第126話 春を待ちかねて咲く花

文字数 6,699文字

 琥珀帝が生前愛した離宮は、いつもよく手入れされていた。
潔癖なまでに、病質的なまでに。
けれど訪れた人間は、離宮として何かが違うという違和感を抱く。
はて、それが何であるか言語化出来ない程にただ整然としているのだ。
梟は、昔、孔雀が「病院みたい」と呟いたのを思い出す。
離宮にしては、寛ぐ雰囲気が少ないのだ。
どこかいつも張り詰めた雰囲気がするのは、白鷹のせいなのだと思っていたが違う、いつも神経を張り巡らせていたのは、亡き女皇帝であったのだ。
白鷹は、離宮に携わっている人員には殊の外厳しく、庭に、通路に、枯葉の一枚、小石の一粒でも落ちていたら烈火の如く怒り出すと皆震え上がっているし、非難の的だよ、と孔雀にぼやいたものだ。
末の妹弟子がまだ見習い家令程であった時に、手を繋いでこの廊下を歩いている時、目が見えないからよ、と唇だけでそう伝えて来た時にはっとしたものだ。
琥珀が離宮に居を移した時、自分の愛するものだけ、好きなものだけを持って行ったと非難されたが、それは大急ぎでほぼ捨て去るように持てるものだけ持って行ったとも言えた。
身の回りの物をコンパクトにし、急いでいたのは守るためで、それは女皇帝の視力が落ちていたからか、と梟は合点が行った。
しかし、華奢であるがあの毅然とした、いつでも飛びかかる準備は出来ている大型のネコ科のような女皇帝は、そんな素振りを見せたことなどなかった。
離宮の中を好きなように歩き回っていたではないか。
信じ難く困惑していると、孔雀は、壁にある凝った彫刻の溝を指で辿り始めた。
上から、こっちがお庭、こっちが白鷹お姉様の部屋。そう言って。
この溝を辿ると、確かに目を瞑っていても離宮のあちこちに辿り着ける。
ああ、だから、姉弟子は彼女の歩くであろう道に、何か落ちているのを嫌ったのか。
病気であるのかと訝ったが多分、琥珀は若い頃に従軍し、大怪我をした事があったのだ。その後遺症では、と思う。
大戦の折、家令どころか王族まで戦死した時代だ。
自分達の兄弟子姉弟子、つまり親も戦死した。
総家令を辞してから何度も訪れていた極北の地は、自らも少年の日に果たしてここに居たのかと信じがたい程の荒野であった。
女官が梟の来訪を白鷹に伝えた。
中庭の一角で、姉弟子が椅子にかけていた。
寛いでいる、という様子ではなく、苛々としている様子だった。
「白鷹姉上」
姉弟子に礼を尽くすと、彼女は頷いた。
来るのはわかっていたのだろう。
座りなさい、と椅子を勧めた。
梟は椅子にかけると、ふと顔をあげた。
風に乗って、芳香を感じる。
この庭はいつも良い香りがする。
妹弟子が亡き女皇帝の為に季節事に香りのする樹木ばかり植えた一角があるからだ。
香りの庭と言って、琥珀は喜んだそうだ。
特に、春を待ちかねて香るこの瑞々しく小さな可愛らしい花姿を愛したらしい。
「・・・良い香りですね」
沈丁花(じんちょうげ)よ。孔雀が植えたのよ」
まあ聞いたことはあるような気はするが、植物には大して興味が無い梟が適当に頷いた。
「ああ・・・思い出してならないわ」
白鷹が苛立っている原因はこれだ。
この庭で、この香りで、どうしても妹弟子に自分がした所業を思い出す。
彼女はつまり罪悪感に苛まれているのだ。
「姉上、孔雀を大神官にというのは?」
鷂が連絡を寄越したのだ。
あのババア、孔雀の存在を殺す気よ、と。
大神官は外界との接触を禁じられて視力を奪われて神殿の奥の院でほぼ一生を神に仕えて過ごす。
今まで、その任に耐えたのは、王族で数人、家令では遠い昔に一人だけ。
「その命令は翡翠様が破棄したはずですが」
真鶴に恐喝されて、翡翠が逆に強請(ゆす)り返した時に取り付けたものだ。
確かに、孔雀は一度大神官候補になってはいるが、総家令を賜った際に反故にされているはずだ。
「あれは延期よ、取り消しになんかならない」
「・・・・姉上」
孔雀を神殿に閉じ込めたのを後悔している様子なのに、なぜそこまで(こだわ)るのか。
戴勝(やつがしら)お姉様も、閉じ込めとけと言ったのよ。そもそも龍現が二人。孔雀はどちらにも乗らないと言ったわ。なんて頑固な子でしょう。我々の命運を潰す気よ」
万が一を考えなさい、我々家令の命運がかかっている。
翡翠から天河と真鶴、どちらに乗り換えるの。
そう聞いたが、あの妹弟子はそんな必要ないと言ったのだ。
だから、あの地獄の底のような場所に閉じ込めた。
幼い日、腹を食い破られるような目に遭わせたのに。
「しばらくして考えを変えるなら出してやるわ。・・・きっと変えないから、あの子は大神官にする」
白鷹は深くため息をつき、唐突に弟弟子を睨みつけた。
「・・・・お前までがヘルメスだったなんて」
宮廷を国体を揺るがす思想。
女皇帝と自分が恐れ、ヘルメス狩りは一時、苛烈を極めた。
琥珀からの命令を受け、その陣頭指揮を執ったのは、この梟だ。
「お前はあの時なんのつもりでいたんだい。・・・お前が、真珠や大鷲に吹き込んだの・・・?」
だとしたらなんと恐ろしいことを、と老女家令の目が憎しみよりも恐れで揺れていた。
梟は首を振った。
「そもそもヘルメスは意思体のようなもの。自分がそうであると思えばそうであり、そうでない時はそうではない。輪郭を曖昧にする思想。自分がそうかどうかはわからない。発症したり、しなかったり。気がつくとキャリアになっていたりする。タチの悪いウィルスのようなもので、だから厄介。でもその毒は、曖昧な夢のように人々の中に間違いなく広まっていくんです」
白鷹がなんだいそれは、と呆れたように天を仰いだ。
