第16話 華やかな監獄

文字数 6,614文字

 (のすり)はキッチンを手伝いながら、孔雀(くじゃく)と食器や食具(カトラリー)の数をチェックしていた。
白鴎(はくおう)は厨房を預かっている料理長であるが、料理に合わせてテーブルクロスや飾り花や食器類を選んでいるのは孔雀(くじゃく)らしい。
「新郎新婦のご希望で、食器は素朴で可愛らしいもの。カンペール焼きがいいと思うの」
言いながら、食器をどんどん出してくる。
果物や花が描かれた、可愛らしいデザイン。
「・・・これかよ・・・」
白鴎(はくおう)が唸った。
孔雀(くじゃく)、可愛いのはいいけど、これで料理が映えるか?」
「その分、お料理をもっと、素朴な田舎風(リュスティック)にして欲しいの・・・。最初のお料理、ステキだけどあれじゃ派手すぎよ。設宴じゃなくって、ちょっと豪華なパーティー風というのがご要望なんだから」
「皿は白が一番なんだけどなあ・・・」
白鴎(はくおう)は試食結果のレポートを確認しながらぶつぶつ言っている。
「それであれだろ?天河様の希望は、寿司と蕎麦。・・・毎回思うんだけどさ、最初からこの調子でずっとフレンチ食ってきて、なんでいきなり寿司と蕎麦なんだよ。バレエ見に来てんのにいきなり関取出てくるようなもんだろうが」
披露宴の料理なんてそんなものだろうが、白鴎(はくおう)のプライドが許さないらしい。
孔雀(くじゃく)お姉様、これもきれい」
(のすり)は棚から可愛らしい花束の描かれた皿を取り出した。
「それもすてきよね!それはリモージュ。そっちは伊万里(いまり)、セラドン。・・・塗り物もあるのよ!これは琉球、これが津軽でこっちが会津・・・」
またまた山のように出て来る。
驚いて見ていると、白鴎(はくおう)が笑った。
孔雀(くじゃく)は収集癖があるんだよ。更に模様替え好きでリフォーム好き。その度に皿だの家具だの買うタイプ。いくつリフォームしたっけ?そもそも総家令が新しくなると、宮廷の内装だのは全部新調する決まりではあるんだけど。宮城が丸ごと、離宮が三つだろ、鳥達の庭園(ガーデン)・・・。その度に、食器だのカーテンだの集めるからな。そのおかげで、現在この仕事に繋がってるわけだけど」
総家令を返上する際には、通例の様に翡翠(ひすい)孔雀(くじゃく)個人に離宮をいくつか下賜しようとしたが、孔雀(くじゃく)は離宮なんて持って行けないからいらない、でも食器は持って行く!と頑張ったらしい。
あれ程、離宮の改築に夢中だった総家令がそれよりもと所望する食器類とは如何(いか)なる品物、と誰もが期待したが、実のところは歴史的に重要な器などではなく、現在設宴で実用している食器と聞き、次期政権の監査委員会に中古の皿なんかいらないと言われて、孔雀が大喜びで買い取った。
リフォーム好きの収集癖有りとは。
「・・・私、学校の修学旅行で故宮に行きました。とてもすてきでした。そっか、あれ孔雀(くじゃく)お姉様のお好みなんですね」
宮殿というから、もっと豪華絢爛(ごうかけんらん)だと思っていたのだ。
あちこちにある威風堂々たる彫刻より、柔らかなペールグリーンや、グリーンブルーの壁紙やカーテンが印象的だった。
最後の皇帝は男性なのに、なんだか柔らかくて優しいお城だと思ったのだ。
年頃の女の子に褒められて孔雀(くじゃく)は嬉しそうに微笑んだ。
「まあ、孔雀(くじゃく)は趣味がいいからな。小さな孔雀(くじゃく)風と言われて宮廷でも人気だったんだよ」
「でも、そういうのって。ほら、浪費家とか言われて叩かれないんですか?昔はどこかの国の王妃様とか、贅沢しすぎて殺されたりしたんでしょう?」
「それがさ。そもそも家令というのは私服を肥やす。白鷹(はくたか)姉上なんて、琥珀(こはく)様から土地つき物件をいくつも下賜されたし。(ふくろう)兄上なんかプラチナや美術品で儲けてた。今までも総家令だって、だいぶいろんなものを皇帝から(むし)り取ってる。で、孔雀(くじゃく)は、と言えば。牧場だの、図書館だの、研究水族館だの牧場を欲しがるから、まさか個人の所有物にはできないから結局、公に還元されちまうわけで利益として戻ってくる。収支決算書出されると、議会でも何も言えないわけだ」
「それにね、リフォームだってね、実家で建材もやってるから、見積安くしてるし。白鴎(はくおう)お兄様のおうちの銀行で、公共リフォーム用商品作って貰って利率低くして貰って借り入れて堅実に返すっていうのでね。だから、国のお財布に負担はかけていないのよ」
「そうなんだよなあ。独占禁止法だろうって、言う向きもあったけど、じゃあ入札にしますかって言っても、孔雀(くじゃく)んちで安く出すしなあ・・・。軍のレーションもだいぶ安くしてただろ。どうなってんだあれ」
「うち中抜きが少ないのよ。配送も自社だし、お弁当にしても、お弁当箱自体も作ってるから」
「中間業者に儲けさせなきゃ、経済回らんわ」
白鴎(はくおう)お兄様んとこのシブ銀、その中間業者や下請けに貸付貸し剥がししてるじゃない」
さすがギルド系らしく、二人で商売の話を初めてしまう。
(のすり)は果物が描かれたティーカップとティーポットを眺めていた。
まるでままごとの食器のように可愛らしい。
そうかこの食器は、本当にあの宮城で使われていたのか。
まさか、こうして今、自分が見ているなんて。
なんとも不思議な気分だった。

