第33話 家令の生き死とは人事

文字数 5,199文字

 (ふくろう)が椅子に座って、ビールを片手に滔々(とうとう)と弟弟子に心得を聞かせていた。
川蝉(かわせみ)に与えられた部屋は、自分が昔使っていたのと同じ角部屋だった。
内装はだいぶ違う。マグノリアの花と枝が美しく描かれた壁紙の洒落た部屋だ。
家令は城にそれぞれ居室を与えられるが、その中でも随分いい部屋だろう事は予想がつく。
じっとりと恨めしそうな視線に気づいた(ふくろう)が二本目のビールを開けて、川蝉(かわせみ)に手渡した。
川蝉(かわせみ)はうまそうに飲み干すと、人心地ついたと呟いた。
「・・・まあ、話が長くなったが。お前も散々派手に遊びまわったようだし、そろそろもういいだろう」
「いや、まだまだあと二巡は・・・」
「もういいわ。お前とはマカオと、マリブで会ったじゃないか。十分だろう」
「私は特別休暇での行動ですが、(ふくろう)兄上は平常勤務で遊んでいたわけですよね」
「・・・・あれは、機密任務だ」
苦しい言い訳をそのまま通し、(ふくろう)はソファに座り直した。
「以前も言ったように、家令の最後は総家令が看取る事になっている。上の世代は戦時中に戦死した者が多く、その最後に総家令の同席は叶わなかったが。白鷹(はくたか)姉上は唐丸(とうまる)兄上をお看取りになっているが、私は無い」
「長たらしく、死ぬ心得を話しておきながら、自分は知らねえから分かんねえという事かよ」
ぼそっと言うと、(ふくろう)が舌打ちした。
「家令の結婚も離婚も生き死にも人事(じんじ)だ。文句言うな」
半年程前。黄鶲(きびたき)が自分の体調が振るわない事を孔雀に報告した。
家令の情報は共有される物だからそれは当然だとしても、どうせ死ぬなら好き放題、酒池肉林の限りを尽くして死ぬのが家令の一般常識であるのに、あの妹弟子が川蝉(かわせみ)お兄様に渡してと(ふくろう)に持たせたのは、あちこちのホスピスの分厚いパンフレット。
色とりどりの付箋(ふせん)七夕(たなばた)飾りのようにくっついてあり、《温暖な地域で海辺の近く眺望が最高》だの《マクロビオティックのお食事》とか《週に一度の文化活動あり》や《メディカルアロマテラピーと漢方治療が素晴らしい》等、いちいち記入してあった。
受け取った時にあまりに驚いて兄弟子を見ると、彼もまた理解しがたいという顔をしていた。
「勝手に生きて戦って遊んで死ぬのが家令だ。なんで孔雀(くじゃく)がこう考えるに至ったのかはサッパリわからんが。ま、ギルド出で変わってるからだろう」
死ぬってのに、なんでこんな全寮制の矯正施設みたいなとこで苦労せにゃならんのだろう。と二人はパンフレットを嫌そうに眺めたものだ。
そんなやり取りが何度か続いて、川蝉(かわせみ)は相変わらずお構いなしにあちこち遊びまわり、ついに孔雀(くじゃく)が妥協したのだ。
そして一昨日。カンクンでリゾートを堪能していたところにまた(ふくろう)が現れた。
「お前、いつ頃死ぬ予定だ?」
そのあからさまな兄弟子の言いように、さすがの川蝉(かわせみ)も唖然としたが。
翡翠(ひすい)様がな、孔雀(くじゃく)がお前の死ぬところに駆けつける暇が無いんだから、だったらお前が孔雀(くじゃく)の側で死ねとの事だ」
「はあ?」
(ふくろう)にファイルを手渡された。
「陛下がお前を正式に招集する書類だ。七十二時間以内に登城しない場合、死ぬ前に殺されるならまだしも、このままだと城から一番近いホスピスに強制収監だ」
冗談じゃない、というわけで、今回十年以上ぶりに宮城に上がったわけだが。
平たく言うと、城で死ぬ許可を出したから城で死ね、という事だ。
川蝉(かわせみ)は妙なことになったもんだとため息をついてビール瓶を垂直にして飲んだ。
瑠璃鶲(るりびたき)姉上がお亡くなりになった時は、孔雀(くじゃく)危篤(きとく)の知らせを受けるたびにアカデミーまで何度も行ってたからなあ。・・・あれ不思議だな。コロっと死ぬやつはコロっと死ぬのに、危篤(きとく)になるやつは何度もなる。お前、どっちだろうな?」
無神経の塊のような発言。
「・・・知りませんよ」
相変わらずと言おうか、いや、以前にも増してモラハラが酷い。
「・・・それで、陛下に置かれましては、ダラダラ死に損なってられたんじゃ孔雀(くじゃく)の通常業務に支障が出る、と」
「そうそう。だって半年に一度の潔斎(けっさい)付きの神殿(オリュンポス)勤務もある上に、軍属もあるんだぞ。巫女総家令はこれだから。・・・それに、瑠璃鶲(るりびたき)姉上が亡くなった時に、孔雀(くじゃく)がだいぶ落ち込んだ上に寝込んだからな。翡翠(ひすい)様がそこを心配したわけだな」
腐っても家令。身も世も無くなる悲しみ方ではないが、あの妹弟子は瑠璃鶲(るりびたき)が亡くなった時に、しばらく憔悴していた。それこそ翡翠(ひすい)が気に病むほどに。