「・・・そんないい加減な流言飛語のようなもので・・・・。孔雀じゃないんだよ。大昔は、変な流行(はや)り歌が流行るとクーデターが起こったりしたんですって、なんて言ってたけど・・・」
白鷹がはっとしたような顔をして梟を見た。
「・・・あの子も・・・・?」
「まあ、恐らく」
白鷹が顔を覆った。
「・・・・・・あぁ、あの絵描き。そうだ、あいつとあの子の家は古くは続いてたはずだ・・・・」
大昔、棕櫚(しゅろ)家から、蛍石(ほたるいし)女皇帝と総家令の五位鷺(ごいさぎ)の間の太子の乳母になった女がいた。そして彼女は総家令の妻でもあった。
「お前も五位鷺お兄様の日記を読んだろ?・・・異常な話だよ。あいつら三人で結婚してたんだよ」
そして、蛍石女皇帝と五位鷺はA国で凶弾に倒れ、暗殺された。
その後、蛍石女皇帝と五位鷺の子は、皇籍を離れて国外に出た。
蛍石女皇帝と継室の皇女が皇帝の地位に就き、存在を疎まれたからだ。
「問題なのはここから。・・・・棕梠(しゅろ)家の乳母の女。確か、残雪(ざんせつ)佐保姫残雪(さほひめざんせつ)と言ったっけね。残雪と五位鷺の娘が、その廃太子と結婚してる。腹違いの兄妹だ。その末が、淡雪だ」
そして、佐保姫残雪の方は。
新たな皇帝の嫌がらせで、A国に人質に出されたのだ。
彼女はA国の高官であった男を連れて帰国し、子供を産む。それが孔雀に続くわけだ。
「・・・・あの因業娘」
自分は一番引き入れてしまってはいけない者を宮廷に、皇帝の懐に引き入れたことになる。
梟は、いやそんなに過激なものではないと首を振った。
「ヘルメスという特異な性質のおかげで、別に積極的に孔雀が国体をどうにかしようなんて考えているわけではないでしょう。ただ、そういう事もあるかもしれないという可能性を頭のどこかに置いておれば、そうする必要がある場合にそう出来る可能性がある、という話」
同じじゃないか、と白鷹は吐き捨てた。
緩やかな変化。でもそれは、破滅?
そうではない。
そう疑問を持ち、肯定出来てしまえば、人はやれぬと思うことを、やれる。
「・・・・淡雪を、殺したのは姉上ですか」
「そうよ。呆れたことだわ。皇女と夫婦ごっこだなんて。皇女がテロリストの片棒を担いだことになるのよ」
「そんな事。王族が殺し合うのなんて常だ。放っておけばいいのに」
ああ、と梟もため息をついた。
家令のなんと因業な事。
「ヘルメスというのは幸運と伝令の使者であり、商業、万物流転の神。それから盗賊でもあるそうですね。冥界と地上と天界を行ったり来たりするトリックスターだ。・・・あの末の妹にぴったりじゃないですか」
梟が封書を取り出した。
青漆色の皇帝の親書。
これを見るのは二回目だ。
「・・・翡翠がなんだって」
「総家令の即時解放命令です。従わない場合は、拘束の後、訴追されます」
「馬鹿馬鹿しい。家令がまともな裁判になるもんですか」
「だからですよ」
皇帝の意思は、戦場でも、宮廷でもなく、衆目に晒され惨めに死ねと言うことだ。
人肉を屠るダキニの最後の面白い見せ(サーカス)だろう。
怒り狂うかと思ったが、白鷹は静かだった。
「それもいいわね」
梟は不思議に思い、姉弟子を見た。
「・・・ねえ。梟。大戦の折、戴勝(やつがしら)お姉様に最後に会った時の事覚えている?」
斥候(せっこう)としてQ国に向かい囚われた目白の救出に赴き、やはり拘束された勝戴と、どうにかわずかな時間だけ面会を許された。
敵国の手に落ちた女家令がどんな扱いを受けていたかなんて、想像に難くない。
宮廷においても衆目を集める美貌と存在感のある姉弟子だった。
健康的な程に陰のない明朗で快活な性格と美しさは、どうしても自分達の存在に引目を感じる家令達から愛されて、宮廷の人間からも好まれた。
あまり身近に人を寄せ付けなかった抑鬱的な女皇帝すら、あの姉弟子に楽しみと喜びを見出した程。
その女皇帝を過剰なほど過保護に愛していた総家令の(みさご)も、当然戴勝に信頼を寄せていた。
しかし、その姉弟子が久しぶりに現れた時、影のある凄味と(わず)かな危うい理性を感じその様子の変化に絶句したのだ。
琥珀もその様子に落ち着かない様子だった。
白鷹が、姉弟子がどのような辛い目に遭っているのかと泣き出す前に、勝戴は口を開いた。
「目白からの伝言よ。よく聞きな。一つも取り(こぼ)すんじゃないよ」
それは、Q国の機密情報だった。前線のどの場所に何人が配置されて、どのような装備になっているか。指揮権は誰にあるのか。現在の戦況における展望は。
白鷹は必死に飲み込むようにして頭に叩き込んだ。
「・・・それからね。お姉様は私にこう言ったの。お前が琥珀を女皇帝にしなって。でも戦は泥沼、琥珀様は一番皇位から遠いご身分。まだお若くてお体も強くはない。兄弟子も姉弟子も多くが死んだその先、この私がどうやって、と・・・」
勝戴はちょっと迷うような顔をしてから、決然と囁いた。
「あなたは特別よって、毎日言うんだよ。毎日、何回でも、何十回でも。あなたが皇帝にふさわしいって。いいね、私の可愛い女家令(いもうと)
そう最後に言って、姉弟子は自分と別れたのだ。
「だから、私。毎日言ったのよ。あなたは特別よって。あなたが皇帝になるのよって。結果、琥珀様は、父王を追い込んで、兄王から皇位を簒奪(さんだつ)したの。ご持病もあったのに、妊娠も出産も繰り返して。何人もだめになったわ。育ったのはやっと三人ね」
琥珀は、そもそも決して野心を抱くような女性では無かった。
どちらかと言ったら、大人しい、目立たぬ程に可憐で優し気な少女だったのだ。
当時、宮廷に彼女の身の置き場は無かった。
