『朝、サブでメインを一さじ、すっとごまかしてお母さまが』

文字数 4,556文字

前巻までのあらすじ

あらゆるパラレルワールドが互いに衝突を始め、このままでは全ての世界が消滅してしまうことを知った望。しかし正直、望にはどうでもいいことであった。世界の危機より、自分の危機。未来の危機より、明日の危機。そこに謎のおじさんが現れて「信仰しなさい、さすれば与えられん」謎の言葉を言い聞かしてくる。しかしそのおじさんが無駄にイケボだったがために、わざわざ聞かないのも損かな?と思った望は仕方なく話を聞くことにする。気づけば聞いたこともない国に貯金の三分の一も寄付していた始末……。

・ ・

奈美 「大変だ! 急がないと!!」

望 「……おや、日塔さん。こんなところで何をしてるのです?」

奈美 「あっ、先生! 実はあと少しでAKBの握手会が始まるんです!」

望 「AKB?」

奈美 「私も所属してる、AKaBane84のことですよ!」

望 「ああ。そういえばそうでしたね」

奈美 「せっかく私のためにファンが集まってくれてるのに、寝坊してしまうなんて!!早く行かないと!」

ササッ

まとい 「……あいかわらずのウザさですね」

望 「いたんですか」

まとい 「ええ、ずっと。ところで先生」

望 「なんでしょうか?」

まとい 「気になりませんか?彼女」

望 「と言いますと?」

まとい 「まあ彼女というより、AKaBane84の握手会が、ですね」

望 「ほお、意外ですね! 常月さんがアイドルに興味があったとは!」

まとい 「……違いますよ。どんな手を使って荒稼ぎをしてるのか、それが気になるんです」

望 「言い方が気になりますが、確かにそれは私も興味がありますね。彼女たち、というより総マネージャーがどのようにしてお金を稼いでいるのか、気になります! 行ってみましょう。日塔さんが向かった場所に!」

