『いろいろ文化祭が多くてうるさかったでしょう。お気の毒でした。』

文字数 2,880文字

前巻までのあらすじ

七つの球を集めに旅に出た望。しかし道中、怪しい格闘家やら世界征服を企む連中やらに遭遇し、困難を極める。そこに謎のおじさんが現れて『ギャル』というのを連れて来れば、協力してくれると言ってきた。しかし『ギャル』どころか普通の女の子すら苦手な望。まだ自力で球を集めた方が苦労しない。しかしそのおじさんはずっと望にまとわりつき、『ギャル』を連れて来い、連れて来い、と言ってくる。慌てて望は逃げるが、その道中で偶然七つもオレンジ色の物体を拾う。で、現れた神龍。「願いを言え」望は訳も分からず「このおじさんをどうにかしてください!」と叫んでしまった……。こうして望の『安定した暮らし計画』は失敗に終わる。

・ ・

可符香 「文化祭です!」

・ ・

奈美 「また文化祭?」

可符香 「よっぽど作者は文化祭が大好きなんですね!」

あびる 「……いや、作風的に逆じゃない?よっぽど作者は文化祭に憎悪を抱いてる」

晴美 「……まあ、それは仕方ないよね」

望 「……ところでみなさん」

千里 「先生。」

望 「ちゃんと行事、出来てますか?」

奈美 「いや先生のせいで出来てないんですけど⁉︎」

望 「例えばあちらを見てください」

・ ・

生徒A 「ほら、そこっ!ちゃんとやってよ!!」

生徒B 「うるせぇな」

・ ・

望 「同じ行事に向かって、クラスメイトが一丸となって努力する……そんなの理想にしか過ぎないんですよ!!」

奈美 「先生が言っちゃダメなやつだろ⁉︎」

望 「今個性が重要とされてるこの社会では、テンションやモチベーションにも個性が反映されてる人が多くいます! 自分がしたくないならなるべくしない、手を抜く。そんな人が多くいるのも事実!!」

あびる「……今行事に向かって一番やる気がないのは先生なんだけど。」

望 「一つの行事に向かって絆が深まるどころか、やる気のある人とない人が目に見えるようになってますますクラス内の溝は深まるばかりです!!」

千里 「……学校の行事に取り組むのは当たり前のこと!やる気のない人が悪いに決まってる!!」

晴美 「いや、そうとも限らないよ」

千里 「なんでよ!!」

晴美 「……そういうのが苦手な人もいるから。なのに団結しない方が悪いって責めたら、嫌なことを強いてることになるよ?」

奈美 「……確かに行事ってめんどくさいよねえ」

あびる 「そういう話じゃないんだけど……まあ奈美ちゃんはそうでしょう」

望 「決して文化祭だけの話ではありません!!世の中にはテンションや意志の強さの違いによる違和感が多く存在します!」

・神輿を運ぶ際、声を出す人、出さない人がいて盛り上がりが微妙に

・体育祭、バレぬよう教室に戻っている人に舌打ちするガチ勢

・スプラトゥーン終盤でまさかの回線落ち

あびる 「……人それぞれだからモチベーションが違うのも仕方ないけど、かといって努力してる人に対して失礼なこともできないし」

望 「個性を尊重する一方、全体をないがしろにしてはいけない。バランスが難しいところです」

奈美 「そんな厄介な!!絶望したっーー!!個性と全体の……」

望 「人のセリフを取らないでください!!絶望したっーー!!自分のセリフを人に取られたことに絶望したっーー!!」

晴美 「絶望するところが違うでしょ⁉︎」

望 「……そうですね、では改めて」

マ太郎 「そんな何回モ、できるものなのカヨ」

望 「絶望したっーー!!テンションの違いにより溝が生まれる行事および個性と全体のバランスがうまく取れない現代社会に絶望したっーー!!」

奈美 「長いっ!!」

あびる 「……ありなんだ、そういうの」

まとい 「言われてみると確かに溝って、団結する際にしばしば生まれますよね」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと」

奈美 「良かったね!まといちゃん」グスッ

晴美 「なんで泣いてるの?」

望 「……学校だってそうです。普段は仲のいいみなさん、なのに行事が始まるとなると不穏な空気になっていきます!」

あびる 「……まあ、あるよね、そういうの。行事は嫌でもクラスメイトと、もっと関わらざるを得ないから、普段見えないその人の嫌な部分まで見えちゃうし」

望 「要するに行事なんて、絆が深まるどころか溝が深まるだけの災害なのです!!」

可符香 「そんなわけないじゃないですか!」

望 「……風浦さん!」

可符香 「行事のどこが素晴らしいって、つらい壁を乗り越えたあとに団結力が高まるところが素晴らしいんですよ!!その過程で仲が悪くなったとしても、終わったあとは行事が始まる前よりさらに仲が良くなるから、プラマイゼロ、どころかプラスなんです!!よって行事は素敵!」

望 「……たとえそうであったとしても、行事さえなければそもそも仲が悪くなることもないのです!やはり行事など要りません!!」

マ太郎 「どっちが教師デ、どっちが生徒なのカ?」

千里 「……意見が対立するときは、ディベートでっ!!ただし負けた方は私から天罰があります!」

望 「えっ」

千里 「……今から風浦さんの行事賛成派と、先生の行事反対派の討論会を始めます。といっても、みなさん意見は決まってると思うので早速、票を取りたいと思います。」

可符香 「……先生、勝負!!」

望 「……うちの生徒は行事にやる気のない人が多いですから、負けるはずがありません」

千里 「では風浦さんの方、行事賛成の意見と同じ人、手を挙げて!」

シュッ

望 「……手を挙げたのは風浦さんと木津さんだけ。勝ちましたね、この勝負」

千里 「では続きまして、先生の方、行事反対の意見と同じ人、手を挙げて!」

シーン

可符香 「……先生一人ですね!!」

望 「な、なんでですか⁉︎」

奈美 「……私たち、行事にやる気がないので」

カエレ 「個性を尊重するので」

あびる 「多数決に票を投じるのを、放棄します」

望 「なっ」

千里 「……ということで、風浦さんの勝ち、先生の負けですね。」

望 「ちょっと⁉︎ 全体の空気を読んでくださいよ!!投票を放棄するなんて、なんたる冒涜!みなさん、学生ならしっかり学生らしくイベントには参加してください!!」

千里 「黙れ!教師の恥!!」

グサッ

・ ・

マ太郎 「先生ハ、行事反対派じゃなかっタカ?」

あびる「先生、ブレブレだから」

・ ・

千里 「そういえば加賀さん、ずっと手を上げたり下げたりしてたけど……?」

愛 「すいません!すいません!私の様な者があの場で手を挙げるのも申し訳なかったのですが、さすがに先生一人だけじゃ可哀想で……。でも結局手を挙げることのできなかった私は、やっぱり人として未熟!!」

サッ

奈美 「って愛ちゃん⁉︎」

あびる 「……行っちゃったね」
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