黒曜帝の継室であった元老院末席の家出身の母が早くに亡くなり、母の実家からの支援も少なく、間違っても皇位に関わらぬのだから役立てと戦場にその身を預けられる程に。
それでも彼女は自分に出来る限りの全てをしようと決意して前線に向かったのだ。
でも根はやはり優しい皇女だった。
あの春の花のような女性を変えたのは自分。
白鷹は少し俯いた。
梟は姉弟子の向かいの椅子に腰をかけた。
「・・・・翠玉皇女の父親はどなたですか。白鷹姉上の子ではないかと言う噂がありましたけど」
宮廷の人間も誰も知らない。
琥珀帝の最後の出産は大変な難産で、前女官長程の女性が取り乱し、医師が母子の命を約束出来ないかもしれないと言った程だったらしい。
「それこそバカバカしい流言。まさか私が子供を持つなんて。琥珀様に申し訳ないことよ」
では、と梟は更に訝った。
「・・・私と琥珀様が兄王である月長様を陥れて、あの方を大神官に任命したのは知っているわよね」
「はい。ですが、心神耗弱を患われて、しばらくの後にお亡くなりになった」
まさか、と梟が眉を寄せた。
「・・・月長様よ。あの方も龍現のお生まれだった。運命に見張られて、飲みこまれてしまったわ。私達が追い込んだのよ。・・・琥珀様はあの頃もう目が見えなかったの。だから、抗うことも難しくて」
白鷹が深く吐いた。
「・・・だから私、あの男を殺してしまったの。それからしばらくして琥珀様が妊娠していることがわかってね。当然、無いものにすると思っていたの。でも琥珀様が、産むと言って聞かなかった」
怒りと嫉妬で頭がおかしくなるかと思ったけれど。
「戦争や動乱で、沢山人を殺めて来たけれど、私が直接殺したのは月長様一人だけ。だから、一人だけ私の為に産むって琥珀様は仰ってね」
決して月長の為なんかじゃない、貴女の贖罪の為に少しでもなりますように。
そう言われて、琥珀は泣き出し、受け入れた。
悲惨な状況なのに、自分が宮廷で生き延びる為では無く、好きな人の為に子供を産むのは初めてと言って嬉しそうだった。
それで、やっと琥珀は母親になったのだ。
だから、琥珀にとって翠玉皇女の存在には特別な意味があったのか。
梟は、この姉弟子と女皇帝の歩んで来た路を思う時、いつもどうやって来たのだろうと不思議に思っていた。
前線を駆け抜け、停戦に持ち込み、戦後処理に駆け回り。動乱や抗争を経て。
魔法のような事はなく。超人でもなく。
ただ、一歩ずつ歩って来たのだ。
傷つきながら、泣きながら。
冬を耐えて、春を待ちかねて咲くささやかな花の命を信じるように。
それは強さだ。
真珠と大鷲も素晴らしい逸材であった。
けれど、あの二人に足りないものは、多分それだ。
お互いを思い合っているからこそ、傷付けたくない。
地を這って血を流してまでお互いの中に欲しいもの、守るものがなかった。
お互いそのままで充分だから。
白鷹や琥珀や、そのままでは一緒になんか居れない最初からアンバランスのあの妹弟子と皇帝と真逆。
工夫して、悩んで、どうにかして。
それを努力と言うか、滑稽と言うかは人それぞれであろうが、あの二人はその何かを積み上げて、更に積み上げて。
今やそれは自分達どころか半径何キロもの自分達の大切な人々を守る堅牢な城、安らぎを確保する庭園となった。
「さて。梟。私の処分はお前に任されているのでしょう。どこにでも行きましょう」
そう言った姉弟子は、もう何十年も見た事がない程にさっぱりとした表情をしていた。
「姉上。俺は孔雀を家令にした事を、ずっと後悔していました。更に、王族同士のとばっちりで総家令だなんて、我々をなんと思っていやがるとね。家令が王家の備品なんて冗談じゃない」
家令にあるまじき発言であるが、それは梟の正直な気持ち。
白鷹は非難の目を向けたが咎めなかった。
自分も梟も家令としての栄華もあれ、嫌と言う程辛酸を舐めて来たのだから、弟弟子の気持ちは理解はできるのだ。
「今は、孔雀を総家令にして良かったと思っています」
梟は立ち上がった。
「では。こちらをお改めください」
また青漆色の封書を出してくるのに、だからさっき見たわよ、と白鷹が言って、その手を止めた。
同じものがもう一部ある。
「これは先程の書類の、即時撤回命令の書類です」
白鷹が唖然として弟弟子を見上げた。
「翡翠様が禁軍を従えて、神殿(オリュンポス)に到着して、止める神官を払い退けて奥の院に向かったそうで。それは大変な騒ぎだったそうですが。・・・・孔雀が自分で出てきたそうですよ」
まあ、皆様、この度はお騒がせ致しましてとかなんとか恥ずかしそうに言って扉から姿を現わして、優雅に女家令の礼をして見せたらしい。
「・・・自分でって、あの子、どうやって・・・」
あの猛獣の檻から自分から出てくるなんて事は不可能のはずだ。
「さあ。それは存じませんが。翡翠様は大喜びで一緒にそのまま宮城にお戻りになりました。真鶴もまた孔雀にもう大丈夫と言われてとんぼ帰り。(から)くも再び神殿が丸焼けになる事は回避された模様です」
白鷹は、そんな事あろうはずがない、と言う表情のまま。
「・・・・でも。それはそれとして。なぜ、背信罪の私宛ての書類が撤回されたの?」
今更、翡翠が振り上げた刃を下ろすとは考えずらい。
「さっきの無しで、なんてあり得るモンじゃないんだよ?・・・全くどうなってんだろ。あの子は勝手に出て来ちまうし・・・」
不可解が過ぎる。
困惑ただ中の姉弟子の様子を見て、梟が楽し気に口を開いた。
「つまり。我らが妹弟子が、神も皇帝もたらし込んだと言うことです」
白鷹は弟弟子の話に呆れたように首を振って笑った。
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登場人物紹介