 さて、時間は戻る。
(ふくろう)がドーナツを(かじ)っている妹弟子を手招いた。
瑪瑙(めのう)帝の住まう離宮での勤務が長く、それほどこの総家令室に思い入れはないが、皇帝が変わり、総家令が変われば、城の内装を変えるのが通例。
自分もまたそれに従って改装したものの、ステンレスの壁と床にしたおかけでとても異質な部屋となり、死神というあだ名をもじって死体安置室(モルグ)揶揄(やゆ)されたものだ。
末の妹弟子は、ドーナツを詰め込んだ口の周りの砂糖を舐めながら近づいて来て、礼をした。
さすがに白鷹(はくたか)折檻(せっかん)されながら仕込まれただけはあり、例え泣きすぎて目が大福のように腫れていようとも、口の周りが砂糖だらけで今にも蟻が寄ってきそうであろうとも、非常に優雅な礼である。
冗談にしか思えないが。
しかし、これは現実。この末の妹は総家令になった。
この度の不祥事の差し替えで、雉鳩(きじばと)金糸雀(カナリア)を総家令に、と進言しても、翡翠(ひすい)は諾と言わない。それどころか、否と来た。
一見あの物腰柔らかで繊細そうな皇帝は、全く頑固な一面を見せたのだ。
(とお)で召し上げ、今、この妹弟子は十五 。
家令の五年というのは、驚くほど大きい。
確かに、家令としてのスペックは備えている。
五年でここまで仕上げたのは、白鷹(はくたか)真鶴(まづる)の指導の賜物(たまもの)であろう。
白鷹(はくたか)にどれだけ扱かれてきたのかは想像に難くないが。
何より、祭礼でも見事に舞い(うた)った。
祭礼は神に捧げられる歌で、例えれば、グラスに水を張って指で演奏する、グラスハープのような音域である。
驚くほど美しく、まろやかに響く孔雀の声は、あれはもう人間ではない。
手足に枷ほどに付けられた白銀(プラチナ)の鈴の輪も、驚くほど重い鮮やかな衣装も、まるで羽衣とばかりに舞う。
神さびて、とはこの事ね。と見ていた白鷹(はくたか)が評した。
そもそも神官にしようとして白鷹(はくたか)が目をつけたのだから、才能はあるのだろう。
そして、孔雀(くじゃく)天眼(てんがん)と言われる、特殊な素材体らしい。
王族の内に龍現(りゅうげん)と言われる存在がいるように。
聖堂(ヴァルハラ)派の自分ではわからないが、神殿(オリュンポス)で神職にある(はいたか)金糸雀(カナリア)が息を飲んでいたから、それだけの逸材ではあるのだろう。
現在では白鷹(はくおう)のみであった神官長の資格まであるという。
あの舞台での様子が嘘のように、今は(からす)よろしく真っ黒の家令服を着て、先述のように口の周りに砂糖をつけて、目を腫らしているわけだが。
金糸雀が悪ふざけで、孔雀(くじゃく)を売られた村娘風にしてみたと言って髪を編んでスカーフで頬かむりにすると兄弟子姉弟子が大笑い。
「おら、うちさ帰りてぇだって、言ってみろ」等とからかわれ、また泣いていた。
全く、あの連中が居ては話になるものでは無い。
(ふくろう)は、末の妹弟子を自分が使用していたままの総家令執務室に連れて来て話す事にした。
変わった部屋で、全面ステンレス張り。
厨房か解剖室のような設えだと孔雀(くじゃく)は物珍しそうにしていた。
「お前、所属は海軍(ネイビー)だな。直属の上司と階級は?」
「・・・真鶴(まづる)お姉様の下におりました。サブルテナンです」
「まだそこか・・・」
心残りなのは、軍歴が足りない。
十五で尉官(いかん)というとんでもない話であるが、家令ならば当然。
家令は所謂(いわゆる)将校(しょうこう)クラスからのスタートではある。
ここから積み上げて行くしかないのだが、巫女総家令(みこかれい)となると、神殿(オリュンポス)での祭礼も勤め上げねばならない。
なかなか激務になる。
これでは、自分が悠々自適に遊んで過ごす日々はさらに遠い。
(ふくろう)はため息をついて、話題を変えた。
孔雀(くじゃく)。これは決定した事だ。お前の意思とか感情とか嗜好とか体調とか、もうそういうものは一切考慮されない。皇帝が望む以上、お前は総家令だ」
観念しろと言うしかない。
「我々は皇帝の一番近くに(はべ)らねばならぬ。その為だったら、お前は何でもしなければならないし、兄弟達も何でもするだろう。それが自分達を守る為だから」
そう言われて、孔雀(くじゃく)は頷いた。
白鷹(はくたか)が骨の髄まで女家令にと心掛けて育てたのだ。
理解できぬはずはない。
可哀想だが、これでこの小娘はきっぱりと子供時代と決別しなければならない。
兄弟子がいて姉弟子がいる以上いつまでも妹分と甘えてはおれるだろうが、家令の人生が甘やかであってはならない。
よし、と(ふくろう)は頷いた。
孔雀(くじゃく)。総家令が変わると、城の内装や調度を新しくする。まずは好きにしなさい。・・・それから、お前に渡さなければならないものがある」
デスクの引き出しごと抜いて、鍵の束を見せる。
(ふくろう)お兄様、何の鍵ですか・・・?」
「形式的なもので、全てを実際に使った事はないが。この城の全ての扉の鍵だ」
確かに、だいぶ古い鍵もあるようだ。
「まあ、それはいい。一番にお前に渡さなければならないのはこれ」
鍵の束にある一番小さな真鍮(しんちゅう)の可愛らしい鍵だった。
彼は隣の私室に向かうと、そこは落ち着いたモーブ色の壁紙やカーテンであった。
彼は鍵を摘むと、(うるし)塗りのチェストに向かった。
棚だと思ったが、実は扉だったらしい。
真鍮(しんちゅう)の鍵を回すと、軽い金属音を立てて、鍵が開いた。
小さな箪笥(たんす)の中のような、納戸(なんど)のような部屋だった。
「・・・秘密基地?」
孔雀(くじゃく)が歓声を上げた。
真ん中に、小さな椅子と、木の箱があった。
「そうだな。秘密基地に宝箱だ。・・・開けてみろ」
宝箱というよりよく見ると、軍で使う爆薬を保管する箱だ。
(ふくろう)が手頃な箱だと持ってきたのだろう。
蓋を開けると、本が何冊も入っていた。
装丁も色もそれぞれで、だいぶ古い物もある。
「今までの総家令達の日記だ。全部ある」
「・・・本当にあるの?」
そのようなものがあると噂に聞いたころはある。
「ひとつの王の代が終わると、史誌の編纂(へんさん)が始まる。これから、俺と王立司書長の木ノ葉梟(このはづく)とお前とすり合わせをしながらまとめることになる。それは、残せる史実。で、これは、総家令達が自分の見た事だけを書いた物」
本ではなく、個人的なダイアリー。だから、意匠も様々なのか。