本来、王族は家令含め廷臣の動向というか、生き死にもそれほど執着しない。
それが正しい王族のあり方だ。琥珀(こはく)はまさにそうであったし、皇太子も近いものがあるが、彼としては孔雀(くじゃく)に哀悼の意を伝えた。
翡翠(ひすい)は沈む孔雀をなんとか励まそうとあれこれ心を砕いていたのだ。
「・・・さっきも思ったけど。そんなタイプだったか?」
川蝉(かわせみ)が首を傾げた。
「・・・おかしな事ばかりだ。あの偏食家がガツガツ刺身だのチーズだの桃だの食ってる。死にかけ家令に城で死ぬ許可まで出した」
川蝉(かわせみ)は彼が十代の半ばから三十代に差し掛かるまで身近に側に仕えたが、あまり物事に執着しないというか興味もそれほど持たないタイプであった。無気力というよりは無頓着。
それもまた非常に複雑な立場と、特殊な人生を生きてきた経験のせいであろうかと納得していたのだが。
「十五の小娘をスケベ心で側に上げたと聞いた時は、ぶっ倒れるかと思ったわ」
しかもあの末妹の孔雀(くじゃく)だ。宮廷育ちでもないギルド派に宮廷での総家令業など無理だろう。
「お前、死ぬ前に不敬罪で死罪になるぞ。まあ、女家令どもは、あいつ変態だったんか、世間一般なら逮捕だ、と言ってたわな」
そっちのがひどいだろ、なんて言い草だと川蝉(かわせみ)は呆れ果てた。
「しかし。家令は十五で成人。変態相手だろうが一部の好事家(こうずか)相手だろうが、立派に仕事をしなければならない。最初はどうなる事とかと思ったけど、ちっくりちっくり距離を詰めて、今がある。ま、うまくいってよかったわな」
「皇帝と総家令は相思相愛だの、寵姫宰相だのの話は聞いていたよ。・・・でもありゃなんだ。まるで恋女房じゃないか」
ほお、と感心したように(ふくろう)は弟弟子を眺めて「言い得て妙だな」と笑い出してしまう。
川蝉(かわせみ)はまた面食らった。彼もまたこんな風に笑うタイプではなかった。
(ふくろう)兄上、笑い事じゃない。今はまだいいけど、何年かしてみろ。あれじゃ孔雀(くじゃく)生贄(スケープ)子羊(ゴート)だろう。公式寵姫の役まで引き受けている」
皇帝の弾除けが総家令だけでは足らない時に重宝する公式寵姫。
王様が悪いのじゃない、あの悪い家令と、女に騙されてるのだ。という演出にもなる存在。
「それの何が悪い。安上がりで助かる、孔雀はコスパがいいと雉鳩(きじばと)は言ってるくらいだ」
「・・・・(ふくろう)兄上・・・」
非難の目を向けられて、(ふくろう)は肩をすくめた。
「今更どうする。俺はこれでいいと思ってる。あんな思いをするのはもうたくさんだ」
あんな思い、と言われて川蝉(かわせみ)は押し黙った。
真珠(しんじゅ)帝と大鷲(おおわし)の事だ。
あの二人こそ相思相愛であった。
若き賢帝と呼ばれた皇帝と、優秀な総家令。
特に、川蝉(かわせみ)の世代は子供の頃からあの二人が大好きであった。
引き裂こうとしたらどうなった、(ふくろう)は呟いた。
大鷲(おおわし)兄上の所在は・・・」
(ふくろう)が首を振った。
「ずっと探してはいるんだがな。・・・さて」
沈鬱(ちんうつ)な声色に、この話題にした責任を感じた。
公式には病死とされている真珠(しんじゅ)帝の死の真相は、琥珀(こはく)白鷹(はくたか)の命令で、自分と翡翠(ひすい)真珠(しんじゅ)帝を背信で討ったというものだ。
実際は真珠(しんじゅ)帝はこれまでと悟ったのか、責任を取ったのか、はたまた母王への抵抗か、自死していた。
その際に捕らえられていた大鷲(おおわし)が逃亡し、それ以来所在を全く掴めない。
巫女愛紗(みこあいさ)姉上もずっとお気にされている。母親違いとは言え実弟だからな」
今は修道院長となった巫女愛紗(みこあいさ)は、家令の中でも最高齢だ。
彼女の義理母に当たる雷鳥(らいちょう)という女家令が、後妻として嫁いだ先が状元(じょうげん)と呼ばれる殿試で首席の官吏だった。
ところが、女家令の結婚がうまくいかないのは常か、数年後に離婚。
夫と先妻の娘である巫女愛紗(みこあいさ)と、自分と夫との子の大鷲(おおわし)を連れて宮廷に舞い戻り、その子は結局二人とも家令になってしまったのだ。
よくも夫たる官吏は納得したものだと思うが、当時の皇帝と総家令がもっと若い新しい嫁を提供して納得させたらしい。家令の進退どころか婚姻も離婚も生き死にも人事とは言ったものだ。
年の離れた弟である大鷲(おおわし)巫女愛紗(みこあいさ)はとても可愛がったし、大戦中の困難な時期、大鷲(おおわし)は公式寵姫であり軍でも重責のあった姉をよく助けた。
大戦中まだ子供だった自分達世代の家令は、年嵩(としかさ)大鷲(おおわし)に連れられて一時城を離れた事がある。
いわゆる疎開。上の世代の家令達が日々激化する大戦から下の世代を逃したのだ。家令の子は、雛鳥(ひなどり)鳳雛(ほうすう)と呼ばれて、良からぬ輩に狙われやすい。