⁂孔雀《くじゃく》  宮廷家令

十歳で問答無用で宮廷家令に召し上げられる。元は継室候補群十一家のうちの棕梠家の生まれ。(実績が低いので宮廷での信用は低い)。 本名は棕梠 杏花春雨《しゅろ きょうかしゅんう》。

皇帝である翡翠帝により、十五歳で宮宰である総家令を賜る。

実家は、ギルド筋と言われる商業経済活動を生業とする立場にある。砂糖商から身を起こし現在は製菓業。異種多種経営で建築資材、水産加工品、食品流通等様々であるが、今も昔もカステラが一番有名。通称カエルマーク。

国を超えて経済活動をするギルド筋の人間には珍しくないが、どこかで外国の血が混ざっていて、青菫色の瞳をしている。

棕梠家は双子が多く生まれる家で、孔雀はいわゆるバニシングツイン(周産期で双子が一人になってしまう。生き残り)。

その場合、名前を二人分つけるという習慣があり、杏花・春雨という変わった名前になっている。

海軍所属。十二歳から軍属に就く。

金糸雀、緋連雀と共に女官試験にパスしているので、宮廷では三人官女と呼ばれている。(陰ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)。

小さな頃から軍で働いていたので、自国ではヒヨコちゃんやフラッフィー等と呼ばれていたが、後に悪魔の王《ルシファー》という渾名で敵国から認識されるようになる。

神殿の神祇官。大神官になれる素養があるとされる。

異能を持つ天眼(結構いる)の生まれ。

個性の強い大人に振り回されて奮闘中。

実用性のみの特技はいろいろあるが、マグロの解体が出来る。

頑健な者ばかりの他の家令より多少虚弱でよく寝込む。

⁂金糸雀《カナリア》  宮廷家令

母親が女家令の青鷺《あおさぎ》。父親が梟《ふくろう》。生まれながらの宮廷家令の身分。

海外の寄宿舎育ちで、幼少から天才少女と誉高く、家令の身分ながら、官僚試験の殿試を二位である榜眼《ぼうがん》でパスしている。また女官試験もパスしているので、孔雀、緋連雀と共に三人官女と呼ばれている。(裏ではゴーゴン姉妹と揶揄されている)

軍事法廷専門の弁護士。

陸軍所属。十ニ羽の五色鶸《トゥェルブ・ゴールドフィンチ》部隊を率いる。

渾名は、人食いワニ《マンイーター》。

宮廷では、報道官を務め、また後宮内の服飾の管理、軍の装備品の開発を担当している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

ボウルルームダンスのチャンピオン保持者であり、アスリートタイプ。

真鶴に唆されて、白鴎と一ヶ月だけ結婚していた。結婚生活は正味十日程度。

白鴎の浮気に激昂して、白鴎を半殺しにして病院送りにして、一人で新婚旅行を楽しみ現地でデートクラブを経営して荒稼ぎしていた。

結婚式の準備と離婚のお詫び行脚を丸投げされた孔雀から恨まれている。

⁂緋連雀《ひれんじゃく》 宮廷家令

母親が女家令の生まれながらの宮廷家令の身分。三代続く女家令。

祖母は大戦の折に戦歴を称えられ、当時の黒曜帝の公式寵姫でもあった美貌の女家令、巫女愛紗《みこあいさ》。

母親は、アカデミー長の猩々朱鷺《しょうじょうとき》。

宮廷で育った為、自他共に認める美貌と教養を鼻にかけている節があり、「宮廷育ちの根性曲がり」と陰口を叩かれている。

少女の頃から宮廷画家であり人間国宝の画聖・淡雪を師匠に日本画を修練し、雅号を持つ逸材。

宮廷に関わる男を手玉に取り一財産築きつつある。

孔雀、金糸雀と共に、女官試験もパスしているので、三人官女とも呼ばれる。(裏では、ゴーゴン姉妹と揶揄されている)

海軍所属の出世頭。渾名は、火喰蜥蜴《サラマンダー》。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。

バレエのエトワールであり、招かれて海外公演もこなす。

第二太子の天河曰く、「殺し屋のようなオデット姫」。

外見は華やかな美貌であるが、中身は中年男性に寄りがちな食生活と生活態度であり、軍隊の猛者がドン引く程の下ネタが得意。

⁂白鷹《はくたか》   宮廷家令

翡翠帝の母親である琥珀女皇帝の総家令であった。

現在は離宮で琥珀のもとに仕えているが、宮廷での影響力は未だ健在。

若き時代、皇女であった琥珀と共に大戦の前線を駆け抜けた強者であり、大戦で多くの家令が戦死した中で、数少ない生き残り。王族のうちでも皇統下位であった琥珀の帝位簒奪に尽力した。