「まあ、いわゆる閻魔(えんま)帳だな。これをどうするかは今までそうだったようにお前に任せる。まあだいぶ古いしな。今までの総家令も全部読んだかどうかは知らん」
梟はそう言った。
「この椅子は総家令のどなたが置いたかはわからんけれども、あったから使っていた。小さくて腰が痛くなるけど、新しいものを持ってくるのも面倒だったしな。新しくするなり好きにしなさい」
だいぶ色あせているが、もとは蜂蜜色に合わせたキルトが張られた椅子だったようだ。
よく見ると、小さな雛菊(ひなぎく)の形に縫い込められたパッチワークだ。
古いけれど、丁寧に作ったのが分かる。
ふと孔雀(くじゃく)はその足元の色が変わっている事に気づいた。
(ふくろう)お兄様、ここだけ床、剥がれてる」
板張りの表面が削れているのだ。
「・・・・そうなんだよ。そのうちお前もわかるさ」
(ふくろう)はそう言うと笑った。
そもそも離宮の多い王朝である。
(さかのぼ)れば、即位した王が居する場所を首都として周囲に都市が栄えたという歴史がある。
時代や情勢によって居住する城を増やし、それが今では離宮としてあちこちに残っている。
宮殿(パレス)荘園(シャトー)要塞(フォート)
今ではそれぞれに呼称が違うが、退位した皇帝がその家族と住んだり、または総家令、継室であったりと様々だが、そうやって使われてきた。
離宮とは呼べないまでも小規模の邸宅はいくつもあるから、それを総家令や継室に下賜する例も多い。
白鷹(はくたか)も下賜されて三箇所程所有していた。
その中の一つの湖の近くの金蘭閣(きんらんかく)と呼ばれる邸宅は、家令達が使用できる別邸でもあった。
ガーデンも元は、大昔、蛍石(ほたるいし)帝という女皇帝が総家令と子供と使っていた離宮。
何代か後の皇女の持ち物であったのを、家令の教育機関として解放されたらしい。
宮城は、八角形をしている事から鼈甲(ベっこう)宮と呼ばれる王の居室がある建物を中央として、前方にある扇状の建物が外廷とされる。
そこは皇帝や廷臣が一同に会する謁見場や式典、祭礼や儀典を行う大広間、元老院や議会やギルド委員が集まる議会場や、外交や設宴で使われる迎賓室がある。
後宮を含む内廷は、現在五棟あり、鼈甲宮と放射状に繋がり、また水晶回廊という美しい彫刻が施された回廊でそれぞれの宮に繋がっている。
螺鈿(らでん)宮、象牙(ぞうげ)宮、珊瑚(さんご)宮、花石膏(はなせっこう)宮、硅化木(けいかぼく)宮。
宮は継室や皇太子、皇女達が生活する宮であるが、今現在は、正室が螺鈿(らでん)宮を(たまわ)り、成人後、皇太子が象牙(ぞうげ)宮を与えられる事になっていた。
亡くなった二妃の花石膏(はなせっこう)宮に第二太子、二妃の死後に迎えられた三妃が皇女と住むのが珊瑚(さんご)宮。硅化木(けいかぼく)宮は現在は使われていない。
正式に城に上がるまでに宮城にまともに足を踏み入れた事のない孔雀としたら、広大な迷路のようなもの。
(ふくろう)孔雀(くじゃく)に図面を見せて説明をしていた。
「そもそも現在の宮城の形になったのは、七代前の緑柱(りょくちゅう)帝の時代だ。総家令の火喰鳥(ひくいどり)姉上がこうしたようだな。さて。我々が今いるのは、ここ。中心の鼈甲(べっこう)宮だな。そして放射状にこうそれぞれ建物がある。・・・何でこんな形なんだと思う?」
孔雀(くじゃく)は兄弟子を見上げた。
「・・・(ふくろう)お兄様、私、こういう建物、見た事ある」
「ほう、なんだ?」
「監獄」
このチビ助の知識を対象と照らし合わせる洞察力と観察眼は確かになかなかのものだ。
「・・・そう。そもそも監視するための建物なんだよ。中央に人がいれば、見渡しやすい。火喰鳥(ひくいどり)姉上は、改革を推し進めた方で、当時反乱も動乱も多かった。その度に粛清(しゅくせい)を繰り返した・・・。まあ、白鷹(はくたか)姉上の強力版みたいなもんだろ」
軽く言うが、なんとも剣呑。
「後宮のお妃様は花、女官は蝶だと聞いていたけれど・・・」
まさにその通りで、妃達は花の名前を授かり、女官も高位五役の者は蝶の名前を賜る。
「そうだな。家令は鳥、女官は蝶。女官長を筆頭に、揚羽(あげは)紋白(もんしろ)小灰(しじみ)(まだら)(せせり)。・・・まあこれは、部長、課長みたいなもんだな」
当然知ってるか、と妹弟子を見た。
白鷹(はくたか)の指示で、金糸雀(カナリア)緋連雀(ひれんじゃく)孔雀(くじゃく)は女官試験を受験し合格して官位のみ授与されてる。
さらに言えば、恐ろしい事に、金糸雀(カナリア)は、殿試と言われる官吏登用試験にも合格しているのだ。
四年に一度開かれる事と、オリンピックより困難と言われているから、五輪試験等と揶揄されている。
年によりムラはあるが、毎回化け物のように頭脳明晰な者のみ合格する。
こちらも、金糸雀は職務は辞退している。
「主席が状元(じょうげん)、二位が榜眼(ぼうがん)、三位が探花(たんか)。金糸雀お姉様は、二位だったのよね」
そう、と(ふくろう)は頷いた。
「繰り上がりはないから、その年の試験の二位は空席のままだな」
外宮で活躍するのは官吏達、内廷は女官達。
どちらも高位の者しか、鼈甲(べっこう)宮に出入りは出来ない。
だが、家令は宮廷のどこでも出入り自由なのだ。
後宮と言ってもハーレムとは違う。サロンに近いので、昔は、華やかなものだった、と(ふくろう)は言った。
「近くは琥珀(こはく)様の父上の黒曜(こくよう)様の時代だな。ご継室も公式寵姫(こうしきちょうき)も多かったから、まあいろいろあったけど、華やかではあったよ」
公式寵姫の三人のうちの一人が、緋連雀(ひれんじゃく)の祖母であり、今は西の修道院長である巫女愛紗(みこあいさ)だ。
美貌で知られる緋連雀(ひれんじゃく)やその母の猩々朱鷺(しょうじょうとき)よりも美しかったそうだ。
緋連雀(ひれんじゃく)お姉様より、きれいだったってほんと?」
そりゃあもう、と(ふくろう)が頷いた。
巫女愛紗(みこあいさ)姉上が公式寵姫でいらした時、同じ頃、戴勝(やつがしら)姉上というのもいらしてな。それもまた美しい方だった。きれいどころの継室や女官が尻込みしたほどだ。・・・まあ女家令だから、どっちも怪獣だけどな」
最後の方は小声になっている。
孔雀(くじゃく)は、当時の華やかだったという後宮に想いを馳せた。
そんな夢のような女達のいるお城が、監獄だなんて。なんと悪趣味なことか。
ショックというよりも悲しかった。