まだ自分達は物心ついて間も無くの頃。当時、もうすでに自分の親達はすでに戦死していた。
「家令が自分で身を隠したら、探し出すのは至難の技だよ。大鷲(おおわし)然り、真鶴(まづる)然り」
真鶴(まづる)翠玉(すいぎょく)皇女。琥珀(こはく)帝が離宮で産んだ、父親が公表されない皇女だ。
琥珀(こはく)によく似た美しい姫。更には尋常ではない頭脳の持ち主。
真珠(しんじゅ)帝の政変の折に、(あお)りを食って正式に廃皇女にされ家令になったが。
なったらなったで、掛け値なしに素晴らしかった。
「・・・(ふくろう)兄上。今だから言うけど、翠玉(すいぎょく)皇女は琥珀(こはく)様に愛されたと言われていたけれど、あの方は本当にそうだったのか」
「・・・どうだろうな。琥珀(こはく)様はまことに王族らしい方だったから。・・・真珠(しんじゅ)帝の政変があった折、皇女が障りになるのであれば廃して良いとも仰った」
川蝉(かわせみ)はため息を飲み込んだ。
あの女皇帝なら、そう言うだろう。
廃してよい、というのは本来は、地位を剥奪するという意味だが、彼女の場合は、処分しろと言う事だ。しかし、白鷹が自分の裁量預かりという事で皇女を正式に家令にして守ったのだ。そもそも彼女の身の上のいずれ家令にという付随するものが、いつか廃されるかもしれないという事を見越しての白鷹(はくたか)の防衛線であったのかもしれないとも思う。
自らの皇子も皇女も、果たして真実愛していたのか怪しい彼女だ。
白鷹(はくたか)姉上が、殺そうものなら真鶴(まづる)に逆に私達が殺されてしまうと言って、琥珀(こはく)様は笑っていたが・・・」
全く洒落にもならない。
そもそも王族、皇帝と言うのは大概が宮廷の備品たる家令の進退や命等あまり気にも留めないわけだから、笑い話にでもなるとしても。
だからこそ二妃の一件では、異例中の異例、特段のご配慮で自分達は処分を免れたのだ。
翡翠(ひすい)の二妃が亡くなった折も。それは早いうちから、隠そうともしない正室の所業である事は内々では知られていた。
当初は、宮城で妃を死なせた罪で、総家令代理であった川蝉(かわせみ)、正室付きであった青鷺(あおさぎ)、二妃付きであった猩々朱鷺(しょうじょうとき)を、琥珀(こはく)は処分せよ、つまり殺せと言ったのだ。
それともお前が裁判にでもするならそれでもいいけれど。お前弁護士なんだもの。妹たちと弟を弁護しておやり。と、(ふくろう)に彼女は笑いながら言った。
家令が裁判にかけられて、どんな公正な審議が望めよう。
殺される相手が、他者の手か、もしくは家令の手かに変わるだけ。
白鷹(はくたか)は弟弟子と妹弟子の命を守るために、宮城から追放すると正式に通達した。
それは琥珀(こはく)に逆らったわけであるけれど、それでもそれ以上の措置が無かったのは、女皇帝が白鷹(はくたか)の願いを聞き入れての事だろう。歪んでいるのだ、あの二人は。
「まあ。つまりだ。それが愛情ゆえと言うならば、我々はあの二人の愛憎に巻き込まれっぱなしだったということだ」
なんと迷惑な話だ。
「それに比べたら、まるで中学生のようなお付き合いの翡翠(ひすい)様と孔雀(くじゃく)は、大助かりだ。今だに交換日記みたいのやってるしな」
冷蔵庫の前に、お互いのメモを貼り合っている。
川蝉(かわせみ)としたら、総家令室に煮炊きの出来るキッチンがあるのが驚きだし、そもそも、総家令執務室と、皇帝執務室が繋がっているというのがどういうわけだと思ったもので。
「信じられるか。翡翠(ひすい)様は、孔雀(くじゃく)と本当に今更恋愛してるんだぞ」
バカじゃないのかねえ、とそれこそ不敬な事を言い、(ふくろう)はそれでも嬉しそうだった。
川蝉(かわせみ)は面食らって黙った。
「嘘じゃない。本当だ。聞いてみな。・・・まるで素晴らしい何かに生まれ変わったような気分だと仰ってたよ。最近、何食ってもうまい。何見ても嬉しいってな。あの翡翠(ひすい)様が」
ついこの間までは、人生など早く終われ、早く終われと、そう思っていたのに。と。
「そう変えたのがあの末妹ならば。我々家令としたら名誉な事だ。王族を(たぶら)かし、血と争いを好むと言われる、この悪い鳥達がだよ」
(ふくろう)は、自嘲でもなく卑下するのでもなく、そう思うのだ。
そう揶揄(やゆ)されるのは決して嘘ではないし、嫌いではないが。
「・・・ああ、だからさ。お前。あんまり頑張るなよ」
さっさと死ね、ということ。
更に(たち)が悪いのは、この兄弟子はこの発言を気遣いや思いやりだと思っているのだ。
やはり身も蓋もないこの物言いに川蝉(かわせみ)は両手を挙げた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