後進に対して教育熱心であるが、性格は非常に自分勝手で激しいものがある。

大戦当時の神殿の神官長でもあった王族に、弟弟子である大鷲《おおわし》が監禁されていたのを不服に、報復の為に神殿を焼き討ちした過去があり恐れられている。

人肉を屠るダキニ、人肉を喰らうダキニと呼ばれている。

子供の孔雀に目をつけて、問答無用で召し上げた。

現在も家令達を統率している。

神殿《オリュンポス》の神祇官。

⁂梟《ふくろう》   宮廷家令

翡翠の叔父、琥珀の弟に当たる瑪瑙帝の総家令。

白鷹と共に、孔雀を宮廷家令に召し上げた。

金糸雀の実父であり、青鷺の元夫。

大戦の折に、若くして従軍した生き残り。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

武闘派の白鷹に対して、梟は陰険な策謀家で知られていて、宮廷ではその情報を掌握して恐れられている。

渾名は死神。

⁂雉鳩《きじばと》    宮廷家令

父親が王族、母親が琥珀帝の父親である黒曜帝の総家令の白雁《はくがん》と黒曜帝の皇妹の娘。

宮廷では緋連雀と共に美貌を知られている。ウェストは緋連雀より細い。

アカデミーで医師の資格を取っているが精神科医で臨床経験はない。

海軍所属。渾名は大海蛇《シーサーペント》。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

書道の大家。

本名 羽黒山 稼頭男《はぐろやま かずお》

自分の美意識に合わず、本名を隠したがる。


⁂白鴎《はくおう》    宮廷家令

ギルド筋出身。金融業を生業とする、ギルド長を務める百目木《どうめき》家の次男坊。

金融、マスコミ、宗教関係は正室、継室共に入宮は出来ない規則があり、継室候補群ではない。

海外に留学中に己の悪徳の致すところで勾留の憂き目に遭い、父親が梟に泣きつき、裁判にて無罪となる。

家令にする事を条件とされていた為に、放免後そのまま宮廷家令の身分となる。

陸軍所属。作戦中に部隊がほぼ壊滅状態となり、軍属から離れている。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

真鶴に唆されて、短期間だが金糸雀と結婚していたが、すぐに離婚。

金糸雀に半殺しにされて入院した経験がある。

留学中に伝統ある料理学校と三ツ星シェフの元で修行をしたオーベルジュでの勤務の経験もあるシェフでもある。

本名 百目木 円《どうめき まどか》


⁂大嘴《おおはし》   宮廷家令

聖堂《ヴァルハラ》の教皇座を出している家柄の出身の三男坊。

大嘴を家令にする事を条件に、梟によって、議会に置いて大戦で失われた大聖堂の再建予算案が通った。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

付き合いがよく、上の世代に育児放棄されつつも孔雀と燕とガーデンで自活した経験がある。

翡翠の第二太子である天河《てんが》と共に、一時海外で共に生活をしていた。後に正式な侍従となる。

本名 英 三郎《はなぶさ さぶろう》

⁂燕《つばめ》   宮廷家令

宮廷家令。

母親が女家令であり梟の実妹の木ノ葉梟《このはづく》。

宮廷育ちで、幼い頃から宮廷で使い走りをしていた。

家令の教育期間であるガーデンに行った途端に、上の世代から育児放棄されて孔雀と大嘴と自活する。

実母も、周りの姉弟子兄弟子も強烈な為、家令の中でもマイペースな孔雀と大嘴との擬似家庭を結構気に入っていた。

⌘翡翠《ひすい》   王族・皇帝

琥珀女皇帝と継室であった椿《つばき》との間の第二太子。

叔父の瑪瑙の跡を継いで皇帝となる。

琥珀の時代の皇帝であった長兄の真珠帝が背信罪となり、琥珀帝と当時の総家令の白鷹により、侍従であった家令の川蝉《かわせみ》と共に、討伐の命を受けた。

アカデミーでドクターの資格を修めたが、臨床の経験はない。

王族の慣例に則り、十五で婚姻。正室である元老院筋の芙蓉《ふよう》皇后。第二妃として、ギルド筋の継室の木蓮《もくれん》、三妃として、議員筋の紅小百合《紅小百合》がいる。

それぞれの后妃との間に、皇太子の藍晶《らんしょう》、第二太子の天河《てんが》、皇女の紅水晶がいる。


孔雀を総家令に任命した。

孔雀の若さに注目した宮廷の人間から、特殊な性癖の持ち主なのかと噂される。

半分、妹である真鶴、翠玉皇女への当て付けで孔雀を総家令に任命して、伽に招いた。

残り半分の、都合の人事としての総家令任命であったが、徐々に孔雀との間に真摯な関係を結ぶようになる。

人々から愛隣王という称号で呼ばれるようになる。

外見の物腰が柔らかで繊細に見えるが、内面は結構雑

母親である琥珀にそもそもあまり親近感はない。

⌘藍晶《らんしょう》   王族・皇太子

翡翠と、芙蓉皇后の間の皇太子。

母が元老院筋の大貴族の出なので、元老院派の支持も篤く、またリベラル派でもあり若手議員からも信奉されている。

生来の貴公子であり、国内外からも人気がある。

社交界の華であり、数多くの浮名を流しているがそれもまた人気。

第一子、皇太子が後継とは限らない王朝において、琥珀帝によって生まれながらに皇位を約束された「幸福な王子」。

本来は十代半ばで婚姻を済ませているはずだが、不服としていたが孔雀により延期となり、また宮宰としてたち働く孔雀を、気の毒に思いながらも都合のよい総家令として満足している。

⌘天河《てんが》    王族・第二太子

翡翠と二妃・木蓮の間の第二太子。母親がギルド筋であり、特殊な案件で早逝した為、宮廷では冷遇されていた。

アカデミーで、宇宙物理学を専攻して、研究と共に教鞭にも立っている。

母親の死後、一時期、ギルド長を辞した祖母と、アカデミー教授であった祖父と共に海外で暮らしていた。

大嘴とは兄弟のように育つ、遊び仲間でもある。

少年の頃、孔雀を気に入り、母親である二妃と翡翠の侍従であった川蝉が宮廷に招こうとしていたが、孔雀が家令となり、総家令として宮廷に仕える事になったのを不服に思っていて、原因であり無神経な言動をする梟を恨んでいる。

王族に見られる、異能の龍現の生まれとされるが特に何か特別な才能は見られない。

父親である翡翠と逆で、見た目は鷹揚だが、中身が神経質なところがある。


母親が亡くなった宮城から距離を取って成長し、更に孔雀が総家令になった事で更に足が遠のいていたがアカデミーで問題行動を度々起こしていたが、孔雀が歩み寄った事で、徐々に宮廷や家令達と関わるようになる。