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登場人物紹介

⁂孔雀《くじゃく》  宮廷家令

十歳で問答無用で宮廷家令に召し上げられる。元は継室候補群十一家のうちの棕梠家の生まれ。(実績が低いので宮廷での信用は低い)。 本名は棕梠 杏花春雨《しゅろ きょうかしゅんう》。

皇帝である翡翠帝により、十五歳で宮宰である総家令を賜る。

実家は、ギルド筋と言われる商業経済活動を生業とする立場にある。砂糖商から身を起こし現在は製菓業。異種多種経営で建築資材、水産加工品、食品流通等様々であるが、今も昔もカステラが一番有名。通称カエルマーク。

国を超えて経済活動をするギルド筋の人間には珍しくないが、どこかで外国の血が混ざっていて、青菫色の瞳をしている。

棕梠家は双子が多く生まれる家で、孔雀はいわゆるバニシングツイン(周産期で双子が一人になってしまう。生き残り)。

その場合、名前を二人分つけるという習慣があり、杏花・春雨という変わった名前になっている。

海軍所属。十二歳から軍属に就く。

金糸雀、緋連雀と共に女官試験にパスしているので、宮廷では三人官女と呼ばれている。(陰ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)。

小さな頃から軍で働いていたので、自国ではヒヨコちゃんやフラッフィー等と呼ばれていたが、後に悪魔の王《ルシファー》という渾名で敵国から認識されるようになる。

神殿の神祇官。大神官になれる素養があるとされる。

異能を持つ天眼(結構いる)の生まれ。

個性の強い大人に振り回されて奮闘中。

実用性のみの特技はいろいろあるが、マグロの解体が出来る。

頑健な者ばかりの他の家令より多少虚弱でよく寝込む。

⁂金糸雀《カナリア》  宮廷家令

母親が女家令の青鷺《あおさぎ》。父親が梟《ふくろう》。生まれながらの宮廷家令の身分。

海外の寄宿舎育ちで、幼少から天才少女と誉高く、家令の身分ながら、官僚試験の殿試を二位である榜眼《ぼうがん》でパスしている。また女官試験もパスしているので、孔雀、緋連雀と共に三人官女と呼ばれている。(裏ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)

軍事法廷専門の弁護士。

陸軍所属。十ニ羽の五色鶸《トゥェルブ・ゴールドフィンチ》部隊を率いる。

渾名は、人食いワニ《マンイーター》。

宮廷では、報道官を務め、また後宮内の服飾の管理、軍の装備品の開発を担当している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

ボウルルームダンスのチャンピオン保持者であり、アスリートタイプ。

真鶴に唆されて、白鴎と一ヶ月だけ結婚していた。結婚生活は正味十日程度。

白鴎の浮気に激昂して、白鴎を半殺しにして病院送りにして、一人で新婚旅行を楽しみ現地でデートクラブを経営して荒稼ぎしていた。

結婚式の準備と離婚のお詫び行脚を丸投げされた孔雀から恨まれている。

⁂緋連雀《ひれんじゃく》 宮廷家令

母親が女家令の生まれながらの宮廷家令の身分。三代続く女家令。

祖母は大戦の折に戦歴を称えられ、当時の黒曜帝の公式寵姫でもあった美貌の女家令、巫女愛紗《みこあいさ》。

母親は、アカデミー長の猩々朱鷺《しょうじょうとき》。

宮廷で育った為、自他共に認める美貌と教養を鼻にかけている節があり、「宮廷育ちの根性曲がり」と陰口を叩かれている。

少女の頃から宮廷画家であり人間国宝の画聖・淡雪を師匠に日本画を修練し、雅号を持つ逸材。

宮廷に関わる男を手玉に取り一財産築きつつある。

孔雀、金糸雀と共に、女官試験もパスしているので、三人官女とも呼ばれる。(裏では、ゴーゴン姉妹と揶揄されている)

海軍所属の出世頭。渾名は、火喰蜥蜴《サラマンダー》。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。

バレエのエトワールであり、招かれて海外公演もこなす。

第二太子の天河曰く、「殺し屋のようなオデット姫」。

外見は華やかな美貌であるが、中身は中年男性に寄りがちな食生活と生活態度であり、軍隊の猛者がドン引く程の下ネタが得意。

⁂白鷹《はくたか》   宮廷家令

翡翠帝の母親である琥珀女皇帝の総家令であった。

現在は離宮で琥珀のもとに仕えているが、宮廷での影響力は未だ健在。

若き時代、皇女であった琥珀と共に大戦の前線を駆け抜けた強者であり、大戦で多くの家令が戦死した中で、数少ない生き残り。王族のうちでも皇統下位であった琥珀の帝位簒奪に尽力した。