⁂孔雀《くじゃく》  宮廷家令

十歳で問答無用で宮廷家令に召し上げられる。元は継室候補群十一家のうちの棕梠家の生まれ。(実績が低いので宮廷での信用は低い)。 本名は棕梠 杏花春雨《しゅろ きょうかしゅんう》。

皇帝である翡翠帝により、十五歳で宮宰である総家令を賜る。

実家は、ギルド筋と言われる商業経済活動を生業とする立場にある。砂糖商から身を起こし現在は製菓業。異種多種経営で建築資材、水産加工品、食品流通等様々であるが、今も昔もカステラが一番有名。通称カエルマーク。

国を超えて経済活動をするギルド筋の人間には珍しくないが、どこかで外国の血が混ざっていて、青菫色の瞳をしている。

棕梠家は双子が多く生まれる家で、孔雀はいわゆるバニシングツイン(周産期で双子が一人になってしまう。生き残り)。

その場合、名前を二人分つけるという習慣があり、杏花・春雨という変わった名前になっている。

海軍所属。十二歳から軍属に就く。

金糸雀、緋連雀と共に女官試験にパスしているので、宮廷では三人官女と呼ばれている。(陰ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)。

小さな頃から軍で働いていたので、自国ではヒヨコちゃんやフラッフィー等と呼ばれていたが、後に悪魔の王《ルシファー》という渾名で敵国から認識されるようになる。

神殿の神祇官。大神官になれる素養があるとされる。

異能を持つ天眼(結構いる)の生まれ。

個性の強い大人に振り回されて奮闘中。

実用性のみの特技はいろいろあるが、マグロの解体が出来る。

頑健な者ばかりの他の家令より多少虚弱でよく寝込む。

⁂金糸雀《カナリア》  宮廷家令

母親が女家令の青鷺《あおさぎ》。父親が梟《ふくろう》。生まれながらの宮廷家令の身分。

海外の寄宿舎育ちで、幼少から天才少女と誉高く、家令の身分ながら、官僚試験の殿試を二位である榜眼《ぼうがん》でパスしている。また女官試験もパスしているので、孔雀、緋連雀と共に三人官女と呼ばれている。(裏ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)

軍事法廷専門の弁護士。

陸軍所属。十ニ羽の五色鶸《トゥェルブ・ゴールドフィンチ》部隊を率いる。

渾名は、人食いワニ《マンイーター》。

宮廷では、報道官を務め、また後宮内の服飾の管理、軍の装備品の開発を担当している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

ボウルルームダンスのチャンピオン保持者であり、アスリートタイプ。

真鶴に唆されて、白鴎と一ヶ月だけ結婚していた。結婚生活は正味十日程度。

白鴎の浮気に激昂して、白鴎を半殺しにして病院送りにして、一人で新婚旅行を楽しみ現地でデートクラブを経営して荒稼ぎしていた。

結婚式の準備と離婚のお詫び行脚を丸投げされた孔雀から恨まれている。

⁂緋連雀《ひれんじゃく》 宮廷家令

母親が女家令の生まれながらの宮廷家令の身分。三代続く女家令。

祖母は大戦の折に戦歴を称えられ、当時の黒曜帝の公式寵姫でもあった美貌の女家令、巫女愛紗《みこあいさ》。

母親は、アカデミー長の猩々朱鷺《しょうじょうとき》。

宮廷で育った為、自他共に認める美貌と教養を鼻にかけている節があり、「宮廷育ちの根性曲がり」と陰口を叩かれている。

少女の頃から宮廷画家であり人間国宝の画聖・淡雪を師匠に日本画を修練し、雅号を持つ逸材。

宮廷に関わる男を手玉に取り一財産築きつつある。

孔雀、金糸雀と共に、女官試験もパスしているので、三人官女とも呼ばれる。(裏では、ゴーゴン姉妹と揶揄されている)

海軍所属の出世頭。渾名は、火喰蜥蜴《サラマンダー》。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。

バレエのエトワールであり、招かれて海外公演もこなす。

第二太子の天河曰く、「殺し屋のようなオデット姫」。

外見は華やかな美貌であるが、中身は中年男性に寄りがちな食生活と生活態度であり、軍隊の猛者がドン引く程の下ネタが得意。

⁂白鷹《はくたか》   宮廷家令

翡翠帝の母親である琥珀女皇帝の総家令であった。

現在は離宮で琥珀のもとに仕えているが、宮廷での影響力は未だ健在。

若き時代、皇女であった琥珀と共に大戦の前線を駆け抜けた強者であり、大戦で多くの家令が戦死した中で、数少ない生き残り。王族のうちでも皇統下位であった琥珀の帝位簒奪に尽力した。

後進に対して教育熱心であるが、性格は非常に自分勝手で激しいものがある。

大戦当時の神殿の神官長でもあった王族に、弟弟子である大鷲《おおわし》が監禁されていたのを不服に、報復の為に神殿を焼き討ちした過去があり恐れられている。

人肉を屠るダキニ、人肉を喰らうダキニと呼ばれている。

子供の孔雀に目をつけて、問答無用で召し上げた。

現在も家令達を統率している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

⁂梟《ふくろう》   宮廷家令

翡翠の叔父、琥珀の弟に当たる瑪瑙帝の総家令。

白鷹と共に、孔雀を宮廷家令に召し上げた。

金糸雀の実父であり、青鷺の元夫。

大戦の折に、若くして従軍した生き残り。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

武闘派の白鷹に対して、梟は陰険な策謀家で知られていて、宮廷ではその情報を掌握して恐れられている。

渾名は死神。

⁂雉鳩《きじばと》    宮廷家令

父親が王族、母親が琥珀帝の父親である黒曜帝の総家令の白雁《はくがん》と黒曜帝の皇妹の娘。

宮廷では緋連雀と共に美貌を知られている。ウェストは緋連雀より細い。

アカデミーで医師の資格を取っているが精神科医で臨床経験はない。

海軍所属。渾名は大海蛇《シーサーペント》。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

書道の大家。

本名 羽黒山 稼頭男《はぐろやま かずお》

自分の美意識に合わず、本名を隠したがる。


⁂白鴎《はくおう》    宮廷家令

ギルド筋出身。金融業を生業とする、ギルド長を務める百目木《どうめき》家の次男坊。

金融、マスコミ、宗教関係は正室、継室共に入宮は出来ない規則があり、継室候補群ではない。

海外に留学中に己の悪徳の致すところで勾留の憂き目に遭い、父親が梟に泣きつき、裁判にて無罪となる。

家令にする事を条件とされていた為に、放免後そのまま宮廷家令の身分となる。

陸軍所属。作戦中に部隊がほぼ壊滅状態となり、軍属から離れている。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