浮世離れたした人間の多い宮廷においては数少ない常識人であり、その点から苦労性である。

⁂鵟《のすり》    宮廷家令

本名・篠山 茜《しのやま あかね》。高校生。母親と母親の夫、その妹と暮らしていた。実父は死亡。家庭環境としては恵まれたものではなかった。

父方の曽祖父が宮廷家令であるとの事で、スカウトされ、了承する。

戸惑いながらも、少しずつ家令としての生活に希望と自意識を見出す。

家令としての孔雀に興味を持ち、あれこれと物語を聞かされる事になる。

⁂黄鶲《きびたき》    宮廷家令

川蝉《かわせみ》の妻であり、尉鶲《じょうびたき》の実母。

翡翠により宮廷の終身典医としての地位を与えられている。

二妃が死亡し、他の同世代の家令達が宮城から放逐された時も、終身典医の地位の為に守られた。

アカデミーの医局に勤めるドクターでもある。

前線で医療行為を行うNPO法人も運営している。

趣味は保護猫の去勢。

若かりし頃に一時期、翡翠と関係があった。

宮廷で、青鷺《あおさぎ》、鷂《はいたか》、猩々朱鷺《しょうじょうとき》、木ノ葉梟《このはずく》と共に、妖精《フェアリー》と呼ばれた世代。陰では小鬼《ゴブリン》と揶揄されていた。

聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

⌘芙蓉《ふよう》   王族・皇后

 元老院筋の大貴族から入宮した翡翠の正室、皇后。

皇太子である藍晶の母。

後宮の螺鈿《らでん》宮の主。

以前は青鷺が侍従として仕えていた。


前元老院長の親族であり、養女と言う形での入宮であったが、実は、真珠帝と皇后出会った薔薇《そうび》との娘である碧玉公主。

⁂青鷺《あおさぎ》   宮廷家令

金糸雀の実母、梟の元妻。

宮廷で最も思慮深く上品で教養のある女家令と言われている。

芙蓉皇后の侍従として仕えていた。

二妃が亡くなった際、不手際を咎められて白鷹から宮城から放逐されたうちの一人。

孔雀が総家令に就任した際に、恩赦として復位を賜ったが、以来、宮城には戻っていない。

海兵隊所属。

現在、海兵隊の責任者として前線に勤務している。

外見も物事も淑やかなのだが、やはり凶暴な面があり、家令達からはお上品機雷と呼ばれている。

渾名はワイバーン。

黄鶲、猩々朱鷺、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

⁂鷂《はいたか》    宮廷家令

神殿《オリュンポス》の神祇官。

陸軍所属。

父親が大戦で戦死した家令の青鵐《あおじ》。母親が西の副修道院長。

聖堂《ヴァルハラ》の元枢機卿(大嘴の長兄)と深い中になり、問題となった為に現在、海外の機関に出向中、と言う事になっている。

二妃が亡くなった際に、責任を問われて城から放逐された一人。

黄鶲、青鷺、猩々朱鷺、木ノ葉梟と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた世代。

真珠帝の公式寵姫でもあった。

⁂瑠璃鶲《るりびたき》   宮廷家令

翡翠の祖父にあたる黒曜帝の総家令代理を務めた。

黒曜帝が退位後は、宮城から離れアカデミーにて研究の日々に戻った。

元アカデミー長。現在は医聖の称号を得て、アカデミーの精神的支柱。

⁂猩々朱鷺《しょうじょうとき》 宮廷家令

現アカデミー長。美貌で知られる女家令。

母親は巫女秋沙であり、緋連雀は娘。

母親が黒曜帝の公式寵姫であった事から、猩々朱鷺はその娘ではないかと言われている。

(女家令から生まれた者は生まれながらに家令の身分なので、父親の存在は不問でありあまり頓着されない)

陸軍所属。渾名はワイバーン。

聖堂《ヴァルハラ》所属の司祭。


かつて翡翠の第二妃であった木蓮付きであったが、彼女の死の責任を追及されて宮城から放逐された世代の1人。

後、アカデミーで天河を支えた。


真珠帝と大鷲総家令の時代に宮廷で、青鷺、黄鶲、鷂、木ノ葉梟と共に、妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

大嘴以上の大喰らいである。

⁂木ノ葉梟《このはずく》 宮廷家令

梟の実妹。

王立図書文書館統括司書。

翡翠の二妃の死によって責任を問われて宮城から放逐された世代の末妹。

空軍所属。聖堂《ヴァルハラ》の司祭。

燕の実母。

白鷹所有の別荘で燕を産んだ。

家令には珍しく小柄だが、1番血の気が多く、小型爆弾と呼ばれている。


真珠帝と大鷲総家令の時代に、青鷺、黄鶲、猩々朱鷺、鷂と共に、宮廷で妖精《フェアリー》、小鬼《ゴブリン》と呼ばれた。

⁂鸚鵡《おうむ》 宮廷家令

本名、五百旗頭《いおきべ》 綾《あや》。

元は宮廷近衛兵、禁軍である軍閥の生まれ。母親が前女官長であったので、姉である現女官長と、白鷹の離宮に出入りを許されていた。真鶴のファン。真鶴が家令の身分に処される時に自らも家令になってしまった。