後進に対して教育熱心であるが、性格は非常に自分勝手で激しいものがある。

大戦当時の神殿の神官長でもあった王族に、弟弟子である大鷲《おおわし》が監禁されていたのを不服に、報復の為に神殿を焼き討ちした過去があり恐れられている。

人肉を屠るダキニ、人肉を喰らうダキニと呼ばれている。

子供の孔雀に目をつけて、問答無用で召し上げた。

現在も家令達を統率している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

⁂梟《ふくろう》   宮廷家令

翡翠の叔父、琥珀の弟に当たる瑪瑙帝の総家令。

白鷹と共に、孔雀を宮廷家令に召し上げた。

金糸雀の実父であり、青鷺の元夫。

大戦の折に、若くして従軍した生き残り。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

武闘派の白鷹に対して、梟は陰険な策謀家で知られていて、宮廷ではその情報を掌握して恐れられている。

渾名は死神。

⁂雉鳩《きじばと》    宮廷家令

父親が王族、母親が琥珀帝の父親である黒曜帝の総家令の白雁《はくがん》と黒曜帝の皇妹の娘。

宮廷では緋連雀と共に美貌を知られている。ウェストは緋連雀より細い。

アカデミーで医師の資格を取っているが精神科医で臨床経験はない。

海軍所属。渾名は大海蛇《シーサーペント》。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

書道の大家。

本名 羽黒山 稼頭男《はぐろやま かずお》

自分の美意識に合わず、本名を隠したがる。


⁂白鴎《はくおう》    宮廷家令

ギルド筋出身。金融業を生業とする、ギルド長を務める百目木《どうめき》家の次男坊。

金融、マスコミ、宗教関係は正室、継室共に入宮は出来ない規則があり、継室候補群ではない。

海外に留学中に己の悪徳の致すところで勾留の憂き目に遭い、父親が梟に泣きつき、裁判にて無罪となる。

家令にする事を条件とされていた為に、放免後そのまま宮廷家令の身分となる。

陸軍所属。作戦中に部隊がほぼ壊滅状態となり、軍属から離れている。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

真鶴に唆されて、短期間だが金糸雀と結婚していたが、すぐに離婚。

金糸雀に半殺しにされて入院した経験がある。

留学中に伝統ある料理学校と三ツ星シェフの元で修行をしたオーベルジュでの勤務の経験もあるシェフでもある。

本名 百目木 円《どうめき まどか》


⁂大嘴《おおはし》   宮廷家令

聖堂《ヴァルハラ》の教皇座を出している家柄の出身の三男坊。

大嘴を家令にする事を条件に、梟によって、議会に置いて大戦で失われた大聖堂の再建予算案が通った。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

付き合いがよく、上の世代に育児放棄されつつも孔雀と燕とガーデンで自活した経験がある。

翡翠の第二太子である天河《てんが》と共に、一時海外で共に生活をしていた。後に正式な侍従となる。

本名 英 三郎《はなぶさ さぶろう》

⁂燕《つばめ》   宮廷家令

宮廷家令。

母親が女家令であり梟の実妹の木ノ葉梟《このはづく》。

宮廷育ちで、幼い頃から宮廷で使い走りをしていた。

家令の教育期間であるガーデンに行った途端に、上の世代から育児放棄されて孔雀と大嘴と自活する。

実母も、周りの姉弟子兄弟子も強烈な為、家令の中でもマイペースな孔雀と大嘴との擬似家庭を結構気に入っていた。

⌘翡翠《ひすい》   王族・皇帝

琥珀女皇帝と継室であった椿《つばき》との間の第二太子。

叔父の瑪瑙の跡を継いで皇帝となる。

琥珀の時代の皇帝であった長兄の真珠帝が背信罪となり、琥珀帝と当時の総家令の白鷹により、侍従であった家令の川蝉《かわせみ》と共に、討伐の命を受けた。

アカデミーでドクターの資格を修めたが、臨床の経験はない。

王族の慣例に則り、十五で婚姻。正室である元老院筋の芙蓉《ふよう》皇后。第二妃として、ギルド筋の継室の木蓮《もくれん》、三妃として、議員筋の紅小百合《紅小百合》がいる。

それぞれの后妃との間に、皇太子の藍晶《らんしょう》、第二太子の天河《てんが》、皇女の紅水晶がいる。


孔雀を総家令に任命した。

孔雀の若さに注目した宮廷の人間から、特殊な性癖の持ち主なのかと噂される。

半分、妹である真鶴、翠玉皇女への当て付けで孔雀を総家令に任命して、伽に招いた。

残り半分の、都合の人事としての総家令任命であったが、徐々に孔雀との間に真摯な関係を結ぶようになる。

人々から愛隣王という称号で呼ばれるようになる。

外見の物腰が柔らかで繊細に見えるが、内面は結構雑

母親である琥珀にそもそもあまり親近感はない。

⌘藍晶《らんしょう》   王族・皇太子

翡翠と、芙蓉皇后の間の皇太子。

母が元老院筋の大貴族の出なので、元老院派の支持も篤く、またリベラル派でもあり若手議員からも信奉されている。

生来の貴公子であり、国内外からも人気がある。

社交界の華であり、数多くの浮名を流しているがそれもまた人気。

第一子、皇太子が後継とは限らない王朝において、琥珀帝によって生まれながらに皇位を約束された「幸福な王子」。

本来は十代半ばで婚姻を済ませているはずだが、不服としていたが孔雀により延期となり、また宮宰としてたち働く孔雀を、気の毒に思いながらも都合のよい総家令として満足している。

⌘天河《てんが》    王族・第二太子

翡翠と二妃・木蓮の間の第二太子。母親がギルド筋であり、特殊な案件で早逝した為、宮廷では冷遇されていた。

アカデミーで、宇宙物理学を専攻して、研究と共に教鞭にも立っている。

母親の死後、一時期、ギルド長を辞した祖母と、アカデミー教授であった祖父と共に海外で暮らしていた。

大嘴とは兄弟のように育つ、遊び仲間でもある。

少年の頃、孔雀を気に入り、母親である二妃と翡翠の侍従であった川蝉が宮廷に招こうとしていたが、孔雀が家令となり、総家令として宮廷に仕える事になったのを不服に思っていて、原因であり無神経な言動をする梟を恨んでいる。