真鶴に唆されて、短期間だが金糸雀と結婚していたが、すぐに離婚。

金糸雀に半殺しにされて入院した経験がある。

留学中に伝統ある料理学校と三ツ星シェフの元で修行をしたオーベルジュでの勤務の経験もあるシェフでもある。

本名 百目木 円《どうめき まどか》


⁂大嘴《おおはし》   宮廷家令

聖堂《ヴァルハラ》の教皇座を出している家柄の出身の三男坊。

大嘴を家令にする事を条件に、梟によって、議会に置いて大戦で失われた大聖堂の再建予算案が通った。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

付き合いがよく、上の世代に育児放棄されつつも孔雀と燕とガーデンで自活した経験がある。

翡翠の第二太子である天河《てんが》と共に、一時海外で共に生活をしていた。後に正式な侍従となる。

本名 英 三郎《はなぶさ さぶろう》

⁂燕《つばめ》   宮廷家令

宮廷家令。

母親が女家令であり梟の実妹の木ノ葉梟《このはづく》。

宮廷育ちで、幼い頃から宮廷で使い走りをしていた。

家令の教育期間であるガーデンに行った途端に、上の世代から育児放棄されて孔雀と大嘴と自活する。

実母も、周りの姉弟子兄弟子も強烈な為、家令の中でもマイペースな孔雀と大嘴との擬似家庭を結構気に入っていた。

⌘翡翠《ひすい》   王族・皇帝

琥珀女皇帝と継室であった椿《つばき》との間の第二太子。

叔父の瑪瑙の跡を継いで皇帝となる。

琥珀の時代の皇帝であった長兄の真珠帝が背信罪となり、琥珀帝と当時の総家令の白鷹により、侍従であった家令の川蝉《かわせみ》と共に、討伐の命を受けた。

アカデミーでドクターの資格を修めたが、臨床の経験はない。

王族の慣例に則り、十五で婚姻。正室である元老院筋の芙蓉《ふよう》皇后。第二妃として、ギルド筋の継室の木蓮《もくれん》、三妃として、議員筋の紅小百合《紅小百合》がいる。

それぞれの后妃との間に、皇太子の藍晶《らんしょう》、第二太子の天河《てんが》、皇女の紅水晶がいる。


孔雀を総家令に任命した。

孔雀の若さに注目した宮廷の人間から、特殊な性癖の持ち主なのかと噂される。

半分、妹である真鶴、翠玉皇女への当て付けで孔雀を総家令に任命して、伽に招いた。

残り半分の、都合の人事としての総家令任命であったが、徐々に孔雀との間に真摯な関係を結ぶようになる。

人々から愛隣王という称号で呼ばれるようになる。

外見の物腰が柔らかで繊細に見えるが、内面は結構雑

母親である琥珀にそもそもあまり親近感はない。

⌘藍晶《らんしょう》   王族・皇太子

翡翠と、芙蓉皇后の間の皇太子。

母が元老院筋の大貴族の出なので、元老院派の支持も篤く、またリベラル派でもあり若手議員からも信奉されている。

生来の貴公子であり、国内外からも人気がある。

社交界の華であり、数多くの浮名を流しているがそれもまた人気。

第一子、皇太子が後継とは限らない王朝において、琥珀帝によって生まれながらに皇位を約束された「幸福な王子」。

本来は十代半ばで婚姻を済ませているはずだが、不服としていたが孔雀により延期となり、また宮宰としてたち働く孔雀を、気の毒に思いながらも都合のよい総家令として満足している。

⌘天河《てんが》    王族・第二太子

翡翠と二妃・木蓮の間の第二太子。母親がギルド筋であり、特殊な案件で早逝した為、宮廷では冷遇されていた。

アカデミーで、宇宙物理学を専攻して、研究と共に教鞭にも立っている。

母親の死後、一時期、ギルド長を辞した祖母と、アカデミー教授であった祖父と共に海外で暮らしていた。

大嘴とは兄弟のように育つ、遊び仲間でもある。

少年の頃、孔雀を気に入り、母親である二妃と翡翠の侍従であった川蝉が宮廷に招こうとしていたが、孔雀が家令となり、総家令として宮廷に仕える事になったのを不服に思っていて、原因であり無神経な言動をする梟を恨んでいる。

王族に見られる、異能の龍現の生まれとされるが特に何か特別な才能は見られない。

父親である翡翠と逆で、見た目は鷹揚だが、中身が神経質なところがある。


母親が亡くなった宮城から距離を取って成長し、更に孔雀が総家令になった事で更に足が遠のいていたがアカデミーで問題行動を度々起こしていたが、孔雀が歩み寄った事で、徐々に宮廷や家令達と関わるようになる。

浮世離れたした人間の多い宮廷においては数少ない常識人であり、その点から苦労性である。

⁂鵟《のすり》    宮廷家令

本名・篠山 茜《しのやま あかね》。高校生。母親と母親の夫、その妹と暮らしていた。実父は死亡。家庭環境としては恵まれたものではなかった。

父方の曽祖父が宮廷家令であるとの事で、スカウトされ、了承する。

戸惑いながらも、少しずつ家令としての生活に希望と自意識を見出す。

家令としての孔雀に興味を持ち、あれこれと物語を聞かされる事になる。

⁂黄鶲《きびたき》    宮廷家令

川蝉《かわせみ》の妻であり、尉鶲《じょうびたき》の実母。

翡翠により宮廷の終身典医としての地位を与えられている。

二妃が死亡し、他の同世代の家令達が宮城から放逐された時も、終身典医の地位の為に守られた。

アカデミーの医局に勤めるドクターでもある。

前線で医療行為を行うNPO法人も運営している。

趣味は保護猫の去勢。

若かりし頃に一時期、翡翠と関係があった。

宮廷で、青鷺《あおさぎ》、鷂《はいたか》、猩々朱鷺《しょうじょうとき》、木ノ葉梟《このはずく》と共に、妖精《フェアリー》と呼ばれた世代。陰では小鬼《ゴブリン》と揶揄されていた。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