アカデミーの医学部出身で、茉莉のもとで東洋医学を納めた。

真鶴の為に家政学部も通信で卒業。


現在、前線の野戦病院勤務。

⁂川蝉《かわせみ》  宮廷家令

翡翠の元侍従。離宮に移った瑪瑙帝と梟総家令の時代、当時皇太子であった翡翠と宮城に残り、総家令代理を務めた。

翡翠と共に真珠帝追討の指揮を執った。

ニ妃の死の責任を負い、宮城を放逐された世代。軍中央《セントラル》所属であったが軍属、更に聖堂《ヴァルハラ》の司祭の立場も解かれた。

家令の特殊運用組織であるエトピリカに出向し海外での勤務に当たる。


⁂真鶴《まづる》  宮廷家令

美貌と知性が抜群で、人を惹きつける魅力があり本人もそれは十分自覚している。

なんでもできるし、なんでもやる。

女神のような、または悪魔のようなと評される。

面倒見が良く、弟妹弟子からも慕われている。

人類に貢献する程の研究《ナンバリング》を多数所有。

アカデミー特別委員の1人。

海軍所属。演習で人喰い羆を仕留めた事から、渾名は羆殺し、レディ・タイガー。

神殿《オリュンポス》の神祇官と聖堂《ヴァルハラ》の司祭どちらも務める。


本来は琥珀帝が離宮で産んだ最後の娘であり、翠玉皇女の身分であった。

後見人であった長兄の真珠帝が背信で処された煽りをくって、家令の身分から家令となる。

家令の生活を本人は割と気に入っている。


⁑茉莉《まつり》  

家令の父親とそうではない母親を持ち、家令にはならない事を決めた"蝙蝠"《こうもり》と呼ばれる存在。

家令名は、千鳥《ちどり》。

父親は大戦の生き残りで戦後復興に尽力した唐丸《とうまる》。母親は貴族筋の女官で琥珀帝に仕えた。

翡翠の友人。

アカデミーで東洋医学を研究して学位を取り、教育に力を入れている。鸚鵡も教え子の一人。

家令と反目する軍中央《セントラル》に所属している。

⁂尉鶲《じょうびたき》 宮廷家令見習い

黄鶲と川蝉の息子。

10歳になり、宮城や離宮で家令見習いとして使い走りを始めたばかり。

現在、家令の中で1番の年少者。


§淡雪《あわゆき》  宮廷画家

本名 東雲《しののめ》淡雪

アカデミーに所属する画家。

アカデミー特別委員。

人間国宝、画聖の称号を持つ。

翡翠の学友。

緋連雀の師匠。

作品は宮廷でも人気がある。

継室が欲しがった作品を白鷹も欲しがり、琥珀が倍の値段で買い上げ白鷹に与え騒動になった逸話がある。

本人はあまり物事にこだわらないたちなので、人間関係に巻き込まれる事もなく生きている癒し系。

放浪癖があり、あちこちスケッチ旅行に出かけては戻って来ない。

宮廷画家として大聖堂修復の指揮を執った。

§路峯 隼 《ろほう はやと》 

元老院次席であり、父は元老院長であった。

翡翠の正室、皇后の芙蓉を出した大貴族であり屈指の名門出身。

父の後妻として雉鳩の母が路峯家に入っている。

翡翠の学友。

皇太子である藍晶を支持している。

議員派と親しい皇太子を危惧している。

⌘鈴蘭《すずらん》   皇太子正室

元老院派 比嘉家の二の姫。

孔雀の推薦で、藍晶の正室として後宮に入宮した。

快活で朗らかであり、皇太子宮である象牙宮の若き女主人を務めている。


§揚羽《あげは》    女官長

本名、済 更紗《わたり さらさ》。

旧姓 五百旗頭《いおきべ》。

祖母、母と女官長を三代務める。

宮廷軍閥、五百旗頭家の出身。鸚鵡の姉。

女官は、上位五役までが蝶の名前を戴く。

最も高位の女官長 揚羽。

母もまた女官長であった事もあり、鸚鵡と共に子供の時から琥珀の離宮に出入りしていた。

真鶴とは幼馴染。

⌘紅小百合《べにさゆり》 王族•第三妃

翡翠の三妃。継室候補群議員派の出身。

本名 渡良瀬 香織《わたらせ かおり》

リベラル派だった瑪瑙帝の推薦で入宮した。

紅水晶皇女の母。

正室の地位を望んでいる。

身近に家令を置く事を好まない。

正室、ニ妃が不在につき国内外でファーストレディとして活躍。

⌘木蓮《もくれん》 王族•第二妃

翡翠のニ妃。継室候補群ギルド派出身。

天河の母。

本名 縞野 乃衣美《しまの のえみ》。

母がギルド長、父がアカデミーの教授で外国人であった為、海外で生まれ育った。

天河が10代のうちに宮城で亡くなった。

⌘撫子《なでしこ》   皇帝四妃

本名 一宮 絲子《いちみや いとこ》

元老院筋の貴族の正室候補群である一宮家から翡翠に入宮した。

翡翠帝以外も、皇太子の藍晶の正室、継室、第二太子天河の正室、といずれの縁談にも名前が挙がる程の名家。

食が細く、厨房を預かる白鴎と、孔雀を悩ませている。

§紋白《もんしろ》   副女官長

本名 鏡 華《かがみ はな》

女官の五役の一人。

没落貴族の出身で、女官試験を受けて登用された。

結婚時に一度城を下がったが、その後離婚して復職した。

子供が宮城内のキンダーガルデンで育ち、同じ宮城内にある舎宅に暮らしている。

当初は孔雀に反感を持っていたが、現在では好意的。

同じ貴族出身の四妃に複雑な感情を抱いている。

§銀椋鳥《ぎんむくどり》 宮廷家令

本名 エマ•ダミニ•タシオニ 

母親はアカデミー教授のキーヴァ•タシオニ。

10代でアカデミーに入学を許された天才少女。孔雀が母親のタシオニと親しくなり、孔雀とも友達になる。

家令逹のアカデミーでの宿舎である"止まり木"にもよく出入りをしていた為、天河や大嘴とも親しくなった。

大嘴に憧れて17歳で家令になった。

真鶴を強く意識している。

茜が家令になってくれて嬉しく思っている。

§ヤドヴィカ・タシオニ  アカデミー教授・動物学者

アカデミーで動物学、獣医学を研究、教鞭をとる教授。エマの母親。

アカデミー特別委員の1人。

優秀で、トリッキーなところがある。

アカデミーでの孔雀の師となる。

エマに家令になればいいのにとアドバイスをし、心配だと渋る孔雀を説得した。

⁑ ヘルムート・ネイガウス  A国将校

アカデミーに属するA国将校。

天河の友人。