王族に見られる、異能の龍現の生まれとされるが特に何か特別な才能は見られない。

父親である翡翠と逆で、見た目は鷹揚だが、中身が神経質なところがある。


母親が亡くなった宮城から距離を取って成長し、更に孔雀が総家令になった事で更に足が遠のいていたがアカデミーで問題行動を度々起こしていたが、孔雀が歩み寄った事で、徐々に宮廷や家令達と関わるようになる。

浮世離れたした人間の多い宮廷においては数少ない常識人であり、その点から苦労性である。

⁂鵟《のすり》    宮廷家令

本名・篠山 茜《しのやま あかね》。高校生。母親と母親の夫、その妹と暮らしていた。実父は死亡。家庭環境としては恵まれたものではなかった。

父方の曽祖父が宮廷家令であるとの事で、スカウトされ、了承する。

戸惑いながらも、少しずつ家令としての生活に希望と自意識を見出す。

家令としての孔雀に興味を持ち、あれこれと物語を聞かされる事になる。

⁂黄鶲《きびたき》    宮廷家令

川蝉《かわせみ》の妻であり、尉鶲《じょうびたき》の実母。

翡翠により宮廷の終身典医としての地位を与えられている。

二妃が死亡し、他の同世代の家令達が宮城から放逐された時も、終身典医の地位の為に守られた。

アカデミーの医局に勤めるドクターでもある。

前線で医療行為を行うNPO法人も運営している。

趣味は保護猫の去勢。

若かりし頃に一時期、翡翠と関係があった。

宮廷で、青鷺《あおさぎ》、鷂《はいたか》、猩々朱鷺《しょうじょうとき》、木ノ葉梟《このはずく》と共に、妖精《フェアリー》と呼ばれた世代。陰では小鬼《ゴブリン》と揶揄されていた。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

⌘芙蓉《ふよう》   王族・皇后

 元老院筋の大貴族から入宮した翡翠の正室、皇后。

皇太子である藍晶の母。

後宮の螺鈿《らでん》宮の主。

以前は青鷺が侍従として仕えていた。


前元老院長の親族であり、養女と言う形での入宮であったが、実は、真珠帝と皇后出会った薔薇《そうび》との娘である碧玉公主。

⁂青鷺《あおさぎ》   宮廷家令

金糸雀の実母、梟の元妻。

宮廷で最も思慮深く上品で教養のある女家令と言われている。

芙蓉皇后の侍従として仕えていた。

二妃が亡くなった際、不手際を咎められて白鷹から宮城から放逐されたうちの一人。

孔雀が総家令に就任した際に、恩赦として復位を賜ったが、以来、宮城には戻っていない。

海兵隊所属。

現在、海兵隊の責任者として前線に勤務している。

外見も物事も淑やかなのだが、やはり凶暴な面があり、家令達からはお上品機雷と呼ばれている。

渾名はワイバーン。

黄鶲、猩々朱鷺、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

⁂鷂《はいたか》    宮廷家令

神殿《オリュンポス》の神祇官。

陸軍所属。

父親が大戦で戦死した家令の青鵐《あおじ》。母親が西の副修道院長。

聖堂《ヴァルハラ》の元枢機卿(大嘴の長兄)と深い中になり、問題となった為に現在、海外の機関に出向中、と言う事になっている。

二妃が亡くなった際に、責任を問われて城から放逐された一人。

黄鶲、青鷺、猩々朱鷺、木ノ葉梟と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

真珠帝の公式寵姫でもあった。

⁂瑠璃鶲《るりびたき》   宮廷家令

翡翠の祖父にあたる黒曜帝の総家令代理を務めた。

黒曜帝が退位後は、宮城から離れアカデミーにて研究の日々に戻った。

元アカデミー長。現在は医聖の称号を得て、アカデミーの精神的支柱。

⁂猩々朱鷺《しょうじょうとき》 宮廷家令

現アカデミー長。美貌で知られる女家令。

母親は巫女秋沙であり、緋連雀は娘。

母親が黒曜帝の公式寵姫であった事から、猩々朱鷺はその娘ではないかと言われている。

(女家令から生まれた者は生まれながらに家令の身分なので、父親の存在は不問でありあまり頓着されない)

陸軍所属。渾名はワイバーン。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。


かつて翡翠の第二妃であった木蓮付きであったが、彼女の死の責任を追及されて宮城から放逐された世代の1人。

後、アカデミーで天河を支えた。


真珠帝と大鷲総家令の時代に宮廷で、青鷺、黄鶲、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

大嘴以上の大喰らいである。

⁂木ノ葉梟《このはずく》 宮廷家令

梟の実妹。

王立図書文書館統括司書。

翡翠の二妃の死によって責任を問われて宮城から放逐された世代の末妹。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

燕の実母。

白鷹所有の別荘で燕を産んだ。

家令には珍しく小柄だが、1番血の気が多く、小型爆弾と呼ばれている。


真珠帝と大鷲総家令の時代に、青鷺、黄鶲、猩々朱鷺、鷂と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

⁂鸚鵡《おうむ》 宮廷家令

本名、五百旗頭《いおきべ》 綾《あや》。

元は宮廷近衛兵、禁軍である軍閥の生まれ。母親が前女官長であったので、姉である現女官長と、白鷹の離宮に出入りを許されていた。真鶴のファン。真鶴が家令の身分に処される時に自らも家令になってしまった。

