からないね」

望 「そ、そんなわけありません!! これは毒キノコなんかじゃないです!」

あびる 「……でも先生、食べ物に関しては奈美ちゃんの前に出る人は」

望 「分かってますよ、そんなこと! しかし信じられません! こんなに見た目からして美味しそうなキノコが毒キノコ? 認められません!!」

まとい 「……まあ世の中には、『人は見かけによらず』という言葉もありますし、見た目では判断できないことなんて毒キノコに限らず山ほどありますよ」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと」

あびる 「……確かに見た目からじゃ判断できないことってある」

望 「と言いますと?」

あびる 「近所に見た目が怖いおじさんがいて、てっきりそっち方面の人かなと思ってたんだけど、お母さんに聞いたらその人警察官で」

望 「そんなわけありません! たとえ警察官だったとしてもそんな怖い人、裏でそういう人たちと関わってるに決まってます! 違法な捜査とかしてるに違いありません!」

晴美 「偏ったことを言うな!!」

望 「ですがこれは間違ってません!」

千里 「毒キノコは見た目がどうであれ毒キノコでしょ!! 逆に言えばどんな禍々しい見た目のキノコでも、毒キノコじゃないなら毒キノコじゃない! 見た目通りじゃないことだってあるわよ!」

望 「……いや、私は認めません」

望 「見た目通りなことのなんたる多いことかっ!! 決して気のせいではないのです!」

・やっぱり頼りなさそうな政治家は頼りない
・やっぱり明らかに怪しい商品は詐欺
・やっぱりやる気のなさそうな冨樫さんは働かない
・やっぱりネガティブそうな久米田先生は生前葬やっちゃう

望 「絶望したぁぁっ!! あらゆるものが見た目通りなことに絶望したぁぁっ!!」

可符香 「そんなことありません! 世の中には見た目通りではないものも多くあります!」

望 「ふ、風浦さん!」

可符香 「例えばいかにも美味しくなさそうな食べ物が食べてみたら意外に美味しかったり、明らかにギャグな見た目の人がめちゃくちゃ泣ける歌を作ったり、『見かけによらず』は多く存在します!!」

あびる 「……受験生が小説書いちゃうのも見かけによらず?」

望 「それは聞かないでください」

可符香 「ああ、なんて素敵な『見かけによらず』たち!!」

・見た目じゃ分からない才能
・見た目じゃ分からない詐欺
・表紙じゃ分からないシリアス展開
・優しく微笑むヒロインの実に重い裏設定
・ポケモンのたまにくる怖い話。可愛い見た目に騙されるな!

晴美 「なんか一部全然素敵じゃない『見かけによらず』があるけど」

望 「……ですが風浦さん、中身というのは必ず見た目に出てきます。性格が暗い人は見た目だけで分かりますし、明らかに幸せそうな人は見た目からして幸せオーラを放ってます」

千里 「……クリスマスのカップルとか?」

望 「く、クリスマス、その言葉を出さないでください!!」

あびる 「そういえば先生、クリスマス嫌いだった」

望 「と、ともかく私は認めませんよ?『見かけによらず』なんて!世の中のあらゆることは見た目通りなのです!」

可符香 「なら先生! あれは毒キノコじゃないってことですよね?」

望 「ええそうです! あんな美味しそうなキノコですから、毒キノコの訳がありません!!」

可符香 「なら先生! ここでそれを食べてみてください!!」

望 「えっ」

可符香 「『見かけによらず』がないと言うなら、それをここで証明してくださいよ! それを食べて」

望 「い、いやそれはちょっと」

可符香 「先生はそんなこともする勇気がないのに、『見かけによらず』なんてないと豪語してたんですか?」

千里 「そうよ!! ちゃんと自分で言ったんだから責任は取りなさい!」

あびる 「……可符香ちゃん、小悪魔だ」

望 「で、でも日塔さん、これは毒キノコなんですよね?」

奈美 「私は嘘は言いません!!」

晴美 「……そういえば奈美ちゃん、最近太った?」

奈美 「え、いや……む、むしろ痩せたよ? すごく痩せた!!」

まとい 「心理学的に言うなら、目が泳いでるのであれは嘘ですね」

奈美 「ちょ⁉︎」

望 「……ともかくこれは毒キノコ。なら食べられませんよ」

千里 「さっきと言ってることが真逆じゃない!! 無理矢理でも食べさせる!」

望 「ちょ、な、食べられません!! そもそも調理されてないじゃないですか!!」

千里 「……なら私がこのキノコを調理します。しばしお待ちを」

奈美 「……本当にあれは毒キノコなのに」

晴美 「でも一度決めたら千里は決断を変えないよ?」

望 「誰か助けてください!!」

あびる 「……自業自得」

千里 「……初めて手料理を人に振るうわね、まあ大丈夫でしょ。」

奈美 「毒キノコだけじゃなく、別の不安も出てきた!!」

千里 「できました! 先生食べてください!」

望 「ひっ、見た目がジャイアンシチューです!!」

千里 「出されたものは文句言わず食べる!!」

グイッ

望 「ぶ、ぐっ、だ、だれか」

千里 「美味しそうな笑顔……作った甲斐があるわね!」

晴美 「えっと千里……目腐ってる?」

バタッ

奈美 「先生が倒れた! やっぱり毒キノコだったんだよ!」

あびる 「……泡がぶくぶく」

千里 「……やっぱり毒キノコだったか。」

奈美 「とりあえず病院に連れて行かないと!!」

千里 「晴美! 先生を背負って病院まで行って!」

晴美 「でも病院までは遠いよ」

千里 「あなたならどうにかなるでしょ⁉︎ 早く!!」

晴美 「分かったよ……」

シュッシュッ

奈美 「晴美ちゃんが高速移動で先生を運んでる⁉︎」

千里 「良かった。これでなんとか先生を助けられる。」

マ太郎 「でもマリア、あれ食べれないって分かってたカラ、すり替えておいたヨ? だから毒キノコで倒れたんじゃないヨ?」

可符香 「それは黙っておく方が賢明だよ、マリアちゃん」

* *

みなさん、長い間待っていただきありがとうございました。お久しぶりです、作者です。相変わらず更新が早かったり遅かったりの不定期更新ですが、それでもこれからも、この絶望先生の二次創作小説を、楽しみに読んでいただけたら嬉しい限りです。

さて、これから始まるのは俗・さよなら絶望先生ならぬ、賊・さよなら絶望先生です!! ぜひ楽しんでいただけると嬉しいなぁ……(徐々に小声)
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