まとい 「では二人きりで……」

千里 「私も一緒に。」

あびる 「じゃあ私も」

晴美 「ついでだから私も」

マ太郎 「みんないるのナ!」

まとい 「ちっ!」

望 「……まあ人数は増えてしまいましたが、この際仕方ありません。全員で向かいましょう」

トコトコ

晴美 「……すごい人数と熱気! コミケには負けるけど」

あびる 「……あっ、あそこに奈美ちゃんが」

望 「ってその隣にいるのはおとなりさんではありませんかっ⁉︎」

スタッフ 「今なら日塔奈美の握手券を渡してくれれば、サブ特典として、尾吐菜梨との握手もできますよ!!」

ドドッ

晴美 「人が一気に増えたっ⁉︎」

望 「私も買わないと!!」

奈美 「ってこんなに人が並んでくれている⁉︎ ついに私も人気者になったんだ!! 流石私ね!!」

まとい 「なんて単純な女。どう考えてもみんな、彼女を目的に並んでいるわけじゃないのに」

あびる 「まあ、そこが奈美ちゃんの良いところだよ」

晴美 「……にしても先生のお隣さん、人気があるね」

望 「まあ……現在は正確にはお隣さんではないのですが。ええ、彼女は素敵なお方です!人気が出て当然です! 私もいち早く日塔さんの握手券を買わねば!」

千里 「先生?」

望 「なんでしょうか、木津さ」

カチャ

千里 「……分かりますよね? 握手券なんて買った暁にはどうなるか。」

晴美 「ちょ、千里⁉︎」

あびる 「……ついに銃刀法違反」

望 「ひっっ! わ、分かりました! 分かりましたから、それを下げてください!!」

千里 「……なら良し。」

シュッ

まとい 「ところで先生。これって握手券を売るための戦略ですよね?」

望 「……まあ握手券を買わせるためにサブ特典を豪華にした感じはありますね。しかしこれでは」

あびる 「……もはやメインよりサブの方が豪華」

望 「そうです! これじゃあ、メインとサブが入れ替わってるも同然です! これはとてもおかしな話!」

晴美 「みんななんやかんやひどいこと言ってる」

望 「あくまでサブはサブ! メインを引き立てる要素に過ぎません! なのに世の中にはメインよりも重視されるサブのなんたる多いことかっ!」

・CDを音楽聞かないで握手券だけ取って捨てる

・お菓子の味はともかく特典のカードを手に入れるために購入する

・雑誌の中身を読まず付録だけ読む

・9条改正をメインに話してるけど、実はさりげなくやろうとしてる前文改正の方が恐ろしい

・ある落語漫画ではサブであるはずの女子の可愛さが、メインであるはずの会話の内容の良さを超えてしまっている

・サブメニューとして出してたカレーが、メインのラーメンより人気商品になる

望 「絶望したっーー!!もはやサブがメインを超えてしまっている『サブの台頭』に絶望したっーー!!」

奈美 「……大変だった! 疲れた!」

あびる 「あっ、奈美ちゃん」

奈美 「あれっ? みんな何してるの?」

望 「あっ、日塔さんですか。実はですね、今メインとサブの……」

晴美 「わー! わー! わー!」

奈美 「えっ、先生聞こえない」

千里 「……聞かない方が良いわ。」

奈美 「ちょい⁉︎ そう言われた方が気になるじゃん!!」

あびる 「……まあ普通はそうだよね」

奈美 「普通って言うなぁ!」

望 「……って日塔さんがここにいるということは、握手会はもう終わってしまったということですか⁉︎」

奈美 「ええ、終わりましたよ? 先生も私と握手がしたかったんですか〜?」

ニヤニヤ

まとい 「そんなわけないでしょ!!」

可符香 「先生は、奈美ちゃんの握手会に並びたかった一方、結果AKBの悪徳商法に協力してしまうのではと懸念してしまい、悩んでいたのです!」

奈美 「……そういうことか」

望 「ふ、風浦さん!」

晴美 「なんとかごまかせたか」

美子 「私たちの商法が悪徳商法ってこと? そんなわけないでしょ!」

翔子 「お客様第一だし」

麻菜実 「……少なからずの収入源なので訴えられると生きていけない!」

奈美 「続々と!!」

晴美 「続々と人が現れるのも、卒業という名の悪徳商法だよね」

望 「……そう言われてもやはり悪徳商法じゃないですか。特にメインよりサブが豪華戦法はひどいものを感じます」

奈美 「メイン? サブ?」

あびる 「……マックでサブメニュー、何頼む?」

奈美 「もちろんポテト!!」

晴美 「うまくごまかせたか」

美子 「……うーん。これは厄介なクレーマーね、どうする? 翔子?」

翔子 「黙らせるには金を掴ませればいい。味をしめさせれば黙るわ」

美子 「それもそうね。流石翔子、悪どいことを思いつく!」

あびる 「……二人でこそこそ話してる」

望 「人生初のクレームをしてしまいました。今まで不満など持たない清い人間として生きてきたのに」

奈美 「ただ単に言う勇気がなかっただけでしょ⁉︎」

あびる 「……直接言わないで、私たちにはしょっちゅう不満、言うし」

美子 「……先生?」

望 「えっ、はい。なんでしょうか?」

美子 「先生の写真集を出してみませんか?」

望 「なっ」

まとい 「えっ!」

翔子 「きっと売れますよ」

望 「私は写真集なんて出す気はありません!! 写真などなんてハレンチな!」

あびる 「写真がなんでハレンチ」

美子 「でも、先生! サブには先生の純文学小説、『先生失格』をつけますよ?」

まとい 「あの小説をサブ特典につける⁉︎」

望 「……根津さんも常月さんも、何故知ってるのですか⁉︎ それにしても、サブに私の小説をつける? 小説は有名になってほしいとは思ってますが、写真集のサブはちょっと」

翔子 「……サブの方が豪華な『サブの台頭』だね」

望 「えっ……。な、なるほど!! 世の中、サブの方が豪華な方が多いですよね! 分かりました! 私もやはり文豪の卵、有名になりたいです!」

あびる 「先生、うまく丸こまれた」

奈美 「えっ? サブって?」

あびる 「……東進のやけに多い、サブカリキュラム」

奈美 「いやぁぁ!!」

晴美 「またうまくごまかせたか」

美子 「じゃあ先生、早速あちらで写真を撮りましょう。先生は私たちにあとで『先生失格』の原稿をください。印刷しておきますので」

望 「分かりました! なんて素敵な生徒たちなんでしょう!! 感動してしまいました!」

あびる 「……騙されてるのって、基本、気づかないよね」

・ ・

可符香 「そしてついに先生の写真集が学校内で発売されました!!」

ざわざわ

望 「こんなにもたくさんの方がっ! 私の小説にここまで需要があったとは感動です!」

晴美 「よく見れば並んでるの、みんな生徒だけどね」

美子 「糸色望の写真集を販売しています! それに今なら、サブ特典として糸色望先生の自信作、『先生失格』の小説も付きますよ!!」

まとい 「買います、早くください、買いますから!!」

あびる 「私も買う」

霧 「……買うよ」

晴美 「参考になりそうだから、買います」

奈美 「何の参考にするの⁉︎ ……あっ、私も買います!」

芽留 『ネットで批判レビューを書くために買うぞ』 メルメル

望 「こんなに売れるなんて!! 本当に感動です……ん?」

あびる 「写真集、手に入れた」

ポイッ

晴美 「いいネタになりそう!」

ポイッ

奈美 「先生の写真集、つい買っちゃったよ、行列には並ばないと気が済まないんだもん」

ポイッ

千里 「……みんなサブ特典の小説だけ捨ててる。」

望 「なっ! そ、そんな!!」

美子 「まあ結果的には儲かったわけですし」

望 「私は小説が売れると思ってこの事業に乗ったんです!! なのにこんなザマなんて、死んでやる!!」

ササッ

晴美 「あっ、先生!」

可符香 「先生がスーパーに!」

望 「ロープください!!」

店員 「……今ならサブ特典で、ポイントが多く付きますけど?」

望 「いやだぁぁ! サブなんて言葉、聞きたくもない! 私は今日も死ねないのか!」

あびる 「……今日も死なない、でしょ?」

・ ・

マ太郎 「ところでオチが中途半端だけド、これは豪華なサブがついてるカラってことだヨナ!」

晴美 「……残念ながら、サブ特典も付いてないし、かといってメインの質が高いわけでもないよ」

・ ・

千里 「こんなオチ許せるか!! 私が豪華なオチを用意するわ! と言ってもここで披露するには文字数が多すぎるから下にリンクを貼っておくわ! そのリンク先のサイトで爆笑オチが書かれてるから!!」





・ ・

マ太郎 「リンク、貼ってないヨ?」

可符香 「あまりに面白すぎて死人が出ないように、あえてサイトのリンクを消したのです! あえてオチはそのままに、オチの質はデチューンしたままにしたのです!」

奈美 「嘘つけ!! それで本気だろ!」
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