アカデミーの医学部出身で、茉莉のもとで東洋医学を納めた。

真鶴の為に家政学部も通信で卒業。


現在、前線の野戦病院勤務。

⁂川蝉《かわせみ》  宮廷家令

翡翠の元侍従。離宮に移った瑪瑙帝と梟総家令の時代、当時皇太子であった翡翠と宮城に残り、総家令代理を務めた。

翡翠と共に真珠帝追討の指揮を執った。

ニ妃の死の責任を負い、宮城を放逐された世代。軍中央《セントラル》所属であったが軍属、更に聖堂《ヴァルハラ》の司祭の立場も解かれた。

家令の特殊運用組織であるエトピリカに出向し海外での勤務に当たる。


⁂真鶴《まづる》  宮廷家令

美貌と知性が抜群で、人を惹きつける魅力があり本人もそれは十分自覚している。

なんでもできるし、なんでもやる。

女神のような、または悪魔のようなと評される。

面倒見が良く、弟妹弟子からも慕われている。

人類に貢献する程の研究《ナンバリング》を多数所有。

アカデミー特別委員の1人。

海軍所属。演習で人喰い羆を仕留めた事から、渾名は羆殺し、レディ・タイガー。

神殿《オリュンポス》の神祇官と聖堂《ヴァルハラ》の司祭どちらも務める。


本来は琥珀帝が離宮で産んだ最後の娘であり、翠玉皇女の身分であった。

後見人であった長兄の真珠帝が背信で処された煽りをくって、家令の身分から家令となる。

家令の生活を本人は割と気に入っている。


⁑茉莉《まつり》  

家令の父親とそうではない母親を持ち、家令にはならない事を決めた"蝙蝠"《こうもり》と呼ばれる存在。

家令名は、千鳥《ちどり》。

父親は大戦の生き残りで戦後復興に尽力した唐丸《とうまる》。母親は貴族筋の女官で琥珀帝に仕えた。

翡翠の友人。

アカデミーで東洋医学を研究して学位を取り、教育に力を入れている。鸚鵡も教え子の一人。

家令と反目する軍中央《セントラル》に所属している。

⁂尉鶲《じょうびたき》 宮廷家令見習い

黄鶲と川蝉の息子。

10歳になり、宮城や離宮で家令見習いとして使い走りを始めたばかり。

現在、家令の中で1番の年少者。


§淡雪《あわゆき》  宮廷画家

本名 東雲《しののめ》淡雪

アカデミーに所属する画家。

アカデミー特別委員。

人間国宝、画聖の称号を持つ。

翡翠の学友。

緋連雀の師匠。

作品は宮廷でも人気がある。

継室が欲しがった作品を白鷹も欲しがり、琥珀が倍の値段で買い上げ白鷹に与え騒動になった逸話がある。

本人はあまり物事にこだわらないたちなので、人間関係に巻き込まれる事もなく生きている癒し系。

放浪癖があり、あちこちスケッチ旅行に出かけては戻って来ない。

宮廷画家として大聖堂修復の指揮を執った。

§路峯 隼 《ろほう はやと》 

元老院次席であり、父は元老院長であった。

翡翠の正室、皇后の芙蓉を出した大貴族であり屈指の名門出身。

父の後妻として雉鳩の母が路峯家に入っている。

翡翠の学友。

皇太子である藍晶を支持している。

議員派と親しい皇太子を危惧している。

⌘鈴蘭《すずらん》   皇太子正室

元老院派 比嘉家の二の姫。

孔雀の推薦で、藍晶の正室として後宮に入宮した。

快活で朗らかであり、皇太子宮である象牙宮の若き女主人を務めている。


§揚羽《あげは》    女官長

本名、済 更紗《わたり さらさ》。

旧姓 五百旗頭《いおきべ》。

祖母、母と女官長を三代務める。

宮廷軍閥、五百旗頭家の出身。鸚鵡の姉。

女官は、上位五役までが蝶の名前を戴く。

最も高位の女官長 揚羽。

母もまた女官長であった事もあり、鸚鵡と共に子供の時から琥珀の離宮に出入りしていた。

真鶴とは幼馴染。

⌘紅小百合《べにさゆり》 王族•第三妃

翡翠の三妃。継室候補群議員派の出身。

本名 渡良瀬 香織《わたらせ かおり》

リベラル派だった瑪瑙帝の推薦で入宮した。

紅水晶皇女の母。

正室の地位を望んでいる。

身近に家令を置く事を好まない。

正室、ニ妃が不在につき国内外でファーストレディとして活躍。

⌘木蓮《もくれん》 王族•第二妃

翡翠のニ妃。継室候補群ギルド派出身。

天河の母。

本名 縞野 乃衣美《しまの のえみ》。

母がギルド長、父がアカデミーの教授で外国人であった為、海外で生まれ育った。

天河が10代のうちに宮城で亡くなった。

⌘撫子《なでしこ》   皇帝四妃

本名 一宮 絲子《いちみや いとこ》

元老院筋の貴族の正室候補群である一宮家から翡翠に入宮した。

翡翠帝以外も、皇太子の藍晶の正室、継室、第二太子天河の正室、といずれの縁談にも名前が挙がる程の名家。

食が細く、厨房を預かる白鴎と、孔雀を悩ませている。

§紋白《もんしろ》   副女官長

本名 鏡 華《かがみ はな》

女官の五役の一人。

没落貴族の出身で、女官試験を受けて登用された。

結婚時に一度城を下がったが、その後離婚して復職した。

子供が宮城内のキンダーガルデンで育ち、同じ宮城内にある舎宅に暮らしている。

当初は孔雀に反感を持っていたが、現在では好意的。

同じ貴族出身の四妃に複雑な感情を抱いている。

§銀椋鳥《ぎんむくどり》 宮廷家令

本名 エマ•ダミニ•タシオニ 

母親はアカデミー教授のキーヴァ•タシオニ。

10代でアカデミーに入学を許された天才少女。孔雀が母親のタシオニと親しくなり、孔雀とも友達になる。

家令逹のアカデミーでの宿舎である"止まり木"にもよく出入りをしていた為、天河や大嘴とも親しくなった。

大嘴に憧れて17歳で家令になった。

真鶴を強く意識している。

茜が家令になってくれて嬉しく思っている。

§ヤドヴィカ・タシオニ  アカデミー教授・動物学者

アカデミーで動物学、獣医学を研究、教鞭をとる教授。エマの母親。

アカデミー特別委員の1人。

優秀で、トリッキーなところがある。

アカデミーでの孔雀の師となる。

エマに家令になればいいのにとアドバイスをし、心配だと渋る孔雀を説得した。

⁑ ヘルムート・ネイガウス  A国将校

アカデミーに属するA国将校。

天河の友人。

