『この物語はフィクションです。 しかし、ここには実在します。』

文字数 2,548文字

望 「デカルトは方法的懐疑と言いまして……」

千里 「ちょっと待ってください! これって倫理の授業ですよね? 確か先生は国語の担当教師だったと思うのですが!」

望 「まあそれはさておき」

千里 「スルーするなっ!」

望 「まあデカルトは要するにですね、根拠もないことを先入観で簡単に信じるなということを伝えたくてですね……ん?」

奈美 「どうかしたんですか、先生?」

望 「考えてみると、根拠もないくせに信じてること——山ほどありませんか?」

奈美 「えっ」

望 「うっ、そう言われてみると何故私はこの現代を根拠もなく信用していたのでしょうか!! 怪しいことばかりじゃないですか!」

あびる 「いつもの展開」

望 「根拠もなく信じていたことがたくさん、この世界には溢れています!!」

・過ごせると思ってた青春
・出会えると思ってた運命の人
・年金制度
・信じるものは救われる
・友達100人できるかな?(できない)
・悪いことの次は良いことがある
・スターは内面もスター(挙句クスリや不倫)
・ネットリテラシーは守られている

望 「絶望したぁぁっ! 根拠もなく信じていたことが山ほどあったことに絶望したぁぁっ!」

晴美 「い、言われてみると……」

千里 「晴美?」

晴美 「なんで今まで疑いもせず信じていたのか、分からないことが山ほどある!!」

・〆切(もしかして余裕を持って決められてるのでは?)
・来ると思ってた続編(死期来いよ!)
・夢溢れるオフ会
・SNS上での性別
・アイドルは誰とも付き合ってない(結果博多へ進む)
・漫画で好きなキャラがアニメで理想通りの声になるとは限らない

奈美 「い、言われてみると……」

千里 「日塔さん?」

奈美 「根拠もなく信じてたことがたくさんある!!」

・とある遊園地での飲食価格(ハハッ♩)
・コンビニのデザートはクオリティの割に安いのか??(近所のケーキ屋の方が案外)
・バイキングは結果的にお得なのか?(相撲さんじゃなきゃ元取れないかも)
・抽選で当たるカニのために商品を大量購入する
・ハーゲンダッツはアイスの王様なのか?
・並ぶほどの味なのか?
・通販での今申し込めばなんと……!のくだり

奈美 「考えれば考えるほど、誰も信じられなくなってきたぁぁぁ!!」

千里 「日塔さん!? お、落ち着いて!」

あびる 「言われてみると……」

千里 「ちょ、小節さんまで!?」

あびる 「尻尾があるって思ってた動物に、尻尾って本当にあるの?」

千里 「えっ?」

あびる 「逆に尻尾がないって思ってた動物にも、もしかしたら尻尾があるかも……?」

ギラーン

望 「えっ?」

あびる 「先生の尻尾を見せて!!」

望 「ひぃぃ! 私に尻尾なんて生えてませんから!!」

晴美 「言われてみると……先生がBLに興味がないなんて誰が決めたの? もしかしたらありうるかもしれないじゃん!」

望 「ちょ」

晴美 「先生、実は命先生とアリかな? とか思ってるでしょ!! いやそうに違いない!!」

望 「ひぃぃ!! また別の変態がぁぁ!」

千里 「ちょっと!? 先生もみんなも落ち着いて、お願いだから一旦冷静に……。」

わーわー わーわー

千里 「みんな、落ち着いて……。」

わーわー わーわー

プッツン

千里 「落ち着いてって言ってるでしょうが!!」

うなっ

晴美 「千里がついにキレた!!」

奈美 「み、みんな逃げろおおお!!」

千里 「そ、そうよ。私のクラスメイトがこんな騒がしい人たちのわけがない。優等生ばかりのはず……!」

望 「ど、どうしました、木津さん」

千里 「そっかあ、言われてみると。みんなが私のクラスメイトだってこと、根拠もないのに信じてたなあ……。」

望 「えっ」

千里 「偽物のクラスメイトには天罰を与えてやるっ!!」

ガシッ

望 「ちょ、離し」

ドゴッ

まとい 「きゃぁぁぁ先生っ!?」

千里 「そうよ。言われてみるとクラスメイトにストーカーがいるのもおかしいわね。」

ドゴッ

奈美 「ひぃぃぃぃ! 死にたくなぃ!!」

千里 「言われてみるとクラスメイトにウザいのがいるのもおかしいわね。」

奈美 「別にそれはおかしくないだろ!? ってウザいとか言うなぁ!」

ドゴッ

千里 「みんな、みんな、根拠もなく信じていたクラスメイト……! 私を騙した罪は重いわよ!!」

ガラッ

可符香 「千里ちゃん、ちょっと待ってください!」

千里 「ん? あっ、風浦さん。ちょうどいいところに来たわね……クラスメイトに電波少女がいるのもおかしいと思わない?」

可符香 「わたし的には! クラスメイトにスコップ振り回して殴りにかかってる人の方が疑うべき存在だと思います!」

千里 「えっ?」

望 「そ、その通りです……とりあえずその殺人兵器はしまってください……」

フラフラ

可符香 「生きてたんですね、先生!」

ニコッ

望 「ええ、まあ」

千里 「そ、そんな!? わ、私の方が疑うべき存在だったと言うの……? 言われてみると、根拠もなく私は自分の存在を信じてきた。私は本当にいるの? 私の存在って……!」

望 「大丈夫ですよ、木津さん」

千里 「せ、先生……。」

望 「そもそも人の存在なんて常に不確かなものです。デカルトなんて脳が機械につないである状態さえ考えましたからね。まあ……ですから、要するに。考えるだけ無駄ってことですよ」

千里 「か、かもしれないですけど……!」

望 「それに他がいてこそ己を知るものです。木津さんがたとえ自分を見失っても、私たちみんなが一緒にいれば、それこそが自分の居場所で自分の価値なんです。一人じゃなきゃ、己を見失うことなんてないんです。だから安心してください」

可符香 「先生、久しぶりに良いこと言いましたね!」

望 「一言余計です!」



§ § §




あびる 「結果的には良い話」

マ太郎 「そうカァ?」

晴美 「少なくとも私はこれから〆切を信じなくなった」
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