お互い前線を挟み睨み合う仮想敵国の立場だが、アカデミーでは政治的思惑は不問の為、複雑ながら親交は深い。

A国は皆徴兵制がある為、少年の頃から兵役の経験がある。

軍人一家であり、海軍に在籍している。

◇戴勝《やつがしら》

元敵国•現仮想敵国のQ国母后。

本来は家令の戴勝。

一時、神殿《オリュンポス》で大神官を目指して潔斎に入っていたが、放り出して戦場に戻る。

大戦中に戦死したと記録されているが、実際はQ国で拘束され殺されたとされた目白と共に幼い王の義母として活躍し辣腕を奮っていた。

大神官を目指した事から、"神の花嫁"とも呼ばれ、また、“地獄の門番“とも呼ばれた。

梟曰く、"海賊や山賊のような女家令"。

◇目白《めじろ》

元敵国•現仮想敵国のQ国大宰相。

本来は家令の目白。

大戦中に大司教であったが、停戦の斥候としてQ国を来訪した際に拘束されて処刑されたとされていた。

実際は幼い王の宰相として、義母の立場の母后(やはり家令の戴勝)と共に活躍。

数年前に没。

◇鶍《いすか》

元敵国•現仮想敵国のQ国の太政官。

本来は家令の鶍。

元アカデミー長。

Q国の高官未亡人と出会い、亡命した先で戦死した筈の弟妹弟子の戴勝と目白に再会。

身分保証を約束され大いに貢献。

5人の妻、12人の子供、25人の孫を得た。

20年程前に没。

鵟の曽祖父に当たる。

セリム•リド•ユク

Q国王。

大戦中、宮殿で、冷遇されついた少年時代に、囚われていた目白、勝戴と、家令による"悪魔の契約"を結び、支援を受けて兄3人を葬って即位し、国は大躍進を遂げた。

後宮《ハーレム》に多くの妃がおり、多数の子を持つ。


死んだはずの兄弟子姉弟子が生きていると知った白鷹が差し向けた猩々朱鷺と関係を持った、らしい。緋連雀の父親に当たる。


⌘紅水晶《べにすいしょう》 皇女

翡翠と紅小百合の娘。

母親の意向で家令とはある程度遠ざけられ育った。

Q国皇太子と婚約が決まった。

§五百旗頭 紬然《いおきべ ゆうぜん》

宮廷軍閥、禁軍近衛兵の竜騎士。

鸚鵡と更紗の父親。前女官長の夫。

翡翠への背信疑いとして、元老院除籍、蟄居の処分となっていたが、鸚鵡が名誉回復した事で、自分も許され復籍した。


近衛兵は皇帝の近侍兵であり、大戦中は戦場にはあまり足を向けなかった黒曜帝の以降で実戦闘には関わらなかったのを、白鷹や梟から恨みに思われている。

かつて少年時代に軍神寵姫と称えられていた巫女秋沙に憧れていた。

⁂巫女秋沙《みこあいさ》 宮廷家令

西の修道院長。

猩々朱鷺の母、緋連雀の祖母に当たる。

大嘴の母違いの姉。

かつての黒曜帝の公式寵姫であり、白鷹曰く"ちょっと見てくれがいいのを鼻にかけた緋連雀が逆立ちしたって敵わない美貌"であった。

また軍でも手腕を発揮し、大戦中は軍神寵姫と呼ばれた。

長い間、弟の大鷲の安否が知れず心配していた。翡翠に頼まれて、真珠帝の首を保管していた。

現在家令の中で1番の年長。

長生きのコツは"何もしないこと"。

§真榊 鮎子《まさかき あゆこ》

西の副修道院長。

鷂の母に当たる。

かつて神殿《オリュンポス》に仕えた巫女であった。

大戦中、勝戴の指示で西の修道院に逃れた。

生活能力の低い家令の巫女秋沙の代わりに修道院では様々に実務に携わっている。

⌘瑪瑙《めのう》

琥珀の弟。真珠帝の死後、皇帝位に就いた。

リベラルで知られ、議員を支持していた。

遅くに皇帝となった事もあり、継室は持たずに離宮を好んで過ごす事が多かった。

⌘真珠《しんじゅ》

琥珀と正室の薔薇《そうび》との皇太子。

琥珀の後に皇帝位に就いた。

総家令の大鷲と共に大戦後の明るく豊かで自由な時代を反映するかのような宮廷を作り上げた。

表向きは事故死とされたが、琥珀や旧勢力から背信罪で討たれる。

琥珀に命じられて指揮したのは翡翠。

死罪より重い記録抹消剤となり、宮廷のあらゆる公式文書から名前を消去される。

⁂大鷲《おおわし》  宮廷家令

真珠帝の総家令。

巫女秋沙の母違いの弟。

母親は、大戦で戦死した家令の雷鳥《らいちょう》。

天眼であり、優秀な神官でもあった。

下の世代の家令からの信頼も厚く、面倒見が良かった。

真珠帝が討たれた際に行方不明となった。

⌘琥珀《こはく》帝    女皇帝

白鷹と共に大戦中、前線を走り回った歴戦の女皇帝。

長兄から皇位を簒奪し、皇帝に就いた。

正室との間に真珠、継室との間に翡翠、父親は公表されないままだが翠玉(真鶴)を産んだ。

白鷹を伴い早くに離宮に移った。

革新派の真珠とぶつかり、背信罪で真実を訴追。

宮城に戻る事なく離宮で亡くなった。

§済 武衛《わたり ぶえい》 

宮廷軍閥 禁軍 近衛兵

女官長の揚羽(更紗)の夫。

元老院籍はないが、五百旗頭《いおきべ》家に次ぐ軍閥の名門。

藍晶の護衛官。

⁂仏法僧《ぶっぽうそう》  宮廷家令

元議員 本名 眞弓《まゆみ》如意《にょい》

若手の世襲上院議員だったが、皇太子の恋人に唆された先輩議員と共に総家令である孔雀を襲撃し返り討ちにされた事がきっかけで家令にスカウトされる。

家令には居ない常識人ぶりと爽やかさで、宮廷の女官と官吏に大人気。

海兵隊所属

神殿《オリュンポス》所属

⁂太蘭鳥《たいらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》麗《うらら》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂金襴鳥《きんらんちょう》 宮廷家令


本名 棕櫚《しゅろ》朧《おぼろ》

孔雀の双子の娘。

アカデミーに入学予定。

生まれてから一度も同じ年頃の子供と団体生活をした事がないので非常にマイペース。

ほぼ雉鳩に育てられた。

後見人は、元皇女の翠玉。真鶴。

⁂菫金剛《すみれこんごう》  宮廷家令

孔雀の息子。

ほぼ大嘴《おおはし》が育てている。


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