お互い前線を挟み睨み合う仮想敵国の立場だが、アカデミーでは政治的思惑は不問の為、複雑ながら親交は深い。

A国は皆徴兵制がある為、少年の頃から兵役の経験がある。

軍人一家であり、海軍に在籍している。

◇戴勝《やつがしら》

元敵国•現仮想敵国のQ国母后。

本来は家令の戴勝。

一時、神殿《オリュンポス》で大神官を目指して潔斎に入っていたが、放り出して戦場に戻る。

大戦中に戦死したと記録されているが、実際はQ国で拘束され殺されたとされた目白と共に幼い王の義母として活躍し辣腕を奮っていた。

大神官を目指した事から、"神の花嫁"とも呼ばれ、また、“地獄の門番“とも呼ばれた。

梟曰く、"海賊や山賊のような女家令"。

◇目白《めじろ》

元敵国•現仮想敵国のQ国大宰相。

本来は家令の目白。

大戦中に大司教であったが、停戦の斥候としてQ国を来訪した際に拘束されて処刑されたとされていた。

実際は幼い王の宰相として、義母の立場の母后(やはり家令の戴勝)と共に活躍。

数年前に没。

◇鶍《いすか》

元敵国•現仮想敵国のQ国の太政官。

本来は家令の鶍。

元アカデミー長。

Q国の高官未亡人と出会い、亡命した先で戦死した筈の弟妹弟子の戴勝と目白に再会。

身分保証を約束され大いに貢献。

5人の妻、12人の子供、25人の孫を得た。

20年程前に没。

鵟の曽祖父に当たる。

セリム•リド•ユク

Q国王。

大戦中、宮殿で、冷遇されついた少年時代に、囚われていた目白、勝戴と、家令による"悪魔の契約"を結び、支援を受けて兄3人を葬って即位し、国は大躍進を遂げた。

後宮《ハーレム》に多くの妃がおり、多数の子を持つ。


死んだはずの兄弟子姉弟子が生きていると知った白鷹が差し向けた猩々朱鷺と関係を持った、らしい。緋連雀の父親に当たる。


⌘紅水晶《べにすいしょう》 皇女

翡翠と紅小百合の娘。

母親の意向で家令とはある程度遠ざけられ育った。

Q国皇太子と婚約が決まった。

§五百旗頭 紬然《いおきべ ゆうぜん》

宮廷軍閥、禁軍近衛兵の竜騎士。

鸚鵡と更紗の父親。前女官長の夫。

翡翠への背信疑いとして、元老院除籍、蟄居の処分となっていたが、鸚鵡が名誉回復した事で、自分も許され復籍した。


近衛兵は皇帝の近侍兵であり、大戦中は戦場にはあまり足を向けなかった黒曜帝の以降で実戦闘には関わらなかったのを、白鷹や梟から恨みに思われている。

かつて少年時代に軍神寵姫と称えられていた巫女秋沙に憧れていた。

⁂巫女秋沙《みこあいさ》 宮廷家令

西の修道院長。

猩々朱鷺の母、緋連雀の祖母に当たる。

大嘴の母違いの姉。

かつての黒曜帝の公式寵姫であり、白鷹曰く"ちょっと見てくれがいいのを鼻にかけた緋連雀が逆立ちしたって敵わない美貌"であった。

また軍でも手腕を発揮し、大戦中は軍神寵姫と呼ばれた。

長い間、弟の大鷲の安否が知れず心配していた。翡翠に頼まれて、真珠帝の首を保管していた。

現在家令の中で1番の年長。

長生きのコツは"何もしないこと"。

§真榊 鮎子《まさかき あゆこ》

西の副修道院長。

鷂の母に当たる。

かつて神殿《オリュンポス》に仕えた巫女であった。

大戦中、勝戴の指示で西の修道院に逃れた。

生活能力の低い家令の巫女秋沙の代わりに修道院では様々に実務に携わっている。

⌘瑪瑙《めのう》

琥珀の弟。真珠帝の死後、皇帝位に就いた。

リベラルで知られ、議員を支持していた。

遅くに皇帝となった事もあり、継室は持たずに離宮を好んで過ごす事が多かった。

⌘真珠《しんじゅ》

琥珀と正室の薔薇《そうび》との皇太子。

琥珀の後に皇帝位に就いた。

総家令の大鷲と共に大戦後の明るく豊かで自由な時代を反映するかのような宮廷を作り上げた。

表向きは事故死とされたが、琥珀や旧勢力から背信罪で討たれる。

琥珀に命じられて指揮したのは翡翠。

死罪より重い記録抹消剤となり、宮廷のあらゆる公式文書から名前を消去される。

⁂大鷲《おおわし》  宮廷家令

真珠帝の総家令。

巫女秋沙の母違いの弟。

母親は、大戦で戦死した家令の雷鳥《らいちょう》。

天眼であり、優秀な神官でもあった。

下の世代の家令からの信頼も厚く、面倒見が良かった。

真珠帝が討たれた際に行方不明となった。

⌘琥珀《こはく》帝    女皇帝

白鷹と共に大戦中、前線を走り回った歴戦の女皇帝。

長兄から皇位を簒奪し、皇帝に就いた。

正室との間に真珠、継室との間に翡翠、父親は公表されないままだが翠玉(真鶴)を産んだ。

白鷹を伴い早くに離宮に移った。

革新派の真珠とぶつかり、背信罪で真実を訴追。

宮城に戻る事なく離宮で亡くなった。

§済 武衛《わたり ぶえい》 

宮廷軍閥 禁軍 近衛兵

女官長の揚羽(更紗)の夫。

元老院籍はないが、五百旗頭《いおきべ》家に次ぐ軍閥の名門。

藍晶の護衛官。

⁂仏法僧《ぶっぽうそう》  宮廷家令

元議員 本名 眞弓《まゆみ》如意《にょい》

若手の世襲上院議員だったが、皇太子の恋人に唆された先輩議員と共に総家令である孔雀を襲撃し返り討ちにされた事がきっかけで家令にスカウトされる。

家令には居ない常識人ぶりと爽やかさで、宮廷の女官と官吏に大人気。

海兵隊所属

神殿《オリュンポス》所属

⁂太蘭鳥《たいらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》麗《うらら》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂金襴鳥《きんらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》朧《おぼろ》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂菫金剛《すみれこんごう》  宮廷家令

孔雀の息子。

ほぼ大嘴《おおはし》が育てている。


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