⌘芙蓉《ふよう》   王族・皇后

 元老院筋の大貴族から入宮した翡翠の正室、皇后。

皇太子である藍晶の母。

後宮の螺鈿《らでん》宮の主。

以前は青鷺が侍従として仕えていた。


前元老院長の親族であり、養女と言う形での入宮であったが、実は、真珠帝と皇后出会った薔薇《そうび》との娘である碧玉公主。

⁂青鷺《あおさぎ》   宮廷家令

金糸雀の実母、梟の元妻。

宮廷で最も思慮深く上品で教養のある女家令と言われている。

芙蓉皇后の侍従として仕えていた。

二妃が亡くなった際、不手際を咎められて白鷹から宮城から放逐されたうちの一人。

孔雀が総家令に就任した際に、恩赦として復位を賜ったが、以来、宮城には戻っていない。

海兵隊所属。

現在、海兵隊の責任者として前線に勤務している。

外見も物事も淑やかなのだが、やはり凶暴な面があり、家令達からはお上品機雷と呼ばれている。

渾名はワイバーン。

黄鶲、猩々朱鷺、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

⁂鷂《はいたか》    宮廷家令

神殿《オリュンポス》の神祇官。

陸軍所属。

父親が大戦で戦死した家令の青鵐《あおじ》。母親が西の副修道院長。

聖堂《ヴァルハラ》の元枢機卿(大嘴の長兄)と深い中になり、問題となった為に現在、海外の機関に出向中、と言う事になっている。

二妃が亡くなった際に、責任を問われて城から放逐された一人。

黄鶲、青鷺、猩々朱鷺、木ノ葉梟と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

真珠帝の公式寵姫でもあった。

⁂瑠璃鶲《るりびたき》   宮廷家令

翡翠の祖父にあたる黒曜帝の総家令代理を務めた。

黒曜帝が退位後は、宮城から離れアカデミーにて研究の日々に戻った。

元アカデミー長。現在は医聖の称号を得て、アカデミーの精神的支柱。

⁂猩々朱鷺《しょうじょうとき》 宮廷家令

現アカデミー長。美貌で知られる女家令。

母親は巫女秋沙であり、緋連雀は娘。

母親が黒曜帝の公式寵姫であった事から、猩々朱鷺はその娘ではないかと言われている。

(女家令から生まれた者は生まれながらに家令の身分なので、父親の存在は不問でありあまり頓着されない)

陸軍所属。渾名はワイバーン。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。


かつて翡翠の第二妃であった木蓮付きであったが、彼女の死の責任を追及されて宮城から放逐された世代の1人。

後、アカデミーで天河を支えた。


真珠帝と大鷲総家令の時代に宮廷で、青鷺、黄鶲、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

大嘴以上の大喰らいである。

⁂木ノ葉梟《このはずく》 宮廷家令

梟の実妹。

王立図書文書館統括司書。

翡翠の二妃の死によって責任を問われて宮城から放逐された世代の末妹。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

燕の実母。

白鷹所有の別荘で燕を産んだ。

家令には珍しく小柄だが、1番血の気が多く、小型爆弾と呼ばれている。


真珠帝と大鷲総家令の時代に、青鷺、黄鶲、猩々朱鷺、鷂と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

⁂鸚鵡《おうむ》 宮廷家令

本名、五百旗頭《いおきべ》 綾《あや》。

元は宮廷近衛兵、禁軍である軍閥の生まれ。母親が前女官長であったので、姉である現女官長と、白鷹の離宮に出入りを許されていた。真鶴のファン。真鶴が家令の身分に処される時に自らも家令になってしまった。

