『迷えば大門の見返り柳いと長けれど』

文字数 2,836文字

前巻までのあらすじ

海賊王の座を争う死と隣り合わせの時代へやってきてしまった望。するとそこにロジャースと名乗る謎のおじさんが現れ「お前にこれをやろう」と謎の物体を渡してきた。去り際「それを絶対に手放すな」と強く言われた望だが、なんだか面倒事に巻き込まれてしまったように感じた望は関わるのは危険だとあっさり海へと放り投げてしまった! しかし潮の流れに乗って、港のレストランへ向かっていた望の前へと再び現れたのであった……。

・ ・

可符香 「東京で校外学習です!」

・ ・

望 「……さて、そろそろ時間ですが、みなさん揃ってますか?」

あびる 「……先生、奈美ちゃんがいません」

プルプル

千里 「先生、日塔さんから電話が来ました!!」

望 「変わってください」

ガチャ

望 「……もしもし? 日塔さんですか?」

奈美 「はい! そうです!」

望 「もう集合時間は過ぎてますよ? 今どこにいるのです?」

奈美 「……それが迷子になっちゃって」

望 「近くに何か目印になるようなものはありますか?」

奈美 「えっと、ないと思います。どうやら路地裏に入ってしまったらしいです」

晴美 「……東京の路地裏は本当に複雑だから、そりゃあ迷うよね」

千里 「日塔さん! それは誰にでもある普通のことだから、気にしなくていいわよ!」

奈美 「普通って言うなぁ!」

まとい 「……ところで、迷っているのは彼女だけではありませんよね」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと」

晴美 「……校外学習だからいるに決まってるじゃん」

千里 「日塔さん以外も迷っている? 詳しく教えてくれない?」

まとい 「たとえばこの国の政治。カレーやらなんやら、変なところへ迷い込んでませんか!!」

望 「まあ確かにそれはありますね。世の中、迷ってるものが多過ぎます! 芸人のくせに演技しちゃったり、役者のくせに声優の仕事を奪ったり、一体何がしたいのか分かりません!」

あびる 「芸人のくせに絵本書いちゃったりして批判されたり」

晴美 「……まああれに関しては職業というより性格だし」

望 「世の中、変な方向へ迷い込んだり、方針自体を迷ってる人や事柄が多過ぎます!!」

・たまに暴走するユニクロ社長

・作風が変わる前後の過渡期

・クッパ姫

・Cmon baby! アメリカ!

・僕の小説

・外国で経営してる寿司屋

望 「絶望したっーー!!あらゆるものが迷いに迷いまくってる混沌の時代に絶望したっーー!!」

奈美 「絶望する前に私をどうにかしてよ!!」

あびる 「確かに、迷ってるなあ……って思うことはある」

千里 「たとえば晴美。」

晴美 「えっ」

・ ・

晴美 「どうしようかな……こっちを強気にして、こっちを押し弱めに。あっ、でもこっちが押し強めの方が話の展開的に。うーん……」

・ ・

千里 「で出されたのはまさかの三角関係展開の本。どっちも描きたかったのよね?」

晴美 「ってちょっと⁉︎」

千里 「こちらを読んでいただけるのが一番だと。作者が迷っている、悩んでいるのがすごく伝わります。」

ペラッ

望 「……確かにこれはなかなか迷ってますね。作風も展開も想像以上にブレブレです」

晴美 「なんで千里が持ってるのよ⁉︎」

望 「まあ漫画に関しては、他にも迷ってるなあ……と思う作品はあります。いつの間にか必殺技とか使うようになったテニス漫画とか」

あびる 「仙豆の設定がどんどん万能になっていったり」

晴美 「……ゲームだってRPG作品が途中からいきなりリズムゲーになったり」

望 「……世の中には迷っている作品が多くあります。結果、最初と設定が矛盾してる作品だって多くありますし。政治だってそう、最初に掲げたスローガンと途中から全く別のことをし始めてる始末です!!」

可符香 「でも迷子だって、決して悪いことばかりではありませんよ?」

望 「ふ、風浦さん!」

可符香 「だって先生、考えてもみてください! 迷子って普段一緒にいる人たちとも、普段見ている風景とも、離れてしまうんですよね?」

望 「……ええ、そうですよ」

可符香 「つまり迷子ということは、一瞬でも決められた世界から解放されたということ!! 今まさにあなたは自由なのです!!」

信者 「おおっ!!」

望 「……また信仰集めちゃってますね」

あびる 「……また被害者が」

奈美 「迷子になると解放される? 難しくて分からないや」

カエレ 「普通に電話上から会話できてるぞ? これって作者、普通におかしくないか? おかしくないか!」

作者 「……聞こえません」

晴美 「そういえば、幼いときに祭りで迷子になったときに、屋台のおじさんが同情してくれてタダで私にわたあめをくれたことがあったなぁ……」

奈美 「迷子ってすごい!!」

まとい 「……なんて素晴らしき単純」

可符香 「先生も、迷子と言う名の解放に手を伸ばしてみませんか?」

望 「なっ」

可符香 「こんな多くの生徒の人生をいつも背負って、さぞかしお疲れでしょう! あえて迷子になることで、あらゆる責任から一旦解放されてみては?」

望 「……まあ確かにそうですね。たまには責任から解放されてもいいかもしれません」

マ太郎 「いつも生徒に放任主義じゃないカ」

望 「もういっそのこと、社会から解放されてもいいかもしれません!」

ササッ

千里 「って先生、どこに⁉︎」

ガラッ

霧 「……あっ、先生。お帰り、東京はどうだった?」

望 「小森さん……私は引きこもりになります!!」

霧 「えっ?」

望 「私に引きこもり上手になる方法を教えてください!!」

霧 「せ、先生? 一体どうしたの?」

望 「私は社会から解放されるために、社会の迷子になります!!」

数日後

可符香 「……先生、今日も学校に来ませんね」

千里 「心配だわ。」

晴美 「……みんな忘れてると思うけど、奈美ちゃんも迷子だよ?」

・ ・

ガラッ

霧 「先生……もう戻ってきたら?」

望 「……いいえ、私は社会の迷子ですから、全力で引きこもりになるのです!! そしたらあらゆる責任から解放されます!!」

晴美 「確かに引きこもりは社会の迷子かもしれないけど!!」

マ太郎 「家から出ないのニ、迷子になるわけないダロ」

・ ・

奈美 「た……ただいま」 ボロボロ

可符香 「あっ……奈美ちゃん! 久しぶり!!」

晴美 「何日も来なかったから心配してたんだよ」

可符香 「こんなに帰ってくるのが遅いなんて……普通電車だからですか?」

奈美 「違うから!! 迷子になってたから遅くなったの!」

あびる 「こんな何日も迷子?」
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