アカデミーの医学部出身で、茉莉のもとで東洋医学を納めた。

真鶴の為に家政学部も通信で卒業。


現在、前線の野戦病院勤務。

⁂川蝉《かわせみ》  宮廷家令

翡翠の元侍従。離宮に移った瑪瑙帝と梟総家令の時代、当時皇太子であった翡翠と宮城に残り、総家令代理を務めた。

翡翠と共に真珠帝追討の指揮を執った。

ニ妃の死の責任を負い、宮城を放逐された世代。軍中央《セントラル》所属であったが軍属、更に聖堂《ヴァルハラ》の司祭の立場も解かれた。

家令の特殊運用組織であるエトピリカに出向し海外での勤務に当たる。


⁂真鶴《まづる》  宮廷家令

美貌と知性が抜群で、人を惹きつける魅力があり本人もそれは十分自覚している。

なんでもできるし、なんでもやる。

女神のような、または悪魔のようなと評される。

面倒見が良く、弟妹弟子からも慕われている。

人類に貢献する程の研究《ナンバリング》を多数所有。

アカデミー特別委員の1人。

海軍所属。演習で人喰い羆を仕留めた事から、渾名は羆殺し、レディ・タイガー。

神殿《オリュンポス》の神祇官と聖堂《ヴァルハラ》の司祭どちらも務める。


本来は琥珀帝が離宮で産んだ最後の娘であり、翠玉皇女の身分であった。

後見人であった長兄の真珠帝が背信で処された煽りをくって、家令の身分から家令となる。

家令の生活を本人は割と気に入っている。


⁑茉莉《まつり》  

家令の父親とそうではない母親を持ち、家令にはならない事を決めた"蝙蝠"《こうもり》と呼ばれる存在。

家令名は、千鳥《ちどり》。

父親は大戦の生き残りで戦後復興に尽力した唐丸《とうまる》。母親は貴族筋の女官で琥珀帝に仕えた。

翡翠の友人。

アカデミーで東洋医学を研究して学位を取り、教育に力を入れている。鸚鵡も教え子の一人。

家令と反目する軍中央《セントラル》に所属している。

⁂尉鶲《じょうびたき》 宮廷家令見習い

黄鶲と川蝉の息子。

10歳になり、宮城や離宮で家令見習いとして使い走りを始めたばかり。

現在、家令の中で1番の年少者。


§淡雪《あわゆき》  宮廷画家

本名 東雲《しののめ》淡雪

アカデミーに所属する画家。

アカデミー特別委員。

人間国宝、画聖の称号を持つ。

翡翠の学友。

緋連雀の師匠。

作品は宮廷でも人気がある。

継室が欲しがった作品を白鷹も欲しがり、琥珀が倍の値段で買い上げ白鷹に与え騒動になった逸話がある。

本人はあまり物事にこだわらないたちなので、人間関係に巻き込まれる事もなく生きている癒し系。

放浪癖があり、あちこちスケッチ旅行に出かけては戻って来ない。

宮廷画家として大聖堂修復の指揮を執った。

§路峯 隼 《ろほう はやと》 

元老院次席であり、父は元老院長であった。

翡翠の正室、皇后の芙蓉を出した大貴族であり屈指の名門出身。

父の後妻として雉鳩の母が路峯家に入っている。

翡翠の学友。

皇太子である藍晶を支持している。

議員派と親しい皇太子を危惧している。

⌘鈴蘭《すずらん》   皇太子正室

元老院派 比嘉家の二の姫。

孔雀の推薦で、藍晶の正室として後宮に入宮した。

快活で朗らかであり、皇太子宮である象牙宮の若き女主人を務めている。


§揚羽《あげは》    女官長

本名、済 更紗《わたり さらさ》。

旧姓 五百旗頭《いおきべ》。

祖母、母と女官長を三代務める。

宮廷軍閥、五百旗頭家の出身。鸚鵡の姉。

女官は、上位五役までが蝶の名前を戴く。

最も高位の女官長 揚羽。

母もまた女官長であった事もあり、鸚鵡と共に子供の時から琥珀の離宮に出入りしていた。

真鶴とは幼馴染。

⌘紅小百合《べにさゆり》 王族•第三妃

翡翠の三妃。継室候補群議員派の出身。

本名 渡良瀬 香織《わたらせ かおり》

リベラル派だった瑪瑙帝の推薦で入宮した。

紅水晶皇女の母。

正室の地位を望んでいる。

身近に家令を置く事を好まない。

正室、ニ妃が不在につき国内外でファーストレディとして活躍。

⌘木蓮《もくれん》 王族•第二妃

翡翠のニ妃。継室候補群ギルド派出身。

天河の母。

本名 縞野 乃衣美《しまの のえみ》。

母がギルド長、父がアカデミーの教授で外国人であった為、海外で生まれ育った。

天河が10代のうちに宮城で亡くなった。

⌘撫子《なでしこ》   皇帝四妃

本名 一宮 絲子《いちみや いとこ》

元老院筋の貴族の正室候補群である一宮家から翡翠に入宮した。

翡翠帝以外も、皇太子の藍晶の正室、継室、第二太子天河の正室、といずれの縁談にも名前が挙がる程の名家。

食が細く、厨房を預かる白鴎と、孔雀を悩ませている。

§紋白《もんしろ》   副女官長

本名 鏡 華《かがみ はな》

女官の五役の一人。

没落貴族の出身で、女官試験を受けて登用された。

結婚時に一度城を下がったが、その後離婚して復職した。

子供が宮城内のキンダーガルデンで育ち、同じ宮城内にある舎宅に暮らしている。

当初は孔雀に反感を持っていたが、現在では好意的。

同じ貴族出身の四妃に複雑な感情を抱いている。

§銀椋鳥《ぎんむくどり》 宮廷家令

本名 エマ•ダミニ•タシオニ 

母親はアカデミー教授のキーヴァ•タシオニ。

10代でアカデミーに入学を許された天才少女。孔雀が母親のタシオニと親しくなり、孔雀とも友達になる。

家令逹のアカデミーでの宿舎である"止まり木"にもよく出入りをしていた為、天河や大嘴とも親しくなった。

大嘴に憧れて17歳で家令になった。

真鶴を強く意識している。

茜が家令になってくれて嬉しく思っている。

§ヤドヴィカ・タシオニ  アカデミー教授・動物学者

アカデミーで動物学、獣医学を研究、教鞭をとる教授。エマの母親。

アカデミー特別委員の1人。

優秀で、トリッキーなところがある。

アカデミーでの孔雀の師となる。

エマに家令になればいいのにとアドバイスをし、心配だと渋る孔雀を説得した。

⁑ ヘルムート・ネイガウス  A国将校

アカデミーに属するA国将校。

天河の友人。

お互い前線を挟み睨み合う仮想敵国の立場だが、アカデミーでは政治的思惑は不問の為、複雑ながら親交は深い。

A国は皆徴兵制がある為、少年の頃から兵役の経験がある。

軍人一家であり、海軍に在籍している。

◇戴勝《やつがしら》

元敵国•現仮想敵国のQ国母后。

本来は家令の戴勝。

一時、神殿《オリュンポス》で大神官を目指して潔斎に入っていたが、放り出して戦場に戻る。

大戦中に戦死したと記録されているが、実際はQ国で拘束され殺されたとされた目白と共に幼い王の義母として活躍し辣腕を奮っていた。

大神官を目指した事から、"神の花嫁"とも呼ばれ、また、“地獄の門番“とも呼ばれた。

梟曰く、"海賊や山賊のような女家令"。

◇目白《めじろ》

元敵国•現仮想敵国のQ国大宰相。

本来は家令の目白。

大戦中に大司教であったが、停戦の斥候としてQ国を来訪した際に拘束されて処刑されたとされていた。

実際は幼い王の宰相として、義母の立場の母后(やはり家令の戴勝)と共に活躍。

数年前に没。

◇鶍《いすか》

元敵国•現仮想敵国のQ国の太政官。

本来は家令の鶍。

元アカデミー長。

Q国の高官未亡人と出会い、亡命した先で戦死した筈の弟妹弟子の戴勝と目白に再会。

身分保証を約束され大いに貢献。

5人の妻、12人の子供、25人の孫を得た。

20年程前に没。

鵟の曽祖父に当たる。

セリム•リド•ユク

Q国王。

大戦中、宮殿で、冷遇されついた少年時代に、囚われていた目白、勝戴と、家令による"悪魔の契約"を結び、支援を受けて兄3人を葬って即位し、国は大躍進を遂げた。

後宮《ハーレム》に多くの妃がおり、多数の子を持つ。


死んだはずの兄弟子姉弟子が生きていると知った白鷹が差し向けた猩々朱鷺と関係を持った、らしい。緋連雀の父親に当たる。


⌘紅水晶《べにすいしょう》 皇女

翡翠と紅小百合の娘。

母親の意向で家令とはある程度遠ざけられ育った。

Q国皇太子と婚約が決まった。

§五百旗頭 紬然《いおきべ ゆうぜん》

宮廷軍閥、禁軍近衛兵の竜騎士。

鸚鵡と更紗の父親。前女官長の夫。

翡翠への背信疑いとして、元老院除籍、蟄居の処分となっていたが、鸚鵡が名誉回復した事で、自分も許され復籍した。


近衛兵は皇帝の近侍兵であり、大戦中は戦場にはあまり足を向けなかった黒曜帝の以降で実戦闘には関わらなかったのを、白鷹や梟から恨みに思われている。

かつて少年時代に軍神寵姫と称えられていた巫女秋沙に憧れていた。

⁂巫女秋沙《みこあいさ》 宮廷家令

西の修道院長。

猩々朱鷺の母、緋連雀の祖母に当たる。

大嘴の母違いの姉。

かつての黒曜帝の公式寵姫であり、白鷹曰く"ちょっと見てくれがいいのを鼻にかけた緋連雀が逆立ちしたって敵わない美貌"であった。

また軍でも手腕を発揮し、大戦中は軍神寵姫と呼ばれた。

長い間、弟の大鷲の安否が知れず心配していた。翡翠に頼まれて、真珠帝の首を保管していた。

現在家令の中で1番の年長。

長生きのコツは"何もしないこと"。

§真榊 鮎子《まさかき あゆこ》

西の副修道院長。

鷂の母に当たる。

かつて神殿《オリュンポス》に仕えた巫女であった。

大戦中、勝戴の指示で西の修道院に逃れた。

生活能力の低い家令の巫女秋沙の代わりに修道院では様々に実務に携わっている。

⌘瑪瑙《めのう》

琥珀の弟。真珠帝の死後、皇帝位に就いた。

リベラルで知られ、議員を支持していた。

遅くに皇帝となった事もあり、継室は持たずに離宮を好んで過ごす事が多かった。

⌘真珠《しんじゅ》

琥珀と正室の薔薇《そうび》との皇太子。

琥珀の後に皇帝位に就いた。

総家令の大鷲と共に大戦後の明るく豊かで自由な時代を反映するかのような宮廷を作り上げた。

表向きは事故死とされたが、琥珀や旧勢力から背信罪で討たれる。

琥珀に命じられて指揮したのは翡翠。

死罪より重い記録抹消剤となり、宮廷のあらゆる公式文書から名前を消去される。

⁂大鷲《おおわし》  宮廷家令

真珠帝の総家令。

巫女秋沙の母違いの弟。

母親は、大戦で戦死した家令の雷鳥《らいちょう》。

天眼であり、優秀な神官でもあった。

下の世代の家令からの信頼も厚く、面倒見が良かった。

真珠帝が討たれた際に行方不明となった。

⌘琥珀《こはく》帝    女皇帝

白鷹と共に大戦中、前線を走り回った歴戦の女皇帝。

長兄から皇位を簒奪し、皇帝に就いた。

正室との間に真珠、継室との間に翡翠、父親は公表されないままだが翠玉(真鶴)を産んだ。

白鷹を伴い早くに離宮に移った。

革新派の真珠とぶつかり、背信罪で真実を訴追。

宮城に戻る事なく離宮で亡くなった。

§済 武衛《わたり ぶえい》 

宮廷軍閥 禁軍 近衛兵

女官長の揚羽(更紗)の夫。

元老院籍はないが、五百旗頭《いおきべ》家に次ぐ軍閥の名門。

藍晶の護衛官。

⁂仏法僧《ぶっぽうそう》  宮廷家令

元議員 本名 眞弓《まゆみ》如意《にょい》

若手の世襲上院議員だったが、皇太子の恋人に唆された先輩議員と共に総家令である孔雀を襲撃し返り討ちにされた事がきっかけで家令にスカウトされる。

家令には居ない常識人ぶりと爽やかさで、宮廷の女官と官吏に大人気。

海兵隊所属

神殿《オリュンポス》所属

⁂太蘭鳥《たいらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》麗《うらら》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂金襴鳥《きんらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》朧《おぼろ》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂菫金剛《すみれこんごう》  宮廷家令

孔雀の息子。

ほぼ大嘴《おおはし》が育てている。


ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み